石破茂「政治家は有権者を信頼してますか。」と|言論NPO設立十七周年記念フォーラム

【政治報道】 平成三十年十一月二十一日に東京・紀尾井町にて言論NPO(代表理事:工藤泰志)は、設立十七周年記念フォーラム・東京会議プレフォーラム『代表制民主主義は信頼を回復できるのか』を開催した。「日本、欧米、アジア-世論調査からみる民主主義への信頼」と題して石破茂(丁酉)元・防衛相、「パリ政治学院」のドミニック・レニエ(庚子)教授、フィナンシャル・タイムズのギデオン・ラックマン(癸卯)外交問題主筆と工藤代表(戊戌)が議論した。


冒頭に今秋に行った「日本の民主主義に関する世論・有識者調査」の結果を紹介。工藤代表は「代表制民主主義が信頼されていない。」と、政党・国会・報道機関への信頼が失墜している点を危惧。「これを本気で考えなきゃいけない時期。」と述べた。政府に関しては世論よりも有識者の方が信頼している。また司法・自衛隊は双方共に信頼度が高かった。


レニエ教授も昨年の自身の統計データを用い、欧州でも民主主義が失墜している点を強調。特に伝統的メディアが失墜している点を挙げ、「メディアに関しても危機的状況である。」と断言した。しかも投票自体に「意味が無い」とEUの三十六㌫が思っている(各国によって上下)。独裁政権を求めている嫌いさえある。

ラックマン主筆は社会の分断は更に進んでいると分析。「年寄りばかりにベネフィット(利益)、若者の票が重要です。」と若者の不満を代弁。



<自衛隊への過度な信頼と危険性>

 石破元防衛相は、「逆に政治家は有権者を信頼してますか。本当の事は、これだと分かっていても、どうせ国民には分からない。どうせ支持して貰えない。だから甘い事を言いましょう。という政治家は国民を信じないのであって。」と、信頼されない政治家がそもそも国民を信じてない点を突き、政治家の努力を説いた。


併せて主権者やメディアにも触れた。「有権者の側も自分が為政者なりせば、どうするのか。っていう事でないと主権者にはなりません。」と、主権者側が要請だけして選挙(政治)を真剣に考えない点を指摘。自衛隊、事実上の軍への信頼が厚い点も危険視。「立法・行政・司法による統制が為されていない。民主主義と実力組織(軍隊)との関係というのは、突き詰めて考えないと、もう一度同じ事が起こらないという保証は何処にも無い。」と述べた。


メディアに関しては癒着を忌避。大東亜戦争を挙げて「メディアは全部、大政翼賛会でした。反対するメディアなんかいなかった。」と癒着への警鐘を鳴らした。特に当時の日米の力の差、工業力や石油等の性格な情報を得ずに期待論で進んでしまった事を前提に「メディアに求められるものは、如何にして正確な情報を提供するか。そして政府の批判を恐れないか。」と話し、また有権者自身が一つだけの新聞を読む事を「凝り固まる。」と注意喚起した。更に商業ジャーナリズムの限界と打開案の模索を提唱した。


=考察=

 世界が右傾化している。米国第一主義や中国台頭、日本・EUの斜陽等、第二次大戦前の原因「ブロック経済」の保護主義を彷彿させる。そして各国は強いリーダシップという名の独裁者寄りの政治家を、どこかで求め始めている。危険な状況である。


独裁的な行政府に対してブレーキを掛ける事ができるのは、強い民主主義。強い国民の意志、国民の声を反映して政権批判ができる報道機関、そして行政府に屈しない立法府と司法。日本の主権者の半分は国の政治に対して無興味となってしまっている。


ただ餓鬼の様に政治へ求めるだけでは、簡単に利用されてしまう。利益主義に走れば、それは保身と連動し、報道機関も上場企業も国会議員も裁判官も朽ち果てる。未来の平和を創るのは、今の国民である。その国民が近視眼では、望んでない未来が訪れる。今の主権者の判断における責任は、子や孫が負う。やるべきは議論や対話、そして最悪へと導かない行動だ。現状の国民の意識・知識では、何れ最悪に向ってしまうだろう。


撮影記事:金剛正臣

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