「非シニアの遊ぶ場所が無い」需要不足ではなく、供給不足では

【ビジネス・経済論説】 令和二年七月から九月期の国内総生産(GDP)速報値より「GDPギャップ(需要と供給の差)」が三十兆円から四十兆円ぐらいとされる。この差を埋めるべく、菅内閣は第三次『補正予算』と三年度『当初予算』を組む。


需要不足とされたコロナ禍の一年だった。五百五十兆円のGDPの内、五割が個人消費。その個人消費の内、「シニア消費」と「非シニア消費」が共に五割。自粛及び緊急事態宣言で個人消費が大いに落ち込んだ。法人の収入も減り、当然、税収も減る。


「ニュー ノーマル」と呼ばれる生活形式の変容で、今まであった需要の一部が吹き飛ぶ。


新たな需要を喚起する必要性がある。ただ、「需要が少なった」とも言えるが、「供給が少ない」とも言えるのではないか。それは平成バブルの崩壊から始まっている。個人消費の両輪の内の一つ、「非シニア消費」だが、非シニアが消費する場所が極端に少なくなっている。令和時代から平成時代を振り返れば分かる。


平成バブルだった平成初期に比べて、非シニアが消費する場所、詰まり、非シニアが遊ぶ場所が悉く消えていった。「GoTo」もそうだが、これは主にシニアを意識した政策だ。大半の非シニアは「GoTo」どころではない。シニアの遊ぶ場所は確保され続けているが、非シニアの遊ぶ場所は平成時代に一貫して規制をし続け、最早、スマホ内が主な遊ぶ場所になってしまった。

「シニアの楽しい=非シニアの楽しい」ではない。


スマホゲームでは、家庭持ちでも課金額が非常に高い者もいる。一部であるが、消費意欲が存在すると認める事ができる。実店舗を見渡しても、非シニアの高所得者・富裕層が消費したい場所が少ない。欲しい物はある程度イメージできるが、そのイメージを具現化した供給元がいない。日本がシニア中心市場だからだ。その結果、高額な大麻に手を付ける者が後を絶たない。違法だが、有効需要は存在している。


典型例は「接待交際費」。今は、接待交際が禁止に等しい。昼間で一生懸命に働き、接待交際費で法人と個人事業主が夜間でストレス発散する。そして次の日にリフレッシュして仕事に臨む。法人の金ならリフレッシュ度合いも高い。当然、消費額は日用品のそれとは段違い。「乗数効果/経済学」の話しである。一晩で十万、二十万、時には百万円単位も有り得る。日用品では、毎週、十万円単位の消費は有り得ない。


『風営法』によりクラブは規制されたが、平成中期までは若者が毎週、六本木や渋谷等に繰り出していた。若者が多く集まる場所には、年上の者も散見された。毎週、消費に明け暮れていた。そこで遊ぶ為に若者は働いていた。


キャバクラやホストクラブも深夜営業が許されていた時期には、毎晩、大いに消費されていた。働き手の若者を含む若手も所得が増え、大いに消費をしていた。正に「乗数効果」である。


今は、若手が消費する場所がない。遊ぶ場所がない。喫煙でさえも禁止した。だから消費もしないし、頑張って働いて所得を増やさない。無理して頑張って所得を増やしても、意味がない。苦労して起業もしないし、独立も考えない。スマホ内の遊びさえできれば、充分である。


若き高所得者・富裕層の虚無感を見てきた。「何の為に頑張っているのか」と。多くを稼いでも楽しいものに消費できないのであれば、ツマラナイ。


この日本社会はシニアだけが楽しく、非シニアは楽しくない。だから、やる気は出さない。


コロナ禍で需要は落ちた。ただ、反面で供給不足だった面も否めない。供給されてないから消費しない。消費したいと、そもそも思わない。消費は楽しい事だ。非シニアの「マーケット イン」が必要。非シニアは圧倒的多数のシニアの声を恐れて、雁字搦めになっている。萎縮している。数の力で押し切る傍若無人とシニアだけの正義は止めよ。


この国が上向かない最大の理由は、非シニア、特に若手の合法的にやりたい事(需要)を壊し続けてきたからだ。シニアが若い頃は、今より遥かに自由に、接待交際費も潤沢にあって、消費税も無く、やりたい放題やっていたではないか。だから高度経済成長を実現できた。


有力メディアを見れば、何時もシニアばかり。個人消費の両輪の一つである非シニアを無視して、勝手に決めないで頂きたい。今のシニアは、非シニアの生活的に失敗しているのだから。過ちを認めよ。誤ったのだから、上手くいった昭和の高度経済成長期の日本の基準に戻すべきだ。責めて、平成初期までの基準に戻すべきだ。


若手のやりたい事(需要)を認めれば(供給すれば)、経済は間違いなく上向く。若手はシニアより消費行動が賢くないかもしれないが、シニアより「乗数効果」は高い。何故なら、可処分所得に対して、シニアよりも遊興費が圧倒的に高いからだ。そして何よりも若さにより活力がある。これは潜在的需要を意味する。何でも「シニア ファースト(シニア基準)」にするんじゃない。若手の意見も尊重せず、強制・強要するな。


非シニアへの供給を高めよ、認めよ。

(了)

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