中小が海外で失敗する理由と対策 |中小企業海外ビジネスシンポジウム

【ビジネス考察】 昨今の経営環境の変化で中小企業は海外進出が重要な選択肢となっている。それは零細企業でも変わらない。国内のパイが飽和状態である以上、海外、特にアジアへの進出が有力となる。その際に気になる点は海外進出の壁(リスク)である。


平成二十九年二月に既報「中小企業海外ビジネスシンポジウム~勝てる海外進出と壁(リスク)の乗り越え方~/中小機構」が開催され、前半の立教大・山口義行 教授は中小・零細の海外展開は「市場を創り出す事。」とした。


後半では海外進出で成功した企業二社と弁護士、公認会計士、コンサルタントが、中小・零細のリスクを語った。登壇した企業は電子機器向けに粘着テープや保護フィルム等の機能性フィルムを開発・製造するコスモテック(代取:高見澤友伸)と自動包装機の製造・販売する大森機械工業(代取:大森利夫)。従業員数は前者が五十名程度で、後者が五百名程度だ。




<成功要因>

 コスモテックはリーマンショックの影響を受けて、売上高が六分の一に激減。高見澤代取(写真上)は「嫌々、海外に行った。」と述べ、台湾に進出し失敗した。失敗の理由を“日本人的なメンタリティ”と判断。当時は法的書類等を作らずに無償で技術提供をしていた。有利なポジションであったにも関わらず、提供した技術を模倣され、ポジションが逆転してしまった。


公認会計士の小黒健三は「日本は詰めが弱い。」と指摘し、問題点を「臨機応変能力」「(現地)管理力」「優し過ぎる」と三つを挙げた。インターリスク総研(代取:村戸眞)のコンサルタントの高橋敦司は、海外進出に失敗する共通則として、以下の三つを挙げた。裏を返せば成功要因であるとも述べた。


  1. リスクを認識していない(現地を知る)
  2. リスクテイクと無策を混合している
  3. 専門家の活用を(損保等)



重要な経営的第六感

 世界のインスタント ラーメンの包装で七割のシェアをもつ大森機械工業の大森代取(写真上)は、QAで「日本人が外国人に物を売るのは不可能。」という前提を強調。現地を任せる責任者は運と縁、ビジネス パートナとの距離感を感と縁と経営者に不可欠な第六感的な部分を主張した。


主催の中小機構(理事長:高田坦史)は、中小企業の為に「海外リスクマネジメント ガイドブック-簡易版-」と「海外リスクマネジメント マニュアルー詳細版ー」を出している。最低限でも前者を取締役会と担当部署は海外進出の前に確認しておく必要があるだろう。海外進出を考えていない段階でも把握する事で、選択肢となり得る。併せて、士業がアドバイスする通り、プロフェッショナルと損保系との連携は欠かせない。海外進出に関する有益な情報や予防策を士業と損保系で補完する。


  「中小企業海外ビジネスシンポジウム~勝てる海外進出と壁(リスク)の乗り越え方~/(独)中小企業整備基盤機構」

記事:羽田野正法×撮影:金剛正臣

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