≪重要≫ハイクラスの為の新安保法制(平安法制)

【政治解説】 第一八九回 国会で新安保法制(平和安全法制)が成立した。日本国においては最上級のクラスに入る法制なので、改めて中身を俯瞰する。「新安保法制」の表記は歴史的な違いを指し示すタメである。

・旧(日米)安保条約:昭和二十六年に締結(「サンフランシスコ平和条約」締結に同日)

 正式名称;「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約」
 行政府;第三次吉田内閣 (第二次改造)
 内閣総理大臣;吉田茂


・新(日米)安保条約:昭和三十五年に締結

 正式名称;「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」
 行政府;第二次岸内閣(改造)
 内閣総理大臣;岸信介


・新安保法制(平和安全法制):平成二十七年に成立

 正式名称;「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律(平和安全法制整備法)」と「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律(国際平和支援法)」の総称
 行政府;第三次安倍内閣
 内閣総理大臣;安倍晋三


前二者は条約で後一者は一国内の法律である。条約の方がランク上であるので、同じ条約クラスの様なイメージをもつ「安保」を使用するコトは誤解を招く。政府・与党は略して「平安法制」と訴えたが、メディアの喧伝により「安保」という文言が定着したタメ、前二者と明らかな違いをつける「新安保法制」と称するモノである。


ではナゼに“法”ではなく、“法制”なのであろうか。それは、いくつもの法改正と新規に制定された法を纏めたパック型だからだ。新安保法制の正式名称は、「平安法制整備法」と「国際平和支援法」の総称と先に記した。前者は、十本の法律を一気に変えるタメの法律だ。後者は、次の通り。

国際平和支援法:国際的な対処事態に日本(自衛隊等)が諸外国に対し活動(協力・支援)等をするタメの法律


次に前者に戻り十本を示す。各法は成立後の名称。

1. 自衛隊法
2. 国際平和協力法
3. 重要影響事態安全確保法
4. 船舶検査活動法
5. 事態対処法
6. 米軍等行動関連措置法
7. 特定公共施設利用法
8. 海上輸送規制法
9. 捕虜取扱い法
10.国家安全保障会議設置法


各法の主要事項等は内閣官房・内閣府・外務省・防衛省が共同で公開した『「平和安全法制」の概要 我が国及び国際社会の平和及び安全のための切れ目のない体制の整備』を参照されたい。



<違憲状態はどうなったのか?>

 憲法学者は、圧倒的に原案を違憲状態と見解を示した。ときの内閣(行政府)が集団的自衛権を行使するコトは日本国憲法的にアウトであると。政府・与党は国会終盤でこれを覆した。元気会ら野党三党の修正案を原案に付帯決議と盛り込んだ。これにより、ときの内閣(行政府)が集団的自衛権を行使したい際には、国会(立法府)の承認が例外なく必要であると変わった(成立後に説明する元気会 -動画-)。何を意味するのか?


集団的自衛権の行使の権限は、ときの国会(立法府)に


詰まり集団的自衛権の行使を、ときの国民を代表する者の判断に委ねたコトで、違憲ではなく合憲状態で成立をさせた。違憲かどうかを判断するのは、最高裁。それを「違憲立法審査権」という。野党三党との合意により、最高裁が直ぐに違憲と判断できる新安保法制ではなくなった。安倍総理が狙う改憲で尚更、新安保法制の合憲性が未来に高くなる。



<憲法≦国際政治の事実>

 新安保法制は国内法だが、その効果は国際協調、ひいては国家防衛だ。憲法学者は内向きであり、外の国際情勢には強いと云えないだろう。国会中に公明党は、同志社大の学長を務める村田晃嗣を推薦した。村田学長は国際政治を専門にし、米国に太いパイプをもつ。

 | 国際情勢についても大きな議論がやや不足しているのではないか。その点について、与野党が、しっかりと国際情勢認識について、議論していただくことが大切な前提ではないかと思う。もちろん憲法の精神を守らなければならないのは、言うまでもない


日本は経済大国で自衛隊の能力も世界的に高い。国際協調、とりわけ日米同盟は軸であり、オーストラリアやフィリピンとも今後は同盟レベルまで上がるかも知れない。環太平洋のエリアを同志で守る。具体的な見える防衛であり、抑止力となる。集団的自衛権は、結局のところ個別自衛権に行きつく。今回は憲法学に寄り過ぎた。グローバル時代には国際政治学は絶対に欠かせない。先の民主党政権はここで大きな失敗を犯した。



<教育は義務である>

 憲法の第二十六条に教育を受ける権利と義務教育が定められている。同じく憲法の第二十七条に勤労の義務がある。現代において、勉学を止め勤労し続けるコトは可能であろうか。イマは大人の学びも義務である。さもなくば、誰しもがニート・フリータに堕ち勤労の義務を果たせないだろう。


 | アメリカでも、同様のアンケートを取る時があります、しかし、その時は『説明不足』と言えるだけの根拠を用意します。『たった5分の会見しかしていない』や『HP一つ作られていないが…』といった、国民が努力しても情報を得られなかったという論拠を示します。逆に、明確な論拠もなければ、そういった質問はしないでしょう。国を動かす法案や選挙に対しては…


国民一人一人が自分たちで勉強することは、民主主義国家に生きる国民の、当然の義務

だからです


フリーアナウンサの長谷川豊が辛辣な言葉を並べながらも、的を射た持論を展開している。政府は世界と比較し説明に時間を多く費やした、と。しかし説明は下手だった、と。打開策は「報道官」の設置だ、と。「新安保法制」について学ぶチャンスは嫌という程にあった。「新安保法制」は難易度AAと云っても過言ではない。



<本来は何年もかけて学ぶレベル>

憲法学者や先の村田学長は、法学部出身である。
彼等が教える学生らは法学の最低限の知識がある。
法学部には国家試験(司法試験・国家公務員一種)に示される通りに、難易度が最上級の資格がある。
「新安保法制」は閣法で超エリート官僚(主に東大文一出身)が立案している。
この国は法治国家なので、法が最上である(三権分立)。


次に、法を伝えるコトが本来の仕事の報道機関は?

政治部で国会内や政府内の記者は、各社の最上位の記者である。

上記の記者は主にエリート向けで記事を作成する(紙面の威信にかかわる)。

上記の記者らと社会部等の記者らが情報共有の時間がない(社会部は砕き方が上手い)。

紙面やテレビの尺には限界がある(十一本の法律を細やかに説明できない)。

難易度AAを、学んでない者に分かり易く伝えるコト自体が難易度Sである。


IQが全てではないが、IQ百前後はキープされたい。脳も筋力に同じで、鍛えれば脳の力が発達する(灰白質の増加等)事実は科学的に立証されている。後世も学ぶ新安保法制。子や孫の世代に答えれる準備が必要だ。その時に新安保法制の説明の難しさが分かるだろう。

(了)

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