各ジャンルの記者の品質は落ちているのか、ハイムの考察

【コラム】 見出しには考察とあるが、あくまでもコラム程度の見解として本稿を綴る。


ハイムは前身の媒体も含めて十年ちかく各ジャンル(業界)を取材してきた。ビジネス、社会、芸能、ファッション、政治など。ハイムの特徴は、記者の業界割り振りを決めずに縦横無尽に駆け巡る点だ。その観点で各社の記者を診る。


各社は通常、同じようなジャンルには同じ記者の顔が並ぶ。最近はデジタル化の波もあり、若いゆとり世代の記者たちも増えてきた。まず全体として言えることは、各記者が「記者の品質の高低」を知っているようにみえない点だ。現場にいて「的を射てるな」「その切り口は斬新だ」と唸る質問をする記者は本当に少ない。


およそ他の記者に対する考察記事にもあるように、無難で同じような、決まりきった質問をする。


理由は単純明快だ。質問する記者を現場で見守る同社の先輩記者の存在が無い。だいたい、デスクと呼ばれる編集部が予め質問を決め、現場の記者にオーダーする。これでは現場で柔軟性を欠き、硬直的な記者になっても仕方がない。今では正社員ではなく、契約社員も増えたので、柔軟性が下がる。


現場で取材対象の者が何を答えるかは不明瞭だ。臨機応変に質問を変える必要性があるが、このリスクをデスクは負わない。同じように現場の記者・リポータも負わない。保身である。


先輩記者がいない理由は、昨今の間違った業務効率化である。人材育成を度外視して、人材配置している為に未熟な記者が、そのまま現場に出ている。特にバブル世代とゆとり世代の記者は、取材対象及び他社への態度が悪い者を多く散見する。前者は激務により荒んでいる観が否めない。後者は単に現場での礼儀を教えてもらっていない。


根本にあるのは、ニュースの無料化による予算不足である。確かにTVは無料だが、ニュース番組自体にスポンサがついており、契約金額が非常に高い。公共の電波を使用できる特権で高額請求ができる(主にキー局)。だが、TV以外の媒体はラジオといえども厳しい現況だ。


インターネットの普及前には、媒体各社は有料で記事を作っていた。日刊なのか、週刊なのか、月間なのか、など。ネットが普及し、アグリケーションのことをキュレーションと偽るニュースアプリの登場で状況は悪化した。各社はサイトを有しているものの、広告収入はデジタル化の波で一円単位まで落ちた。となれば、月に百万UUから一千万UUないと、どう頑張っても媒体として利益が出始めない。


媒体各社の編集部及び記者たちはブロガではない。だが同じ画面でブロガと同格として昨今は比較される。費用対効果で考えれば、組織の媒体各社と一人から数人のブロガでは生産性が異なり、後者が高いのが現状だ。


ここまででも分かる通り、至って当たり前のことであるが、高品質のものをつくろうと思えば、それなりの費用がかかる。だが「レモン市場/経済学」の原理で不良品ばかりが出回る。これが記者の品質が落ちたのではないだろうか、の問いの答えだ。そして「高品質な記者」を定義してない点も大きな問題でもある。


ニュースを発信する側が有料でも読んでもらえるような媒体構成・品質を追い、ニュースを受信する側は本と同じように高品質なものには出費がともなう点を理解するだけだろう。時代は、そちらに向っている。サブスクリプション型がまさに、それである。


最後に一つ、断言できる。記者がそれなりに育つには五年から十年はかかる。よって誰かが生産性の低い育成費用を負担する。


記事:金剛正臣

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