【政治報道】 岸田総理(丁酉)は、令和五年二月十五日に総理大臣官邸にて第十四回『新しい資本主義実現会議』を開催。内閣官房の基礎資料にて、従来の日本の「メンバシップ型雇用(M型雇用)」と「ジョブ型雇用(J型雇用、職務給)」の違いを示した。
内外の賃金格差の指標として「実質賃金/人の伸び率」を用いた。平成三年~令和三年の三十年間で、日本=一.〇五倍。米=一.五二倍、英=一.五二倍、独仏=一.三四倍。
議論後に岸田総理は、「同じ職務であるにも関わらず、日本企業と海外企業の間に存在する賃金格差の解消を目指します。」と意気込んだ。
<職務別賃金差>
「職務別」では、日本と他の先進国等を比較。同じ職務で著しい賃金差が存在し、特に高いスキルが要求される分野(IT、データアナリティクス、経営・企画等)では、その差が著しい。上図。日本企業と海外企業との賃金格差が大きい為、職務毎の賃金格差解消を不可避とした。
スキル差とも対比した。同じ国の中でも、他の先進国において職務に求められるスキルに応じた賃金差がある。上図。
例えば、IT・データアナリティクス等の高いスキルが要求される職種には、高い賃金を獲得できる。対して日本企業は、獲得したスキルに応じた賃金差が小さく、スキルの高い人材が報われにくい制度となっている。
ジョブ型雇用(職務給)とは?
M型とJ型の違いとして、「基本的な考え方」「人事制度」「人事マネジメント」「人事運営」「キャリア形成」「特徴」に分けて可視化。上図。
M型の採用は新卒一括採用が中心で、異動は会社主導。企業から与えられた仕事を頑張るのが従業員であり、将来に向けたリ・スキリングが生きるかどうかは、人事異動次第となる。構造的な賃上げの基礎となる「従業員の意思」による自律的なキャリア形成が行われ難いシステム、と断じた。
個々の職務に応じて必要スキルを設定し、スキルギャップの克服に向け、従業員が上司と相談をしつつ、自ら職務やリ・スキリングの内容を選択していく制度に移行する必要性を訴えた。
<ジョブ型移行の割合>
日本企業へアンケート調査した結果(マーサー社調べ)、今後三~五年の内にJ型へ移行する「管理職(ライン)」=十五㌫、「管理職(ノンライン・プロ職)」=十六㌫、「非管理職」=八㌫。
以下が、日本企業がJ型を導入する理由(コーン・フェリー社資料を基に作成)。
- 処遇の適正化;年齢が高いだけで高い処遇を得ている社員に対して、報酬面での適正化を図る(仕事や成果に応じた処遇への見直し)
- 高度専門人材の獲得;最先端の知見を有する人材(デジタル等)等、専門性を持つ人材が採用できる報酬の仕組みへ
- 若手の優秀人材の抜擢;有するスキルと職務登用に一定の連動がある為、従来では重要な職務に就ける事ができなかった若手を、適材適所の観点から抜擢可能
- 将来有望な社員のリテンション;従来の制度では高い処遇を得る事ができなかった、若年ながら高いポテンシャルを有する社員に相応しい処遇を与え、社外への流出を防止
- グローバル化への対応;日本以外の先進国では、J型雇用が一般的となっている所、国や地域を越えた全世界共通の報酬体系に向かわないと、社内に人材を維持する事が困難
ポスティング制度
J型導入に当たっては、個々の企業特性に応じた導入の在り方があり、個々の企業に合ったJ型の導入方法を類型化して示す事を必要、とした。具体的には、企業によってJ型を順次導入する。或いは、「個々人のパフォーマンス」や「行動の適格性」を勘案する等の導入方法を類型化し、モデルを示し、導入し易くする事が必要とした。
また「ポスティング(P)制度」も例示。P制度は、社会の職務=ポストへの公募制度の事。公募対象のポストの内容・スキルを明示し、社員応募より適任者を選抜する仕組み。
日本ではP制度を導入している企業=三十七.九㌫。しかしながら、スキルと関係が無い要件(勤続年数・年齢・特定職位等)を応募要件に定めている企業が多く、若手を含めて適材適所を達成する手段になってないケースがある点を強調した。
画像:総理大臣官邸、基礎資料/内閣官房
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