処女・二階堂ふみの昭和女に感嘆|映画『この国の空』レビュー

【芸能ニュース】 平成二十七年八月八日に公開された、映画『この国の空/ファントム・フィルム,KATSU-do』。戦後七十周年記念作品である。主演の里子を演じたのは、二階堂ふみ(甲戌)。昨年は、映画「私の男(二〇一四)/日活」で「第三十八回 日本アカデミー賞」内の優秀主演女優賞を始め、計五賞を受賞。通算では、十三賞を受賞している日本を代表する若手女優だ。報道現在で二階堂は二〇歳である。

女目線で戦時下が描かれている本作。二階堂は昭和初期の処女を演じたワケだが、冒頭から彼女特有の引き寄せが感じられる。昭和初期の女は、平成生まれの女優が演じる上で難易度が高い。二階堂は、物語りを通して一貫した口調(調子)、当時の細やかなイントネーションを再現した。それは現代の若い女性の中では、過去の遺物となってしまっている古き好きモノ。恋の相手方は、長谷川博己が演じる市毛。年は二〇歳近く離れているが、里子の恋焦がれが燃え上がる炎となっていく。


<ヌードで情事を魅せた二階堂>

 監督・脚本には、荒井晴彦。実に十八年振りの監督を務めた。昨今にはない、ゆったりとした時間が流れる構成で、大人向けの映画であろう。切り替えのタイミングが非常にマイルド。官能的ともいわれる原作性が、指の動きや画角で節々に散りばめられている。


トマトは見物である。市毛の男らしさや里子の女ごころが際立つ。唇、目配せと細部にわたる演技は最早、芸術の領域であろう。同世代の女優にはまるでないモノを、二階堂はもっているコトを情事と後ろ姿(ヌード)で魅せた。当然にそれを光らせた長谷川にも、紳士さが光る。七月に行われた完成披露試会の舞台あいさつでは、二階堂は茨木のり子の詩「わたしが一番きれいだったとき」を中学二年生の時に国語で学んだと云う。戦争を肌で実感した作品と評した。作中での詩は現代の裕福さと当時のコントラストを強め、観る者に懐古や気づき、自戒を抱かせる。官能的ではあるが、社会的でもある本作であった。

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