コロナ禍で変わるアパレル業界、目先で変える事と方向性|フルカイテン

【ファッション報道】 令和二年七月二十九日にオンラインにてフルカイテン(代取:瀬川直寛)は、欧州最大のコンサル会社である独ローランド・ベルガーの日本法人パートナ・福田稔とセミナを開催した。福田の近著に「二〇三〇年アパレルの未来:日本企業が半分になる日/東洋経済新報社」がある。


この特別対談で両者がまとめたビジネス モデルの変革に向けた提言は以下の三つ。

  1. 独自性、ブランド価値の磨き込みによる価格競争からの脱却
  2. バリューチェーン全体でのDX推進
  3. 今すぐにできることは何か;売り方の改善・コスト構造の改善・リソースの分配の改善


福田は消費財や小売、ファッション等のライフ スタイル領域を中心に成長戦略やデジタル戦略、グローバル戦略、ビジョン策定等の様々なコンサルを手掛ける。同社の瀬川代取は、ベビー服のEC事業を経営していた平成二十四年から三十年に在庫問題が原因で三度も倒産危機に直面。危機を乗越える過程で、利益増加と在庫削減の両立を可能にするツール「FULL KAITEN」を開発した。



<アパレルは二極化、求められる真のブランド創り>

 セミナで福田は、アパレル業界のメガトレンドとして「消費のあり方の多様化」「サステイナビリティ多様の必要性」「デジタル化によるディスラプション(想像的破壊)拡大」の三つがあり、これらによって同業界は大きな変化の時代に突入すると説明。


コロナ危機を経た令和時代では、“自己表現・自己実現の為”という消費のあり方が比重を増していくと指摘し、加えて、消費行動のデジタル化への対応が益々重要になると説いた。海外では収集したデータの活用やバリューチェーン全体におけるデジタル化によって新たなビジネス モデルが構築されている事例も紹介した。


以上より、アパレルの市場構造は従来から大きな比重を占めていたトレンド市場が縮小し、高級ブランド等のラグジュアリ市場とグローバルSPA(製造小売)を中心としたマスボリューム市場との二極化が進むと予測した。


瀬川代取は「日本のブランドは“消費の意味”を如何にしてブランド価値に繋げていけば良いのか。」と問い、福田は「海外ではブランドを作った人の価値観が最初にある。これに対し、日本のブランドは“百貨店の売り場向けのブランドを作ろう”といったチャネル起点で企画が作られるケースが多い。」と指摘。「ブランドの作り方を抜本的に見直し、世界観を持つ人材を育てたり、引き抜いてきたりすべきで、その上でデジタル活用が大変重要になってくる。」と答えた。



今すぐにできること

 一つ目に福田は「在庫回転の改善」を挙げた。「これまでは多くの大手アパレルはPL(損益計算書)偏重で、在庫回転数(回転率)等のBS視点でのKPIが重視されてこなかった。アパレルはリードタイムが長いので、在庫回転というものをもっと注視しないといけない。」と業界関係者へBS視点の重要性を強調しました。その上で「商品毎の在庫回転率を視ながら、全体のマーチャン ダイジング(商品政策)を考える必要がある。」と主張した。


瀬川代取も「BSをあまり視てこなかった。そこにメスを入れて“在庫の質”を可視化していけば、値引きも必要なくなるし、在庫を減らす事にも繋がる。」と続けた。



二つ目に「コスト構造の改善」として固定費削減に触れた。実店舗を適正な規模に減らしてEC比率を上げていくと共に、オフィス賃料等の固定費になっている経費を下げて変動費に変えていく重要性を説いた。



三つ目に「リソース分配の改善」を挙げた。瀬川代取は「販売員の人件費を変動費化(非・正規化)するのは反対。ブランドの意味を顧客に伝えていく時が一番の顧客接点なので、販売員には給与で報いないといけない。」と指摘すると、福田氏は「販売員の人件費は、固定費プラス変動費部分とするのが良いと考えている。アパレルは販売員が価値を作っている割合が大きい。そこを正しく評価し、 変動費的な報酬にする事で業界全体の魅力を高めていければ。」と話した。


加えて、福田は「店舗の大量閉鎖によって大量の販売員が余っていく。販売員がライブコマース(ライブ配信型Eコマース)等に対応できる様、教育に向けた投資をどんどんしていくべきだ。」と述べた。


画像:フルカイテン㈱

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