天皇陛下、早期の生前退位を望まず。問題をまとめると

【社会ニュース】 天皇陛下が退位の意志を示されたと報道各社が報じ、皇室と宮内庁が揺れた。平成二十八年七月十八日に毎日新聞社(代取:朝比奈豊)は記事「生前退位/下 親子で毎月会合、信頼感 思い実現、制度面の課題多く(画像引用)」を配信し、陛下の信頼感のご表明が陛下、皇太子殿下、秋篠宮親王殿下と宮内庁長官の風岡典之の四者の会合の延長線上にあると伝えた。皇太子殿下や秋篠宮親王殿下のお言葉を挙げ、生前退位が皇室内でも俎上に上がっていた点を示した。


だが十五日には、陛下が早期退位のご希望をもたれてない旨も伝えられた。報道現在で、生前退位で予想される大きな問題は以下の通り。


  1. 陛下の意向を受けない皇室典範の改正
  2. 象徴天皇制と生前退位の整合性
  3. 生前退位の要件
  4. 退位後の身分や称号
  5. 皇太子不在による皇太弟
  6. 摂政制度と臨時代行制度
  7. 女性・女系天皇と女性宮家
  8. 国会審議における党派間の争い回避



世界に立憲君主制を敷いている国々は、二十六ヶ国(アジア;十、オセアニア;二、欧州;十一、アフリカ;三)。大抵は生前退位に関する規定が各国に設けられ、事実上で可能だ。しかし日本と英国(英連邦王国)には規定がない。日本は憲法や皇室典範内に退位の規定がなく、英国は慣習法(不文法)の文化である為に陛下と同じ様な問題が九十歳のエリザベス女王に起きている。皇室典範自体も、大日本帝国憲法期に初めて皇室に関して成文化されたものだ。


皇室は陛下を含めて二十人。内、皇位継承が可能な男子は五人。そして現代では君主の在位中には元号を変えない「一世一元の制」だ。グローバル化等により、八十二歳の陛下のご公務は昭和天皇と比較し二倍近くに増えた。公務の分担もあまり進みが良くない。陛下は、現状のご公務のペースを維持される模様。


=解説=

 基本的事項であるが、皇室が続く事は日本という国家が続く事を意味する。初代・神武天皇の一つの皇統であるので、皇室は一つの王朝と見做せる。皇室(王朝)が万一、途絶える様な事が起きてしまえば、日本はその時点で消滅してしまうのだ。それは日本人が日本人ではなくなる事を意味する。至極、日本人にとって最重要な問題であろう。所謂、『皇位継承問題』である。


象徴天皇制である現在では、皇室は自らのご意思で現行システムを変える事ができない。憲法上、主権者は国民であるので、その代表の集合である最高意思決定機関「国会(立法府)」においてのみ、現行システムを変える事ができる。内閣(行政府)や宮内庁ではできない。実務上では皇族二人、三権の長、宮内庁長官、裁判官一人の計十人で組織された「皇室会議」にて骨子が調った後に、他の法律と同じ様に審議・可決・成立となる。



宮内庁長官の強い発言力

 だが国民主権といえども、陛下のご意向無くしては、三権及び宮内庁の長らは皇室に関する「皇室典範」について動けない。象徴制であっても、帝は帝だからだ。旧皇室典範(大日本帝国憲法期)は、宮務法と呼ばれた。宮務法とは、憲法を超えるもので、国会が旧皇室典範に手を加える事が許されない法である。新皇室典範は、日本国憲法より下位となった。


そして宮内庁は一貫して、生前退位を否定し続けている。現憲法下では、宮内庁は一省庁(内閣府の下位)であるが、前憲法下では宮内省として宮内大臣(宮相)を置き、更に外局に内大臣(内府)を置き、事実上、宮内省は内閣(行政府)と国会(立法府)の上位であった(宮相と内府は国務大臣ではない)。また旧皇室典範に関しては、天皇の最高諮問機関「枢密院(枢府)」の諮詢事項であった。この様に非常に複雑な構図(各府の心理)が現在でも相俟っている。

陛下が早期退位を見送られた事により、生前退位が喫緊の課題ではなくなった。だが、近い未来に国民は備える必要があるだろう。

(了)

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