百合子都知事が脱毛エステ店を『消費者被害 救済委』へ付託

【社会報道】 令和三年十一月三十日に小池百合子(壬辰)都知事は、「都消費生活条例」に基づく紛争処理機関である『都消費者被害 救済委員会(会長:村千鶴子)』へ標記紛争の解決を新たに付託した。


申立人は二十代の女性(契約時アルバイト従業員)。契約内容は「全身脱毛エステ契約(契約金額約五十万円)」。



=申立人の主張による紛争の概要=

 今年四月頃、SNSに入ってきた「月額二千九百円、今だけ初月〇円、フェイシャル毎回無料」という脱毛エステの広告を見て、この価格なら払えそうだと思い、無料カウンセリングを予約した。カウンセリングで担当者から「一番安いものでは効果がない。」と、全身脱毛三十回コースを勧められた。


クレジットの分割払いについて説明されたがよく分からなかったので、「お任せします。」と言うと、担当者からクレジットカード二枚を渡す様に指示され、勝手に約五十万円のコースを決済されてしまった。担当者からは「カードの登録をしただけ。一週間以内なら止められる。何かあったら連絡して欲しい。」と言われたので、後日、何度も電話や店を訪ねて止めたいと伝えたが、その都度引き止められ、結局、続ける事を了承してしまった。


三回施術(内、一回は当日キャンセル)を受けた後、月々の返済に困り、解約する意思を伝えた所、担当者から「今解約しても約十万円しか返金できない。」と言われた。契約書をよく見ると、施術三十回の内、有料なのは最初の四回のみで、二十六回分は無料と記載されており、その為、三回分の金額は返金されないという事だった。その様な説明は受けていないし、納得もできない。金額は全三十回分として精算し、返金して欲しい。


=付託理由=

 都内の消費生活センターには、脱毛エステに関する相談が、平成三十年度から毎年約四百件で推移していて、令和三年度上半期では既に二百五十件を超える相談が寄せられている。


脱毛エステの中には、低価格を強調した広告で消費者を誘引し、実際には高額なサービス契約を勧誘するケースも見受けられる。特に、広告では「脱毛し放題」等と謳いながら、有償の施術回数を少なく設定し、後の施術は無償サービスとする形態の契約については、中途解約時の精算トラブルが絶えない。


また相談者は十代、二十代の若年者が多く、令和四年四月一日から成年年齢が十八歳に引下げられると、更に被害の拡大が懸念。本件を解決すると共に、本件の考え方を広く示す事により、若年者への注意喚起を図り、被害を未然に防ぐ為、本件を付託する。


=主な問題点=

 本件は、契約金額約五十万円、役務提供期間一年間の全身脱毛エステ契約であり、特定商取引に関する法律に定める「特定継続的 役務提供」に該当すると考えられる。


  1. 事業者には法定記載事項を満たした契約書面の交付が義務付け。本件契約書面には施術内容、月々の支払金額等、記載事項の不備が認められる事から、契約書面を受領して八日以上経過していてもクーリング・オフが可能ではないか
  2. 申立人は、勧誘に当たって「全身脱毛三十回コース」と説明を受けたが、本件契約書面には四回(単価約十二万円)と二十六回(単価〇円)と記載。また事業者は支払総額、条件等を申立人に説明せずに勝手に決済を行った上、「カードの登録をした。」と契約の成立を告げなかった。これらは「不実告知」や「重要事項不告知」に該当するのではないか
  3. クーリング・オフでなく中途解約とする場合、事業者は有料分四回の内、実施した三回分を支払うべきと主張しているが、実態は三十回の有料サービスとして考える事が妥当ではないか



本契約は三十回のコースの内、最初の四回分を有料としている為、中途解約する場合に返金額が著しく少なくなる。四回以上施術を受けると一切返金を受けられない為、消費者にとって著しく不利である。また、当日キャンセルについても施術料金一回分(約十二万円)をキャンセル料として請求されており、実際の損害額に比して著しく高額であると考えられる。

これは『消費者契約法』における不当条項に該当するのではないか。



事業者の広告では、恰(アタカ)も月払いで脱毛サービスが受けられるかの様な表示や当初一ヶ月分が無料であるかの様に表示されているが、実態はローン契約の金額であると想定される。この様な表示は『特定商取引に関する法律』の「虚偽誇大広告」や「不当景品類及び不当表示防止法の有利誤認」に該当するのではないか。


=都消費者被害 救済委員会における今後の処理=

 都知事が委員会に付託したので、委員数名による部会を構成し、同部会で審議を行う。両当事者から話を聴き、公正な解決策を検討し、両当事者に斡旋案として提示。両当事者が受諾すれば解決。斡旋案の考え方は当該紛争だけでなく、他の類似紛争の解決にも役立つ事から、「都消費生活条例」に基づき、広く都民の方々や関係者に知らせている。


本委員会は知事の附属機関。弁護士や大学教授等の学識経験者、消費者団体の代表、及び事業者団体の代表で構成。都内の消費生活センタ等の相談機関に寄せられた消費生活相談の内、都民の消費生活に著しく影響を及ぼし、又は及ぼすおそれのある紛争について、公正且つ速やかな解決を図る為、斡旋・調停等を行う。


画像:東京都

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