二十四歳のフィリピン人監督が描いた、社会派映画『バードショット』

【芸能ニュース】 平成二十八年十月二十八日にTIFFにて、「アジアの未来」部門の作品賞を受賞したフィリピン映画『バードショット』のQ&Aが行われ、監督、キャストとプロデューサら四名が登壇した。多くの映画人を排出するレッド一族のミカイル・レッド(辛未)は比・マニラ生まれで、二十四歳。デビュー作「レコーダー 目撃者」はTIFFで上映され、バンクーバー国際映画祭で最優秀新人監督賞を受賞した。最新の本作は、ドーハ映画協会および釜山国際映画祭アジア企画マーケットCJEntertainment賞からの資金提供により製作された。


本作のアイデアは四年前に、たまたま読んだ新聞記事から、とレッド監督。何も知らずに比ワシを殺してしまった家族が牢獄に入れられたという問題を目にし、「自然保護の観点では、ワシが殺された事、そして何も知らず、教育を受けてこなかった保護区近くに住む人々が殺されてしまったという、当時の社会問題を表に出したいと思った。」と、リアルな問題を映し出したい想いから製作にあたった。




<若手を育てる力があるフィリピン>

 主人公・マヤのキャラクタについて、“比ワシの様な生存危惧種に近い”と語る。その理由について「生まれた時は誰しも無垢。だが、残念ながら長く生きれば生きる程、どんどん良心・モラルが低下していったり、自分自身が変わっていってしまう。周りの大人達が現実を教え、時には悪にもならなければならないとする中、マヤだけはずっと無垢の儘であり続けた。」と答えた。レッド監督にとってのマヤは原点であり、そんな人間は稀であるとした。


比映画はロー バジェット(低予算)で行われる事が多い為、プロデューサのパメラ・L・レイエスは資金集めに苦労したと話す。「ちゃんと日数を掛けて撮影する、適正な報酬を払う事がプロデューサの責務。一年くらい掛けて、なんとか達成できた。」と述べ、自分の仕事に満足いく結果を出せたとした。またマヤを演じたメアリー・ジョイ・アポストルは、「自分もマヤと同じで無知識なので、監督の思うマヤを演じた。」と難しい役にも関わらず全力で挑戦した。アーノルド・レイエスは「素晴らしい監督、プロデューサに恵まれた。この映画の撮影に向け、この社会問題のリサーチやニュースを読むよう様になった。」と、キャストやスタッフ全員が全力で取り組んだ映画である点を強調した。


「アジアの未来」部門:フィリピン映画『バードショット』Q&A/TIFF2016


撮影記者:原田眞吾

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