業界の財務平均値を知る;各論|平成二十八年度 東京の中小企業の現状(サービス産業編)

【ビジネス考察】 前回「競合の現状を知る;総論|平成二十八年度 東京の中小企業の現状(サービス産業編)」では大概を診た。今回は細部のデータを診ていく。


企業の成長要素「設備投資」の実施割合は平成二十八年度でサービス業が二十一.一㌫。およそ五社に一社が「設備投資」を行っている。全体平均は十八.五㌫。業種トップは、製造業の二十二.七㌫。



所在地の狙い目は都心・副都心以外

 財務状況はサービス業を「企業支援」と「生活支援」に分ける。二十七年度で従業者数は前者が六十人名、後者が六十四人。以下、同順。売上高増加比率は四.〇㌫と▲一.七㌫。売上高経常比率は二.五㌫と二.七㌫。人件費比率は四十二.七㌫と四十二.〇㌫。次の生産性は重要だ。「従業者一人当たり年間売上高」は一千四百六十三万千円と一千六百二十五万三千円。「売上総利益対人件費率」は六十七.六㌫と五十五.二㌫。支払余力を示す流動比率は三百三.四㌫と二百八.二㌫。自己資本比率は三十一.二㌫と十三.七㌫。後者の方が他人資本に依存している。

これらの数値は集計平均で代表平均ではないが、目安(基準)とはなる。


従業者の規模は「一から四人」が五十三.二㌫で最多。先の平均で考えると一部の中小企業が平均を六十人近く押し上げている。代表者の年齢は六十代が三十四.八㌫と最多。成長エンジンの若手である三十代以下は前回調査より微増したものの、二.五㌫と、都による大きな支援の余地がある。所在地は都心(千代田・中央・港)が二十七.二㌫で最多。次いだ副都心(新宿・文京・渋谷・豊島)を合わせて全体の過半に達する。以下は多摩、城東(台東・墨田・荒川・江東・足立・葛飾・江戸川)、城西(世田谷・中野・杉並・練馬)、城北(北・板橋)、最下位は城南(品川・目黒・大田)。

都心及び副都心はオフィス賃料という固定費の面で避けるべきであろう。ネットの時代に余り固執するべきではないだろうか。



創業はスピンオフが最多、売上高は

 資本金は三百万以上一千万円以下が四十五.五㌫と最多。三百万円以下は三十一.三㌫。支社等の有無では無いが八十七.〇㌫。創業年は平成六年から十五年までが二十三.九㌫と最多。次いで平成十六年以降が二十二.六㌫と迫る。昭和三十九年以前は六.八㌫。代表者の世代数は創業者が七十一.一㌫と最多。四代目以降は四.七㌫。創業の経緯は「関連業界スピンオフ」が四十一.〇㌫と最多。次いで「独自型」が二十二.四㌫。


直近の売上高は一千万円以上三千万円未満が二十三.五㌫で最多。次いで一千万円未満が二十二.二㌫。十億円以上は三.七㌫。従業者が三十人以上で五億円以上が六十八.二㌫となる。従業者三十人以上を目指す事が統計的に有意であろう。直近の売上高経常利益率は赤字が二十八.九㌫と最多。十㌫以上は二十.一㌫。直近の売上高に対する総人件費は四十㌫以上五十㌫未満が十八.二㌫と最多。次いで二十㌫以上三十㌫未満が十七.〇㌫。




<競合を知り経営戦略を練り直す>

 経営指標を中心に診てきた。ベスト プラクティスだけを追うのは危険が伴う。企業により個性が異なるからだ。業界平均を知る事によって、自社の成績が分かる。但し平均値はグラフ上、上位企業により最頻値の右に位置する事が多い。中小・零細企業は最頻値を目指してはならず、平均値を目指した中長期の経営戦略を練るべきであろう。


持続可能性という流行り言葉の大本である「ゴーイング コンサーン」は、場当たり的では成し得ない。何がしかの設備投資を毎年に行い、従業者の生産性を上げ、従業者三十人の雇用を狙う。そして経常利益率の向上を図れれば、売上高五億円以上と成り得、安定経営の軌道に乗れる。年一億円を狙う企業と五億円を狙う企業では、経営戦略が全く異なる。同時に企業内の従業者のモチベーションやアイデアの多寡も大きく変わる。


次回は経営戦術的に『平成二十八年度 東京の中小企業の現状(サービス産業編)』を診る。


記事:羽田野正法

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