『少子化社会対策白書』で知る、優れた施策と難儀な施策

【社会・人生ニュース】 平成二十八年六月十六日に内閣府(総理:安倍晋三)は、『平成二十八年版 少子化社会対策白書(少子化の状況及び少子化に対処するために講じた施策の概況に関する報告書)(画像引用)』の概要版と全体版を公表した。発行後は、全国の主要書店や政府刊行物センタ等で購入できる。


重点課題は、五つ設定した。特に一で紙幅を割いた。

  1. 子育て支援の一層充実
  2. 結婚・出産の希望が実現できる環境整備
  3. 三人以上の子どもがもてる環境整備
  4. 男女の働き方改革の進行
  5. 地域の実情に即した取組強化





<保育所のICT化も>

 一では、昨年に施行された新制度「子ども・子育て支援法等に基づく子ども・子育て支援新制」を強化する為に今国会(一九〇)で、施設等の設置者へ助成・援助事業の創設をし、一般事業主から徴収する“拠出金”の上限率引上げ等の法改正を行った(改正『子ども・子育て支援法』)。

「待機児童 解消加速化プラン」は、予算増強や業主導型保育事業の推進等で来年度までに五十万人の保育受け皿の拡大を狙う。都市部の待機児童割合が全体の七割で一千七百人。全体は二万三千人(二十七年四月現在)。また保育所等のICT化も推進する。

更に「小一の壁」の対策として、昨年に文科省・厚労省が策定した「放課後子ども総合プラン」が進行中だ。課後児童クラブの整備費の補助引上げや補助対象の拡大、経費補助等を行った。三十一年度末までに放課後児童クラブを三十万人分、新整備する予定。




子どもから非正規対策、シニアは非課税制度

 二では、経済基盤の安定と対結婚の取組み支援を挙げた。前者では、「キャリア教育推進連携シンポジウム」の開催等で、学校段階から職場定着を図る施策が進行中。非正規に対し、本年一月に「正社員転換・待遇改善実現プラン/厚労省」を策定し、キャリアップ助成金の活用促進等に取組む。

また高齢世代から若者世代への経済的促進として、二本の贈与税の非課税制度が進行中。「結婚・子育て資金」と「対孫への教育資金」の一括贈与だ。更に低所得の新婚世帯に対し、補助金「結婚新生活支援 事業費」で住居費・引越費用を支援している(各自治体)。

後者では、昨年開催の「結婚支援に関する全国連携会議」で各自治体の担当者等が現状とデータを情報共有した。また交付金「地域 少子化対策強化」で先駆的な取組みを行う自治体を支援した。





<家庭・女性を支援するものの、>

 三では、児童手当として第一・二子に月一万円、第三子以降には月一.五万円を支給している(但し、小学校卒業まで)。保育料は、一定範囲で第二子を半額負担、第三子以降は無償としている。本年度からは①ひとり親世帯は、第一子が半額、第二子以降は無償、②非ひとり親世帯は、第二子が半額、第三子以降は無償となる様に制度の拡大を行っている。また、児童扶養手当の多子加算で第二子を月五千円、第三子を月三千円を引き上げる改正『児童扶養手当法』が今国会で成立した。


四では、長時間労働の是正に取組み、経営者の意識改革に取り組んでいる。育児休暇の取得を促進する為に、対事業主で本年度から助成金「出生時 両立支援」を創設する。特に女性に対しては、ワーク・ライフ・バランスの取組みを挙げた。今国会で改正『雇用保険法』が成立し、来年度に施行される。対事業主に対し非正規への緩和として、要件「一歳超の雇用見込み」の撤廃と要件「契約更新禁止規定」が二歳から一歳半までに変更された。

女性活用に関しては、自社の女性活用把握の為の「一般事業主 行動計画 策定支援ツール」提供や「女性の活躍推進企業データベース」で公表。政府は「ダブルケア」状態の者を二十五万人と推計(男性;八.五万人、女性;十六.八万人)。「ダブルケア」とは、一人で育児と介護の負担を同時に担う事だ。また交付金「地域女性 活躍推進」や「地域における女性活躍推進モデル事業」で地域女性の活躍推進を図っている。




京都のアプリは重要成果

 五では、対自治体で本年度も交付金「地域少子化対策 重点推進」を措置、交付金「地域住民生活等緊急支援(地方創生先行型」でも支援している。また各自治体と「子育て支援パスポート事業」の強化を図り、子育て家族の外出に役立つ情報として、京都・NPO・企業によるアプリ(画像引用)等の成果を出している。

「地方創生」に関しては、対自治体で交付金「地方創生推進」支援を続ける。


=解説=

 『少子化社会対策白書』は、褒められる点も多いものの、難儀な点もある。優れた施策に関しては、周知の為のプロモーションが欠かせない。優秀な官僚らが例え施策を講じても、マーケティング等でターゲットとする国民に届かなければ、最大の成果が望めない。新施策をどんどん構ずるだけでなく、旧施策のプロモーションに労力と予算を掛けるべきであろう。


一方、子育て家庭は困窮している。児童手当て等は、現代の主婦からみれば雀の涙程度の金額でしかなく、手厚いサポートが必要だ。単位を一ケタ上げると、大いに成果が上がるだろう。何故ならば、企業の就業、つまり正規か非正規かは企業が決める。政府ではない。企業は、一時、母を正規として積極的に雇う意識ではない。それよりも母が非正規でも困窮しないバックアップを政府と各自治体は行うべきであろう。ひいては、税収増に繋がる。

少子化社会の対策は、まず政府・官僚の意識が先に変わり、政府の会議に出席するヒマもない母らの意見を聞きに行くことが必要ではないだろうか。

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