サブスク市場は令和四年度に一兆円突破の予測、矢野経済研究所

【ビジネス報道】 令和三年三月二十九日に矢野経済研究所(代取:水越孝)は、国内のサブスク市場の主要・注目カテゴリの市場動向、参入企業動向と将来展望『二〇二一 サブスクリプション・定額サービス市場の実態と展望』を公表した。全二百一頁。同社が一月から三月に掛けて調査。


調査対象はサブスク サービス及び支援サービス事業者(B2C・消費者向け)、サブスク ビジネス支援サービス事業者(B2B・事業者向け)等。調査方法は同社の専門研究員による直接面接取材並びに文献調査を併用。



=市場概況=

 昨年度のサブスク サービス国内市場規模(七市場計、食品・化粧品類の定期宅配サービス分野含む)はエンドユーザ(消費者)支払額ベースで、前年度比二十八.三㌫増の八千七百五十九.六億円。本年度は同十三.八㌫増の九千九百六十五億円を予測。


サブスク市場はデジタル コンテンツ分野と食品・化粧品類の定期宅配サービス分野を除くと、未だ小規模な分野が多い。これまでサブスクを提供するプレイヤに同社が調査してきた中で、多くの事業が抱えるサービス成長の課題は「認知が進んでも利用が進まない」点であった。


しかし、昨年度のコロナ禍以降で生活様式や働き方が大きく変わり、市場も変わってきている。昨年度の各分野での共通点は、新規ユーザがサービス登録だけでなく、実際にサービスに加入し、サービスを体験したという点。コロナ禍で様々な行動が制限され、これを契機に利便性の高いサブスクの試用が進んだと考える。


各社では、無料サービス等の積極的なキャンペーン展開により、新たなユーザを大幅に獲得。この為に有料ユーザ数の増加に必ずしも直結した訳ではないが、これまで難しかった “認知から利用” への移行に成功している。昨年度はサブスク利用のきっかけづくりになった年になったと判断。



=注目トピック=

 多拠点居住サービス市場は、“地方との交流” や “デュアルライフ” など特定の目的を持つ人に向けたサービスを中心に、ニッチな市場として成長していく流れだった。コロナ禍以降は人々の生活様式や働き方が変わり、注目を集めている。


コロナ禍直後で人の移動が減少し、テレワークが定着し始めた時期は自宅で過ごす人々が増え、一時的にサービスの稼働を大きく落とした事業者もみられたが、緊急事態宣言が明けた昨年六月以降からは、テレワーク場所として都心部から離れた拠点を利用したいというニーズが高まっており、業績を回復させた。


都市部近くの周辺エリアに拠点を持っていた事業者も郊外・地方拠点の開拓を進めている状況で、多くのサービスで拠点数が増。他、昨年度のトピックとして“宿泊施設の参入”が挙げられる。コロナ禍によりインバウンド(訪日外国人客)が激減した事への対策として、宿泊施設を月額制サービスとして提供するホテル等が登場。ただ、これら施設のサービスは今後、コロナ禍の収束や東京オリンピック・パラリンピック開催により宿泊需要が戻る事が想定される為、そのタイミングで終了するとみられる。



=将来展望=

 コロナ禍により、新規ユーザを取込む事に成功したサービスは多い。コロナ禍によりユーザ数を落としたサービスもあるが、コロナ禍の収束と共に既存ユーザーが復帰、更にコロナ禍を契機にサービスに加入したユーザが上乗せされるといった相乗効果でサービス拡大に繋がると考える。これらより、コロナ禍の収束後は多くのサービスで本格的なサービス拡大フェーズに入ると考えられ、国内のサブスク市場全体は、引き続き堅調に成長していく見通しとした。


画像:㈱矢野経済研究所

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