中国軍を知る|令和三年度「防衛白書」

【軍事報道】 令和三年度版「防衛白書」は四部構成。全六百八十一頁。内、中国の軍事につき、三十一頁を擁して中国政府・中国軍(人民解放軍)の仔細を記した。防衛白書の『中国軍全般』と『国防費』を報じる。


中国は過去三十年以上に亘り、透明性を欠いたまま、継続的に高い水準で国防費を増加させ、核・ミサイル戦力や海上・航空戦力を中心に軍事力の質・量を広範且つ急速に強化。「中国軍全体の作戦遂行能力を向上」させる為、「優勢な敵の戦力発揮を効果的に阻害する非対称的な能力を獲得」する為、「情報優越を確実に獲得」する為の作戦遂行能力の強化を重視。


具体的には、サイバ領域や電磁波領域における能力を急速に発展。敵の宇宙利用を制限する事等を可能とする能力強化も継続し、新領域『宙情電』における優勢の確保を重視してきている。宙情電は「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」能力強化や超遠方での作戦遂行能力の構築に繋がる。

更に中国軍の改革等を通じた近代化により、実戦的な統合作戦遂行能力の向上も重視。


加えて、技術開発等の様々な分野において軍民の双方向での結合を目指す「軍民融合政策」を全面的に推進。軍事利用が可能な民間の先端技術の開発・獲得にも積極的に取組む。中国軍によるAI活用等に関する取組みも注目。



既成事実化で着実に進める

 作戦遂行能力の強化に加え、中国政府は、既存の国際秩序とは相容れない独自の主張に基づき、東シナ海を始めとする海空域にて力を背景とした一方的な現状変更を試み、軍事活動を拡大・活発化。


特に海洋における利害が対立する問題を巡っては、高圧的とも言える対応を継続。その中には不測の事態を招き兼ねない危険な行為も視られる。加えて、力を背景とした現状変更の既成事実化を着実に進める等、と自らの一方的な主張を妥協なく実現させる姿勢も示している。


中国軍が日本国固有の領土である尖閣諸島に対する「闘争」の実施や「東シナ海 防空識別区」の設定、海空軍による「常態的な巡航」等を中国軍の活動成果として誇示。


今後とも中国軍の作戦遂行能力の向上に努める旨を強調している点や近年、実際に中国軍が東シナ海や太平洋、日本海といった日本国周辺等での活動を急速に拡大・活発化させてきた点を踏まえれば、これまでの活動の定例化を企図しているのみならず、質・量共に更なる活動の拡大・活発化を推進する可能性が高い。


こうした中国政府・中国軍の軍事動向等は、国防政策や軍事に関する不透明性と相まって日本国を含む地域と国際社会の安保上の強い懸念となっており、今後も強い関心を持って注視していく必要がある、とした。



<中国・国防費>

 中国政府は、本年度の国防予算を二十.三兆円と発表した。前年度比で約七㌫の伸び。中国の国防予算は、平成元年度から二十七年度まで毎年略二桁の伸び率を記録してきた。国防予算の名目上の規模は、同三年度からの三十年間で四十二倍になった。


日本国は上図の通り、五.一兆円(本年度)。中国の四分の一の予算で国防しなければならない。GDPは三倍差。且つ、自衛隊は正規の日本軍ではないので、中国軍よりも各種制限が多数。


中国政府は「国防」を「経済」と並ぶ重要課題と位置付け。経済発展に合わせ、国防力向上の為の資源投入を継続してきたと考える。しかし、国防予算の増加率がGDPの増加率を上回る年も少なくない。中国経済の成長の鈍化が、今後の国防費に如何様な影響を及ぼすか、注目される。


また、中国政府が国防費として公表している金額は、実際に軍事目的に支出している金額の一部に過ぎないと防衛省は視ている。例えば、外国からの「装備購入費」や「研究開発費」等は公表分には含まれていないと。米・国防省の分析によれば、令和元年度における中国政府の実際の国防支出は、公表分よりも三兆円程多いとされる。

国防費の内訳については不透明。


画像:(23)機構改革に合わせて進む中国軍の人事/毎日新聞、令和三年度「防衛白書/防衛省」

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