仁・義・礼・智・信(五常)を失った四十代と五十代

【ビジネス考察】 Web「R25/リクルート」が、記事「要らないと思う飲み会マナー1位は」を配信した。宴会に関するアンケートをまとめたもので、四十代から五十代の社会人男性二百人をデータ基とした。上位の三位を視る。


1位 目上の人に瓶ビールを注ぐときは、ラベルを上にする 185pt

2位 焼き鳥を串から外して、食べやすいようにする 151pt

3位 上座・下座を気にする 126pt


残念ながら、『五常の徳(仁・義・礼・智・信)』を知らないと云わざるを得ない。二十代と三十代からみて、人生の諸先輩方として情けない限りだ。六十代はあやしいものであるが、七十代や八十代は『五常の徳(仁・義・礼・智・信)』ぐらいは知っている。人としての基礎だ。



<宴はビジネスの場である>

 宴会・パーティ・接待・おもてなし。様々な呼び名がある。総じて“宴”というものはビジネスの場だ。宴会に関する著述書は少ないが、実戦的や歴史的にまとめている本もある。その人が酒を好もうが嫌おうが、権力者が“宴”を開けば寄る。日本国も、蘇我入鹿や斉明天皇の時代から“宴”はある。ビジネスの場である“宴”には、国毎にマナーが異なる。日本人にとって関係性からみて、大きく分け東アジアと欧米だ。経済大国 第二位の中国と第三位の日本は、東アジアなので東アジアの根底にあるマナー(精神)が重要だ。それが『五常の徳(仁・義・礼・智・信)』である。


日本のビジネスの背骨ともいえる、四十代と五十代が『五常の徳(仁・義・礼・智・信)』を知らなければ、アジアでのビジネス取引で嘲笑されても仕方ない。アジア諸国で違いが見受けられるものの、根底は同じ儒教圏。『五常の徳(仁・義・礼・智・信)』は、孔子を始祖とする儒教。中国が経済発展する際に、日本が明治維新後で成功する際に基となっている。

<我々は米国人ではない>

 当該記事は、日本的な『五常の徳(仁・義・礼・智・信)』、それは“雅(みやび)なるもの”に変えた“宴”のマナーに対し否定的だ。


ラベルを上にしても味は変わらないだろう。しかし、ラベルはその商品・サービスの顔であるので、その商品・サービスに対する、ひいては生産者に対する敬いであり、接待相手への配慮でもある。事実、高級レストランでワインのラベルを下に向けるソムリエはいない。

焼き鳥は、一本持ちでは独占をしてしまうコトを主張する。串をそのまま食べるコトも品性に劣る。シェアをしようがしまいが、シェアの意志を示す。喰らうではなく、食すを選ぶ。だから串から外す。

上座・下座は礼の典型だ。社会は上下がある。お姉ちゃん、弟。先輩、後輩。先生、生徒。最近は米国的にフランクをあやかる機会が多いが、我々は米国人ではない。日本の歴史はフラットであった試しがない。一部のフラットを採用するコトは、明治維新の和洋折衷的であるが、フラット全採用では、まるでソ連や少し昔の中華人民共和国の共産主義だ。


<マナーや品性は個性>

 日本は帝を戴く国で、現在も即位なさっている。皇暦二六七五年の歴史の蓄積が、日本人足る根拠だ。我々は中国人でもないし米国人でもない。日本人と主張したいのであれば、日本の歴史や文化とは、何かを知っておく。『五常の徳(仁・義・礼・智・信)』は中国のものであるが、日本は雅をもって日本的にした。日本人の得意技であろう。それを否定するかの様な、当該記事のコメントだ。宴のマナーひとつも、グローバル社会では国の個性だ。


自分が自分らしくある為には、ナニ人であるかが重要だ。さもなくば、自分が誰であるか分からなくなる。日本人は世界からみて、相手の気持ちをくむ気配りができ、和を乱さなズ様に自己主張を抑え、変わった商品・サービスを開発する為に勉強をする。これが全てではないが、何をもって日本人と云おうか。国籍だけなのか。



<アーカイヴ 二千六百年分>

 文科省(大臣:下村博文)は、教科となる「道徳」の学習指導要領解説を公表した。そこでは、国の定義がなされている。


「政府や内閣などの統治機構を意味するものではなく、歴史的・文化的な共同体」


国とは、その地に生きた人々が、彼らなりに良し悪しとしたものの蓄積である。日本国は、それが二千六百年分。世界最長の蓄積を有す。折角、日本人で生まれたのに、世界随一のアーカイヴを活かさないで良いものか。若い内は、自身の考えが一番で問題ない。ことわざ「井の中の蛙大海を知らず」に気づいた時に成長する。日本中堅の四十代・五十代が『五常の徳(仁・義・礼・智・信)』を軽視しては困る。この国を、命を賭して支えてきた先人達に申し訳が立たない。

資本主義の世ではあるが、金に翻弄されては「カネの製造器」の人生ではないか。金がなくて困れば、「カネの奴隷」ではないか。人生をそんなツマラナイものにしない為の英知の一つが、『五常の徳(仁・義・礼・智・信)』である。他の国とは異なる、日本的なビジネスがある。


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