【ビジネス ニュース】 平成二十八年四月十八日に経産省所管の独法、経済産業研究所(RIETI、所長:藤田昌久)の上席研究員である岩本晃一が記事『第10回「IT投資で世界の潮流に遅れ、グローバル化で遅れた日本企業;国際競争力低下の大きな要因」(画像引用)』を配信した。一昨年に国際IT財団(IFIT、経済産業省所管)が行った調査「日米の民間企業に、ITに対する意識調査」の結果より、日本のIT投資は守り(合理化・コスト削減)に重きを置いた為に業績に反映されず、一部に理解ある日本企業のそれは攻め(ROE拡大・海外進出・新規事業等)とした為に売上増の手段となった。
本調査の対象は、従業員数が三百人以上の日米グローバル企業を六百十五社。回答者は、経営者及びIT部門以外のマネージャ職以上。日本企業のIT投資の主目的が、十年前の調査結果と変わらなかった。時代と共に変わってない点を冒頭に記した。
<経営トップの無理解とIT戦略の欠如>
同財団が「人材不足」説を否定した点は大きい。日本においてIT投資が企業業績に反映しない理由として、一般的に「人材不足」が挙げられてきた。然し、同財団は真の理由を二つと特定し断じた。それは『経営トップの無理解』と『IT戦略の欠如』。
日本の経営者はIT投資の重要性を認識せず、米国は異なる。その根拠の一つに知識を例示している。「クラウド」「ビックデータ」等は、日本の経営者の半数近くが聞いた事がないとの結果に。また米国の好景気「ニューエコノミ」についても触れ、IT投資による生産性の向上が図られた点をグラフ化。一方の日本では、この様な景気が発生しなかった。その一因を守りのIT投資であったと記す。
IT投資を積極的に行うことが労働生産性向上には不可欠である/労働白書二〇一五
=解説=
日本の経営者の平均年齢は、六十一歳(東京商工会議所の企業データベース 二〇一五年十一月時点)。技術進歩による経営環境の変化は、二次関数だ。大多数の彼等が起業し経営を成功させた時代は、一次関数であった。この曲線の傾きの変化に対応する為には、学びが欠かせない。ITを取り巻く知識は十年前、ガラケーが最盛期であった。その時、最も売れた端末は、ウィルコムの京セラ製端末「WX300K」だった。現代の学びには、“聞く耳”が欠かせない。それを当該記事は強く発し、「IOT/インダストリ四.〇」を引き合いに警鐘を鳴らす。
IT投資は、売上増の為に米国は使う。日本は費用減の為に使う。費用減に拘れば、利益率は改善しても本質的な企業の成長に繋がらない。当該記事の冒頭では、その守りが従業員のモチベーションを下げている事を指摘している。翻って、IT投資に理解ある企業の従業員はモチベーションが高く、売上増に繋がる。これは単純に人間の心理だ。費用を抑える為に日々労働するのか、費用を抑えながらも収益を向上させる為に日々労働するのか。当該記事を取締役はよく読み、攻めに転じるべきであろう。
『経営トップの無理解』と『IT戦略の欠如』が経営リスクである。
(了)
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