ニュースにおける写真(スチル)の力

【コラム(Media Literacy)】 前回はニュース(報道)の① 原稿(テキスト)について触れた。今回は② 写真(スチル)。他には③ 映像(ムービー)・④ 音声(ガンマイク)・⑤ 照明・⑥ アナウンサーとリポーターがある。写真共有サイトの謳歌で、② 写真(スチル)の目的が変わった。

旧メディア(アナログ)にとって、② 写真は未だニュースの補完要素が強い。一つの現場を報道する際にユーザがイメージがし易いものを選定する。新聞や雑誌の記事の様に。当然に① 原稿と整合性がなければならない。然し、新メディア(デジタル)では意味・目的が全く異なる。新メディアにとっての② 写真は補完要素ではなく、記事に対する“興味喚起”である。



<AIDMAのAとI>

 ニュース アプリでもサムネイルから読む又は見る記事を選定する。Facebook等が写真重視のSNSである為に写真重視が根付いた。よって、媒体が対象とするユーザの目に留まる写真が必要になる。この“興味喚起”で数ある記事の中から自社記事をタップ(クリック)してもらうコトになる。旧メディアとはまるで写真の意味が異なる。あちらは補完だ。新メディアで写真を撮る者は、情報に埋もれた中からキラリと光る撮影センスが必要なのだ。


次に目的だ。その媒体が「写真に対し何を望んでいるか」が鍵だ。SNS上のシェア等を望むのか、サイト内の滞在時間を増やし広告収益を上げるコンテンツを望むのか。はたまた、友ーザに記事への理解を深めたいのか。FP姫はシェア等を望む。写真の目的は広く伝えるコトであり、被写体の別の魅力を映し出すコトである。何故なら報道写真は一様になり易いので、被写体の魅力が一面的であるコトに不満を覚える。シェアしたくなる写真を撮れる者がFP姫には必要、というコトになる。



<写真=マーケティング>

 新メディアはこれからも勢力を伸ばす。旧メディアがデジタルに参入した時より決定付けられた。写真は今後も大いに重要だ。そしてタップ(クリック)数を左右する故に、媒体力にも影響を与え栄枯盛衰が存在するであろう。最早、写真はマーケティングの領域なのだ。経営を左右する。良い写真があるだけでもユーザは訪れる。「原稿(テキスト)の力」でも記した通り、原稿は人の人生を左右する。写真は記事の入り口を担うので、人の人生に寄与するコトになる。A=B、B=CならばA=Cである。


経営要素となる以上、① 原稿(テキスト)と② 写真(スチル)には一体感が必要だ。ベストは記者がカメラを持つコトだ。ただ、専門性の高い現場であればある程、その敷居は高い。記者がカメラを覚えるか、カメラマンが記事を覚えるか。現実的には前者が妥当であろう。実現した暁には他の記者やカメラマンよりも優位となる。参入障壁が高ければ高い程、乗り越えた際にはビジネス的な安定が待つ。



<個性を顕す写真>

 写真は撮り手のセンスを大いに受ける。真剣さや精神状態、現場への思い入れ。写真撮影はRoutine work(定型業務)ではなく、Atypical work(非定型業務・自由業務)なのだ。これは新旧メディアにいえるコト。新メディアの方が自由度が強い。媒体の志向性の範囲内であれば、カメラマンは自由に撮れる。写真だけでタップ(クリック)が決まるわけではないが、アクセス数として写真の実力が数値に現れる。


これからの写真は記念写真ではなく、ストーリー性が重視される。圧倒的メディア力を有す米国が左様であるからだ。彼等は感動的又は情緒的な、一枚で何がしかを物語る写真を報道に使用する。つまりは心に訴えかける一枚を撮り選ぶ。最後は編集部(デスク)との協調性。自身にとって最上と判断できる写真が選ばれるとは限らない。編集部との意思疎通を密にすれば、彼等の求める志向性の範囲が分かってくる。その中で自由に挑戦をする。


「写真っていうのはねぇ。いい被写体が来たっ、て思ってからカメラ向けたらもう遅いんですよ。その場の空気に自分が溶け込めば、二、三秒前に来るのがわかるんですよ。その二、三秒のあいだに絞りと、シャッタースピード、距離なんかを合わせておくんです。それで撮るんですよ。/戦前・戦後の写真家 木村伊兵衛」


次回は③ 映像(ムービー)について。動画共有サイトの登場により、コストは下がり絶大なプロモーションを可能とした。それは経営に強い影響を及ぼすコトを示唆する。

(了)

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