中小・零細も不払い賃金は組織弱体へと向う、割増賃金は二千三百八十七万円/社

【ビジネス考察】 厚労省(大臣:加藤勝信)は、平成三十年八月十日に『監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成二十九年度)』を公表した。これは時間外労働等に対する割増賃金を支払っていない企業へ、『労働基準法』違反で是正指導した結果を取りまとめたもの。昨年度は過去最高となった。


昨年度に是正した企業数は千八百七十社に上った。対象は百万円/社以上の不払いで、前年度比だと五百二十一社も増えた。内、一千万円以上の割増賃金を支払ったのは、二百六十二社。こちらは前年度比で七十八社の増加。対象となった労働者数は二十万五千二百三十五人となり、十万七千二百五十七人も増えた。支払われた割増賃金の合計額は四百四十六億四千百九十五万円。三百十九億千八百六十八万円の増加。支払われた割増賃金の平均額は、一社当たり二千三百八十七万円、労働者一人当たり二十二万円となった。


昨年度に不払い賃金が増加した背景として、ヤマトHD(9064.T1)のサービス残業二百億円超(グループ全体)の発覚に併せて、働き方改革による企業の意識と共に厚労省の積極性がある。報道現在で大企業は率先して残業代の不払い対策を推し進めている。厚労省の是正勧告も然る事ながら、従業員がWeb上へ不払いの件を書き込み、企業信用を損ない、人材確保に支障を来たす点がある。これは中小・零細企業も同じで、一度ならず幾度も書き込みをされれば、Web上では過去に遡って検索表示される。危機感を強められたい。


厚労省は「賃金不払残業の解消のための取組事例」で四事例も公表。ネット上の求人情報等の監視情報を受けて、労基署が立入調査を実施した場合の解消取組みは以下の通り。


  1. 会社幹部が出席する会議において、自己申告制の適正な運用について、実際に労働時間を管理する者に説明を行うとともに、当該管理者を通じて全労働者に周知した。
  2. 自己申告とパソコンのログ記録のかい離を自動的に確認できる勤怠管理システムを新たに導入し、月2回、必要な補正を行うようにした。
  3. 労務管理についての課題と改善策を話し合う労使委員会を年2回開催することとした。

撮影:岡本早百合



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