令和九年までに八十三兆円を動員、民間を含む|G7広島首脳声明

【政治・経済報道】 七ヶ国首脳会議(G7)は、令和五年五月二十日に『G7広島首脳声明』を発表した。英語原文で四十頁。


広島サミットは十九日~二十一日に開催。豪州・ブラジル・コモロ・クック諸島・インド・インドネシア・大韓民国・ベトナム・ウクライナの各首脳が参加した。前文における具体的な措置(第一条)が以下。


  1. 必要とされる限り、ウクライナを支援
  2. 核兵器の無い世界という究極の目標に向け、軍縮・不拡散の取組みを強化
  3. 多様化、パートナシップの深化及びデリスキングに基づく「経済的強靱性」及び「経済安保」への協調
  4. 将来のクリーン・エネルギ経済への移行を推進
  5. 「強靱なグローバル食料安保に関する広島行動声明」を発出
  6. 「グローバル・インフラ投資パートナシップ」を通じ、質の高いインフラへの資金提供において最大=六千億米㌦(八十三兆円)を動員する目標を実施 



重点二項目

 本年の首脳声明は、以下の二十一項目・六十六条に亘った。中でも「世界経済・金融・持続可能な開発」と「地域情勢」は十条を超えた。


  1. 前文;三条
  2. ウクライナ;一条
  3. 軍縮・不拡散;同
  4. インド太平洋;同
  5. 世界経済・金融・持続可能な開発;十一条
  6. 気候;四条
  7. 環境;三条
  8. エネルギ;二条
  9. クリーン・エネルギ経済;一条
  10. 経済的強靱性・経済安保;二条。「経済的強靭性及び経済安保に関するG7首脳声明」を採択。「重要鉱物セキュリティの為の5ポイントプラン」を歓迎
  11. 貿易;一条
  12. 食料安保;二条
  13. 保健;三条。「首脳級のガバナンス」に向けた政治的モメンタムを更に高める事にコミット。「分担金の割合」をWHOの基本予算(令和四ー五年)の五十㌫へ引上げに向けて取組む「世界保健総会」の決定を称賛
  14. 労働;一条
  15. 教育;同
  16. デジタル;二条
  17. 科学技術;同
  18. ジェンダ;三条
  19. 人権、難民、移住及び民主主義;同
  20. テロリズム、暴力的過激主義、国際的な組織犯罪への対応/法の支配の堅持/腐敗対策;二条
  21. 地域情勢;十七条


以下にて二項目を要約する。


世界経済・金融・持続可能な開発

(第七条)我々は、「中期的な財政の持続可能性・物価安定の支援」と「マクロ経済政策」の組合わせにコミットしている。


全体的な財政スタンスとしては、中期的な持続可能性を確保。財政政策は引続き、適切な場合には、「生活費の上昇に苦しむ脆弱なグループ」に対して、一時的な且つ的を絞った支援を提供。GX・DXへ必要な投資を促進すべき。


我々は、供給サイドの改革(特に労働供給の増加、生産性の向上)の重要性を改めて強調。


我々は女性及び十分に代表されていないグループの極めて重要な役割を強調する。



(第八条)我々は、ノンバンク金融仲介の強靱性の強化に関する「金融安定理事会(FSB)」及び基準設定主体の作業を強く支持する。



(第九条)我々は、OECD/G20包摂的枠組みによる「経済のグローバル化及びデジタル化に伴 う課税上の課題」に対応する。



(第十条)我々は、令和十二(二〇三〇)年までの「持続可能な開発目標の達成」「貧困削減」「グローバルな課題への対応(気候危機を含む)」「低・中所得国における債務脆弱性への対処」へ、必要な民間資金・公的資金を動員する為、自らの役割を果たす決意である。



(第十一条)我々は、SDGs達成に向けて主導的な役割を果たす事を決意する(「持続可能な開発の為の二〇三〇アジェンダ」「アディスアベバ行動計画」)。


我々は、持続可能な開発の為の「資金ギャップ」へ、既存資金の効率的な使用・国内資金の更なる動員・民間金融資産の動員を求める。


我々は、ODAの増加(革新的資金調達メカニズムを含む)とその触媒的な利用の拡大の為の継続した取組みの必要性を強調する。



(第十二条)我々は、債務脆弱性に対処する緊急性を再確認し、「債務支払猶予イニシアティブを越えた債務措置に係る共通枠組み」の実施を改善する為のG20の取組みを完全に支持する。


我々は、日仏印の三ヵ国の共同議長の下、「スリランカ」の為の債権国会合が立上げられた事を歓迎。中所得国の債務問題に対処する為、将来の多国間の取組みの成功モデルとして、迅速な解決を期 待する。


また我々は「民間債権者」が、債務措置を少なくとも同程度の条件で提供する事の重要性を強調する。



(第十三条)我々は、中所得国・開発金融機関に対し、民間資金を活用する能力を高める為の取組みを加速させる事を奨励する。


世銀Gにおける、今後十年間で最大・五百億米㌦(七兆円)のファイナンス能力を追加できる「財務改革」と「世銀Gのミッション」と「運用モデルに関する主要な改革」を基礎として、我々は本年の世銀G・IMF年次総会とそれ以降に向けた更なる進展を期待する。


我々は、日仏による追加の誓約が、計一千億米㌦(十四兆円)の世界的な野心を射程に入れた事を歓迎。意欲ある、貢献可能国からの更なる誓約を要請する。



(第十四条)我々は、低・中所得のパートナ国の「インフラ投資ギャップ」を縮小する事の重要性を強調する。


我々は、「G7グローバル・インフラ投資パートナシップ」及び「協働に向けた我々の共通のコミットメント」を再確認し、令和九年までに六千億米㌦(八十三.二兆円)を動員する事を目指す。


我々は、この目的に向けた行動を加速する為、「民間部門」を動員する。



(第十五条)我々は全主体へ、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」「G20持続可能な貸付に係る実務指針」「OECD国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」の国際ルール・スタンダード・原則を遵守する事を求める。



(第十六条)我々は、女性・女児・脆弱な状況にある人々に焦点を当てた「人道危機」に対処する事を決意する。本年、計二百十億米㌦(三兆円)以上を供与する事にコミットする。



(第十七条)我々は、持続可能な開発の凡(アラ)ゆる側面における推進力として、世界の都市の変革の力を強調する。


地域情勢

 G7はロシアではなく、中国に焦点を当てた。


(第五十一条) 我々は、G7のパートナとして、中国との関係を支える以下の要素について結束する。

  1. 中国と建設的、且つ安定的な関係を構築する用意。我々は国益の為に行動。グローバルな課題・共通の関心分野において、中国と協力する必要
  2. 中国に対し、「天然資源の保全」「脆弱な国々の債務持続可能性と資金需要への対処」「マクロ経済の安定」等の分野で、国際場裏を含め、我々との関与を求める
  3. 我々の政策方針は、中国を害する事が目的ではない。中国の経済的進歩・発展を妨げ様ともしていない
  4. 我々の労働者・企業の為の公平な競争条件を求める。我々は、「不当な技術移転」や「データ開示」等の悪意のある慣行に対抗
  5. 引続き、「東シナ海」「南シナ海」における状況について深刻に懸念。力又は威圧による如何なる一方的な現状変更の試みにも強く反対
  6. 「台湾海峡」の平和と安定の重要性を再確認。両岸問題の平和的解決を促す
  7. 中国の人権状況について懸念を表明し続ける(「チベット」や「新疆ウイ グル」を含む)。中国へ、「香港」における権利・自由・高度な自治権を規定する「英中共同声明」及び「基本法」の下での自らのコミットメントを果たす様に求める
  8. 我々は中国へ、「ウィーン条約」に基づく義務に従って行動する様に求める、また、我々のコミュニティの安全と安心、民主的制度の健全性・経済的繁栄を損なう事を目的とした「干渉行為」を実施しない様に求める
  9. 我々は中国へ、ロシアが軍事的侵略を停止し、即時に、完全に、且つ無条件に軍隊をウクライナから撤退させる様に圧力を掛ける事を求める



(第五十二条)「南シナ海」における中国の拡張的な海洋権益に関する主張には法的根拠が無い。我々は、当該地域における中国の軍事化の活動に反対する。


我々は、平成二十八年の「仲裁裁判所」による仲裁判断が、仲裁手続の当事者を法的に拘束する重要なマイルストーンであり、当事者間の紛争を平和的に解決する為の有用な基礎である事を改めて表明する。


写真:総理大臣官邸、G7における食のおもてなし/外務省

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