TV界の次は映画界で破った庵野秀明、映画はシン・映画の時代へ

【社会・芸能考察】 映画「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生(一九九七)/東映」や映画「風の谷のナウシカ(一九八四)/東映」の巨神兵等を手掛けた監督・庵野秀明が放った映画『シン・ゴジラ(二〇一六)/東宝』が好調だ。累計三十作目。公開二週目にして二十億円を突破した。十三作目となる映画『ONE PIECE FILM GOLD(二〇一六)/東映』は三週目で三十億円を突破。初公開はドイツであった同作。尾田栄一郎の世界観が躍進を続けている。


近年、長らく低迷していた日本の映画界に光明が見え始めている。日本映画が本来、得意とする“喰い込んだ社会性”が戻り始めている。否、進化を遂げ別次元に向い始めている。


映画はTVとは全く異なるもの。しかしバブル崩壊後から、その線引きは曖昧になりTV化した映画作品が跋扈していた。ある一定の興行成績を作るも、世界的にみた映画品質は劣化していた。しかし優れた映画人の勇志により変わりつつある。エヴァでTVのアニメが変わった様に、今回も『シン・ゴジラ』で実写映画は変わるだろう。破ったのは、庵野秀明。




<映画は報道性の強いメディアだ>

 脚本家は取材を重視する記者であり、編集は刺激的なレイアウトを担当する校正(デスク)で、監督は作品を司る編集長で、製作がそのものの英断を下す発行人という例え。


元々、映画は活動写真と呼ばれ、TVが家庭にない時代に映画館でニュースを流し、社会(時事)を伝えていた。そう、以前はニュースを観に行く場所が映画館だった。その流れは、第二次大戦下の大日本本営のニュースまで続いた。戦中も存在したが特に戦後、エンタメ性の強い映画作品が上映され始める。代表作に敗戦後から五年経った昭和二十五年の映画「羅生門(一九五〇)/大映」がある。監督は、黒澤明。映画史において最重要クラスの監督だ。



社会性高いゴジラに戻る

 同作を機に日本映画は上昇し始める。そして、昭和二十九年に大作の映画「ゴジラ(一九五四)/東宝」で大きく浮上する。当時は、米国が二十三回行った「ビキニ環礁の核実験」が社会問題となっていた。これを同作は題材に核問題を訴えた。監督は、本多猪四郎とウルトラマンの円谷英二。映画の片輪・音楽は伊福部昭。『シン・ゴジラ』でも多分に彼の音楽が使用されている。以後、第一期の昭和ゴジラ系は公害等の社会問題や笑いの要素を織り込む。


第二期は、平成ゴジラ系。ゴジラが大型化し自衛隊も高度化した。一時は沈むも、スタジオジブリと張れる興行収入を叩き出せる系となった。第二後期はファミリー向けのSF要素が強い。音楽の伊福部は第二期末まで担当した。しかし第三期のミレニアム系は振るわなかった。そして十二年後に第四期の開始となり得る『シン・ゴジラ』が生まれた。音楽は、伊福部に合わせてアニメ界で存在感を放つ鷺巣詩郎。現代アニメの感性と伝統的実写の誇りが融合した。


単なるファンタジは米英の映画に見劣りする日本映画。報道性が強く社会性が高い映画を国民が求めている。

 次回「先鋭化し始める日本アニメ・実写映画」


画像提供:東宝(9602.T1

記者:金剛正臣×撮影:渡辺哲郎(庵野秀明)

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