石破茂が総裁選を前に考える政策

【政治考察】 平成三十年八月十日に自民・水月会の領袖である石破茂(丁酉)元防衛・地方再生大臣が、九月二十日前後に行われる総裁選に出馬する旨を発表した。先月には自身九作目となった『政策至上主義/新潮社』を出版。行うべき政策を二百十五頁に認めた。


会見も重要であるが、総理総裁を目指す以上、政策(方向性)はより重要である。元大臣は現況をどう捉え、何を変えたいのか。


 本著では「自立心旺盛で持続的な発展を続けられる国」という表現が数回出てくる。元大臣は現況に危機感があり、日本の全ての仕組みを大幅に見直す必要性を説いている。軸は地方の創造性・多様性。この地方突破論は以前より変わっていない。元大臣は国会議員の仕事を「国を導くビジョンを提示し、そのビジョンに従い、国政上の個別の課題解決のためのプラン、すなわち、現実的で実効性のある政策を練り上げ、実行していくこと」と定義。


最初は「集団的自衛権」。安倍晋三(甲午)総理大臣とは肝心な所で異なる。安倍内閣は『平和安全法制』により、集団的自衛権の行使範囲を限定。元大臣は日本は独立国なので、個別的・集団的自衛権は国としての自然権として当然に有しており、憲法で定める類いではない、との考え。『国際法』上の自衛権は立法上の政策的制約と。二十四年に発表した「日本国憲法改正草案/自民党」の九条二項「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。」を支持する。


以下にざっと纏める。


  1. 『日米地位協定』と『日米安全保障条約』。この二つと集団的自衛権の関係を説明。野心として、この二つの改正も垣間見える。日本国民にとって、その野心は真の独立国家と足り得る重要で根本的要素だ。
  2. 党内議論。議院内閣制への与党の意義をもって官邸主導を暗に批判。党内議論という民主主義プロセスを重視する。
  3. 防災省(仮称)。防災立国として、世界へノウハウとインフラを輸出したい。同時に平時である今の内に核の本質的な議論を求める。
  4. 局長答弁の復活。国会では大臣の出席義務が行政の生産性を落としている、と見做す。委員会質問の要旨は原則一日前に。
  5. 選択制の社会保障制度。日本の根本的な問題として捉える。五十年で国の予算が約六十倍に対して、社会保障費は約百六十四倍になっている点を指摘。
  6. 人材抜擢システム。党内の有能な人材の適材適所で配置。現状を政府も含めて旧態依然と厳しい。


官僚についても触れている。モリカケ問題における官僚の答弁を前提に「私の知る限り、官僚ほど書類を残し、記憶力のいい人たちもいないのですが、」と皮肉を交えた。但し、安倍総理の口利きは常識的に無かった、との見解だ。マスコミに対しては「商業ジャーナリズム」なので一定の限界を感じている。



地方・ミクロ経済の変革を

 元大臣の経済政策は伸び代がある地方の活性化だ。その裏付けとして、今の日本が経済学が予定していなかった人口減少と高齢者増加の要素がある。これは旧来のマクロ経済政策では日本経済が向上しない事を意味している。経済財政諮問会議や日銀等で有効打突は得れなくなってきているのも事実だ。元大臣は地方というミクロ経済からの変革で日本マクロ経済を変える「ボトムアップ型」を志向している。安倍内閣は「トップダウン型」だ。


地方で光り始めているのは国内では福岡が走っている。東京の好敵手は元大臣に同じのニューヨークや北京等の世界都市なので、名古屋と大阪が福岡に続かなければならない。この二都市が起爆する為にはリニアが欠かせないだろう。他方、札幌や仙台、新潟、沖縄等も東京化ではなく、独自化できれば、経済の地盤である中小・零細企業の利益増、個人の消費増が実現し、再び第四革命をもって経済成長期に入れるだろう。


安倍総理と石破元大臣は目標は同じであり、アプローチが異なる。


記事:金剛正臣、撮影:岡本早百合

0コメント

  • 1000 / 1000