日本学術会議・任命拒否について四教授への法的反論

【政治考察】 菅義偉(戊子)内閣総理大臣は、令和二年十月二十八日に『衆院』本会議にて日本学術会議会員の任命拒否に関し、『日本学術会議法』への違法性はないとの認識を示した。二十三日に任命拒否された教授等が海外向けに記者会見を開き、同法に違法しており、違憲でもあると断じていた。教授は違法・違憲と断じる事は法的にできない。

唯一、司法府のみが断じる事ができる。


本稿では、教授達が違憲・違法とする部分を法的に視ていきたい。


憲法学・「慈恵大」小沢隆一(己亥)教授は、憲法の第二十三条「学問の自由」を挙げたが、総理による会員の任命拒否は学問の自由への侵害・制限とはならないだろう。この自由は、研究・講義等の学問的活動において国からの介入・干渉を受けないというもの。会員でないと学問できない訳ではないので、小沢教授の主張は苦しい。同教授は憲法の教授。


行政法学・「早大」岡田正則(丁酉)教授も同条に対し、違憲と断じた。任命拒否は、日本の「学問の自由」における制度的枠組みの破壊行為との事。同会議が推薦し、任命を総理が拒否する事は破壊行為と。「学問の自由」における制度的枠組みへの破壊と主張。これは非常に曖昧だ。国民の多くが、何を破壊するのかを理解できないのではないだろうか。具体が無い。司法において違憲と主張する為には、具体が欠かせない。依って、違憲性があるものとは考え難い。


同教授は、同会議法の七条・十七条を挙げ、会員の選定罷免権につき、「国民が『学術会議法』を通じて学術会議という組織であって総理大臣ではない。」との主張がある。十七条には「選考」「推薦」との文言があるが、罷免権については規定が無い。逆に七条では総理が「任命」すると明記されている。通常であれば、任命権と罷免権は同時に有するものなので、同教授の主張は誤っているのではないか。


一条では、同会議が総理の所轄としている。同会議を総理が管理する事は間違っていないだろう。二条では「我が国の科学者の内外に対する代表機関として」と同会議を定義しており、あくまでも科学者の代表機関。主権者・全ての国民が同会議へ委ねている訳ではない。一方、総理が国民の代表との根拠は、憲法の第六十六条(総理の資格)と第四十三条(国会議員の地位)。


同教授が主張する三点目は、正しいものと思われる。但し、即時違法かと言われれば、頭を悩ます所だ。七条二項「手続き上で違法。」と総理が同会議が提出した名簿を未確認だった。推薦に基づいてないので、任命拒否は違法と言いたい。実際には百五名の内、六名のみを総理は拒否している。割合いにして六㌫。九十四㌫は推薦に基づいている事になる。合法性が九十四㌫、違法性が六㌫。違法と言えるだろうか。

同教授は行政法の教授。


刑法学・「京大」高山佳奈子(戊申)教授も七条と十七条。併せて二十六条「同会議の申出に基づく総理の会員退職権」を挙げた。「内閣総理大臣には、日本学術会会員を自分で選ぶ権限がありません。」と違法と断言したが、二十六条では条件付きだが、総理が会員を退職させる事ができる。これは実質的な罷免権ではないのだろうか。確かに個別会員を選ぶ権限はないが、任命権と、この実質的罷免権を以て推薦した者の中から選ぶ権限はあるのではないだろうか。


逆に同教授の主張等が正しいなら、推薦ではなく「強制・強要」である。こちらの方が民主主義として問題だ。刑法には強制性交等罪(百七十七条)や強要罪(二百二十三条)があり、強制・強要は法治国家としてアウトである。同教授は刑法の教授。


刑法学・「立命大」松宮孝明(戊戌)教授は、同・十七条三項「会員任期、半数改任」を挙げた。総理は半数の百五人を任命しなければ、違法との論。これは正しいだろう。「内閣総理大臣は国民を代表しているから、どの様な公務員であっても自由に選び、或いは選ばないとする事ができる。その根拠は憲法十五条なのだ、と宣言した。」と同教授は述べたが、そもそも内閣は“どの様な公務員でも”等とは言ってない。

同教授は刑法の教授。



以上の考察より、先の記者会見での教授達の主張は、法学の教授として値するのか。甚だ怪しい法理論である。今回に会見へ出席した教授達が全て推薦されていた訳ではないが、「科学者の代表機関」としての同会議の会員には相応しいとは思えない。詰まり、先の記者会見によって任命拒否は妥当であったものと推察できる。


尚、任命拒否の説明につき、同法の六条に「政府は、日本学術会議の求に応じて、資料の提出、意見の開陳又は説明をすることができる。」とある。あくまでも、内閣が説明するか否かは法的に自由なのだ。


記事:羽田野正法

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