稼げる中小企業が明確に|中小企業白書2017

【ビジネス報道】 中小企業庁/経産省は平成二十九年四月二十一日に、「平成二十八年度 中小企業の動向」「平成二十九年度 中小企業施策(中小企業白書)」と「平成二十八年度 小規模企業の動向」「平成二十九年度 小規模企業施策(小規模企業白書)」を取り纏め、公表した。閣議決定も同日。



五十三回目の中小企業白書は、「中小企業・小規模事業者(零細企業)の景況が緩やかな回復基調にある中、国内市場の縮小、人材不足、設備の老朽化など、様々な環境変化や課題も顕在化。」とポイントを挙げ、本白書が「稼ぐ力を強化し、“多様で活力ある成長発展”を目指す中小企業の取組について分析する。」とし、以下の四つに大別した。


  1. 現状分析
  2. 稼げる中小企業の取組み
  3. 中小企業の成長を支える金融
  4. 中小企業の経営力



IT投資の重要性

 一では、中小企業の経常利益が過去最高の水準である点に触れているが、売上高が伸び悩んでいる点を伝える。大企業と比較すると、直近七年間で経常利益の成長率に倍近くの差が出ている。売上高の推移は、直近五年で大企業と逆転し、平行に推移している。その差は十三兆円。中小企業の収益増加の背景は「売上高の減少」「変動費の減少」「人件費の減少」を主因と視た。だが、設備投資の伸び悩みと設備の老朽化を踏まえ、今が省力化・合理化、稼ぐ力を高める必要性を説く。特に生産性が高い中小企業は、成長投資に積極的に取組んでいると分析。


二では、一番目にIT投資を持ってきた。「高収益企業では、IT投資により、営業力強化や売上拡大等の効果を得ている。」と断言。現場の声や研修、業務プロセスの高度化等の同時進行とアウトソースの活用を以って、IT投資を計画的に実施していると帰結。IT投資の次は海外展開。海外展開により生産性向上や国内従業者の増加を実現しており、「高収益企業は、マーケティングや計画策定を進め、外国人も含めた人材の確保・育成を行いつつ、モニタリングを通じてリスクにも備えながら、海外展開により売上拡大等を達成している。」とした。最後はリスクマネジメントについて挙げた。




金融機関との日々のコミュニケーション

 三では、無借金企業が増加傾向で、借金企業より利益率が低くなる傾向があるとし、投資への積極性と金融機関と関係が希薄と指摘。資金調達に関し、「まずは企業が今後の事業計画等を積極的に伝えていくことが重要」とコミュニケーションを訴えた。金融機関に対しては、「中小企業から相談を受けることが多い士業等専門家等の関係者と連携を深め、事業性評価に基づく融資や企業の成長に向けた非金融面での支援を実施していくことが重要。」と注文。


四では、収益性・投資・経営者の特徴を纏めた。稼げる企業は、自己資本比率が四十㌫以上(大企業平均)で経常利益が四㌫(大企業平均)と定めた。「売上高対固定資産取得額」割合の推移(九年間)では、稼げる企業は五十㌫を超えている。売上高の半分を固定資産に費やしている事になる。また「経営者年齢が上がるほど、投資意欲の低下やリスク回避性向が高まる。」とした。




<稼げる企業とは>

 稼げる企業を纏めると、経営者がビジョンを明示し、従業員の声を聞き、人材育成や業務プロセスの高度化等を行う事で、更に生産性の向上に繋げている共通点を見つけた。事業性評価に基づく融資を実現する為に企業は、事業計画等を積極的に金融機関に伝える事が重要とした。そして、低収益企業は投資に保守的な傾向があり、高収益企業は計画的・積極的に投資を行い、リスクへの備えも行っていると纏めた。


画像:2017年版「中小企業白書」(概要)/中小企業庁

記事:羽田野正法

0コメント

  • 1000 / 1000