立教大・山口義行(経済学)が「景気回復は嘘。」、中小・零細の海外展開は「市場を創り出すこと。」

【ビジネス ニュース】 既報『中小企業海外ビジネス シンポジウム「勝てる海外進出と壁(リスク)の乗り越え方/中小企業基盤整備機構』では、「立教大学」経済学部の教授・山口義行(辛卯)が基調講演『海外展開で「市場の壁」を乗り越えろ!「小さな会社」が市場をつくる」』を行った。


山口教授は経済学者で金融論が専門。中小企業サポートネットワーク(代取:山口加代美)が中小・零細企業の経営者の為に知的ネットワーク「スモールサン」を立ち上げ、主宰を山口教授が務める。「スモールサン」には組織変革や海外進出、ヘルスケア等のプロデューサ十名の専門家が加盟している千五百社に対し支援を行っている。




<“ぬるま湯資本主義”の終わり>

 山口教授は講演で経営者に必要な三つの能力「読むチカラ」「問うチカラ」「繋ぐチカラ」を挙げた。「読むチカラ」は、経済や経営トレンドの世界の流れを読む事だ。中小・零細の経営者は身近な信用できる人物からの情報を重視しており、“危険”と断定。世界の情報を軽視していると言う。「問うチカラ」は、自社の存在意義だ。自社(事業)の存在意義を問い続ける事で顧客ニーズとの乖離を回避できる。「繋ぐチカラ」は、他社との協業だ。「一社(一人)でやろうとするとこける。」と警鐘を鳴らした。


日銀短観のデータを用い、「景気が緩やかに回復している、は嘘。」と語気を強めた。「実態は緩やかに落ちてきている。」と述べ、現状を“ぬるま湯資本主義”と揶揄。経営者に景気が下がっている前提の認識に立つ様に諭した。根拠には日銀「コールレート」を挙げ、ゼロ金利が十七年間も続いている異常事態と伝えた。そして国債の保有シェアが日銀で四割になった事と米トランプ政権の誕生で、現状が限界に達していると推測。ドル高を嫌うトランプ政権は、日本政府の日銀の超低金利政策が円安を誘導していると責めた。


「そろそろ、“ぬるま湯”が終わる。前は資金繰りが経営者の仕事だった。」と暗示し、超低金利で操業してきた経営陣を危険視した。日銀の金利が上がれば、銀行の貸出し金利も上がる。円高に振れれば、輸出企業・海外展開にも経営的な打撃を与える。



海外展開は雇用をつくり、零細が向く

 山口教授は打開策として各社の経営課題の明確化を挙げた。課題解決で直面する三つの壁「市場の壁」「地域の壁」「人手の壁」を乗り越える必要がある。特に「人手の壁」は高く、国内の生産年齢人口の減少を変えるには四十年と絶望的。逸早い海外展開を推す。


海外展開に関する二つの誤解「産業空洞化のウソ」「海外展開は百人規模以上のウソ」を説明。前者は根拠を中小企業白書に依り、十四年を基準年に海外展開した企業の方が国内の雇用数が一割多い。後者は、可処分所得が増えているアジア等において、大企業が事業を行えない分野(ニッチ)で商機がある点を事例を交えながら示した。「リスクの前にニーズ。ニーズが的確なら、向こう(現地)が何とかしてくれる。」と自信をもつ。



隣接異業種

 海外展開は「市場を創り出す事が目的。」と断言し、日本の中小・零細が市場を創る時代である点を声高に言い放った。また「何をやるか、から何が出来るか。繋ぐチカラさえあれば、中小にとって(市場)飽和は無いですよね。」と無限大の可能性がある事を述べた。更に事業展開において、「隣接異業種」という言葉を用い、事業ドメインに隣接している業種への参入(アメーバ的拡大)を促した。最終的には情報が重要と締め括った。


零細は最もフットワークが軽い。「スモールサン」や「新輸出大国コンソーシアム」等のネットワークに加わり、支援によってSNS(FB有力)を横展開する事で海外進出が可能になるであろう。日本品質は大方、アジアでは間違いなく受け入れられる。商品・サービスの品質を落とし、その国の可処分所得に合わせる事が出来れば、即、寡占と成り得る。


中小企業海外ビジネス シンポジウム『勝てる海外進出と壁(リスク)の乗り越え方/(独)中小企業基盤整備機構』(東京会場)


撮影記事:金剛正臣


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