【教育考察】 令和二年三月二十六日に文科省(大臣:萩生田光一)は、『知識集約型の価値創造に向けた科学技術イノベーション政策の展開』の最終取りまとめを公表。副題は「Society5.0(S5)の実現で世界をリードする国へ」。
この展開では、大学・国立 研究開発法人が知識集約型の価値創造システムの中核として機能し、S5への変革の原動力にしたい。大学等を同省がイノベーションの中核にしたい、という事だ。全六十五頁の内、着眼すべき点は「イノベーションの担い手の育成」と「挑戦する行政へ」とみる。今回は前者。
第四章にイノベーションの担い手の育成を据えた。副題は「多様な『知』を育み、出る杭を伸ばす社会へ」。今までの日本の風習であった“出る杭は打たれる”という社会で失ってきた若手の可能性を安倍政権は引き出したい。令和時代の新しいフェーズに入る。
大規模資本を持たないスタートアップや個人であっても新たな価値創造やイノベーションの創出が可能な社会となっている。こうした社会においては、「出る杭」が打たれるのではなく、個人の個性が強みに変換され、多様な価値が許容される仕組みが重要であり、「出る杭」が次々と育ち、成長していく仕組みが求められている
具体的な取組みは、以下の三点。
- 個性を伸ばす若者の挑戦促進;起業家教育 大学を中核としたスタートアップ生態系(エコシステム)の形成等、起業家育成に関する取組みの強化・ネットワーク化に取組む。我が国全体としての起業家精神(アントレプレナ シップ)醸成と生態系 基盤構築の加速を進める必要性も。また、先進的な高校等において、非・学習指導要領のカリキュラムを通じ、探究心・創造性・幅広い知的関心等を育む人材育成の強化を求める。
- 社会の変化に即応できる文理の区分を超えた教育の推進;文理区分を超える。データ サイエンスの基礎となる確率統計・プログラミング・自然科学・社会科学の基礎的分野に関する知識の習得やSTEAM教育(Science・Technology・Engineering・Arts=リベラルアーツ・Mathematics)等を社会全体で推進する。また、医学・哲学・工学と経済学等の異なる体系の学問の複数習得や数理・データサイエンス・AI教育の全学部学生への展開を推進する必要性も。更に、大学の「学部・研究科等の組織の枠を越えた学位プログラム」の導入促進を通じ、他分野とAIの組合せ等の分野横断的な教育を推進する事を求める。
- 多様な経験や専門性を持ちながら活躍できるキャリアシステムの構築;兼業・転職・リカレント教育等のキャリアパスの選択を可能とする雇用制度・環境の整備が求められる。
出る杭を伸ばす社会。日本社会は出る杭を失ってきた為に、平成時代の三十年間で名目GDPが横ばいだった。
安倍政権は、若手の出る杭を伸ばしていきたい。そういった意思表示を感じる取りまとめ書だ。出る杭に大学等で起業家精神を育み、出る杭を集めてスタートアップの生態系を今から創っていく。遅いかも知れないが、やる事が大切だろう。
特に若者は何を学んだら良いかを明示した点は大きい。高校では以下の三点を育みたい。
- 探究心
- 創造性
- 幅広い知的関心
大学では以下の十科目を挙げた。
- データサイエンス
- AI
- 確率統計
- プログラミング
- 自然科学
- 社会科学
- STEAM教育(科学・技術・工学・リベラルアーツ・数学)
- 医学
- 哲学
- 工学
※リベラルアーツ;文法学・修辞学・論理学、算術・幾何・天文学・音楽。
これは学部学科の単位になるので、全てを修得する事が目的ではない。飽くまでも、何を学んだら良いかの目安だ。社会人はリカレント教育で再び大学に在籍する際にも目安となるだろう。社会人ならば併せて、経済学・経営学・情報学をハイムは追記したい。
これらの修得を以て、兼業・転職の人生キャリアを高めていく。
0コメント