ドナルド・トランプと金正恩が狙うもの

【政治考察】 史上初の米朝首脳会談が平成三十年六月十二日にシンガポール・セントーサ島で行われ、ドナルド・トランプ(丙戌)米統領と金正恩 北国務委員長は共同声明に署名した。声明では新米朝関係の構築、朝鮮半島の平和体制構築への共同努力、北朝鮮が朝鮮半島における完全非核化への努力約束と戦争捕虜や行方不明兵の遺骨回収への尽力の四点で合意した。


米は北に「安全の保証提供」を行う。北は弾道ミサイルに掛かるミサイルエンジンの実験場の破壊を約束したと言う。声明に非核化の時期等の具体策は盛り込まなかった。トランプ統領の記者会見で北への経済制裁を続ける方針を示し、完全非核化には時間が掛かる点に触れた。東京通信大の重村智計(乙酉)教授によれば、核の完全廃棄には五年以上と試算。その他の試算では十年から十五年ともされる。


そして非核化の費用は日韓が負担するものとし、米は一切の費用を払わない意向を伝えた。米経済専門誌「フォーチュン」と英「ユーリゾンキャピタル研究所」との共同分析では今後十年で二百二十兆円と見積もる。韓「中央日報」は内、七割を韓が負担する可能性に言及。残りの三割となる六十六兆円を日本が負担する事になり得る。本年度の国家予算(一般会計)で九十八兆円である。


またトランプ統領は米韓合同軍事演習の中止も示唆。将来に在韓米軍は削減・撤退させたい意向も示した。今後は米朝高官で非核化への協議を進める。


安倍晋三(甲午)首相はトランプ統領との説明を含めた電話会談の後に記者団と官邸で対面。神妙な面持ちで拉致問題について北と直接向き合って解決しなければならない点を伝え、「今後は日米韓でしっかり力を合わせ、また中国やロシア、国際社会と力を合わせながら。」と日本としての役割を果たしていく。


文在寅(癸巳)韓統領も会見を歓迎し、七十年近く続く朝鮮戦争に終止符を打つ楔と認識した。



<G7対抗>

 今回の会談において、まず認識すべきはトランプ統領が国家権力をもつビジネスマンという点だ。米国ファーストを掲げ、保護主義に突き進む。先のG7においても自動車の関税措置を検討する為に首脳宣言を承認しない選択を採った。そしてロシアのサミット(G8)復帰願望を公言。七月のEUへの報復関税だけでなく、それは日本にも及ぶ。隣国のカナダにまで関税導入を示唆。対カナダとの貿易収支は黒字にも関わらず。


トランプ統領は二年後の再選に向けて、成果が欠かせない。今回の歴史的会談も一つだが、最も重要な要素は経済だ。現G7間では後二年で目立った成果は得られない。だからこそ、発展途上の余地が大きい北を狙う。当の金委員長も中韓以外のシンガポール観光を経て、北の経済建設に意欲をもっているだろう。北としても中国への全面平服は望まない。前回の中、今回の米に続き、露との首脳会談も視野に入っている。併せて米露首脳会談の狼煙も上がる。


非核化への工程不明も単純は話しだ。誰が費用を負担するのか、何時までに支払うのか。経営計画で資金調達の話しを無しに他社との取り決めはできない。北の非核化の負担者は日韓だ。十三日の報道各社の論説は強い文言だが、非核化に国民の税金が使われる事を了承しているのだろうか。それはオスプレイ等の国防費の比では無い。非核化費用に関して、トランプ統領は安倍首相に国民の了承を強いたものとみる。その費用を元に北は経済建設を図るだろう。


外交における最終カードは軍事力である。そこはせめぎ合う。米としては、できる限り軍事力を維持してEU対抗の新経済圏を目論んでいる可能性を孕んでいる。経済発展させる北を軸に露と中、そして日韓。まとめれば米中露日朝。大国同士なので明瞭なグループ化にはならず、ビジネス的な緩い連結関係の、ややブロック経済寄りな方向性へと狙っているではないだろうか。


トランプ統領は記者会見で「取引をしたい。私がする事は取引だ。取引は世界にとって利益になる。」と取引を重ねた。


画像引用:Trump and Kim shake hands in scene complex as their rivalry/AP、Für freien Handel und Multilateralismus/ドイツ政府

記事:金剛正臣

0コメント

  • 1000 / 1000