【経済報道】 令和三年四月二十日に「東大」大学院 農学生命科学研究科・鈴木宣弘(戊戌)教授は、『RCEPの影響試算 農業一人負けが続く』を日本農業新聞に寄稿した。鈴木教授は農業経済学が専門。
RCEP(地域的な包括的経済連携協定)は、世界最大の経済連携協定(EPA)。日中韓豪、ニュージーランドとASEAN十ヶ国の計十五ヵ国が昨年十一月に署名。世界の人口とGDPの三割を占める。日本に限れば、貿易総額の五割を占める。報道現在で日本は衆院を通過し、参院にて審議中。発行は、最低でASEANが六ヶ国、非・ASEANが三国の批准後の六十日後に発効する。三年元日の発行を目指す。
鈴木教授達が行った暫定試算の結果、日本のGDP増加率が二.九五㌫と突出。中韓は微増で、ASEANとオセアニア両国は減少と判明した。日本国内では自動車が一人勝ちし、農業は一人負けという。自動車生産の増加額は三兆円。農業生産の減少額は五千六百億円強。TPPの半分。内、「野菜・果樹」の損失は八百六十億円で、TPPの三.五倍の損失見込み。
教授は「今こそ日本と世界の市民・農民の声に耳を傾け、“今だけ金だけ自分だけ”の企業利益追求の為に、国内農家・国民を犠牲にしたり、途上国の人々を苦しめたりする交渉を再考する必要がある。」と訴える。
<RCEPとは>
RCEPはTPPとは異なり、中韓が入っている。元年に「日EU経済連携協定(EPA)」が、米国はTPPを抜けて二年に「日米貿易協定(FTA)」が、本年元日に「日英包括的 経済連携協定(EPA)」が発効。日本は立て続けにFTA・EPAを発効し、世界貿易のハブとなりつつある。
RCEPにつき、本年四月二日に衆院にて茂木敏充(乙未)外務大臣は、「世界の成長センタの地域と日本との繋がりが強固になり、経済成長に寄与する事が期待される。」と述べた。国内企業は関税撤廃という優位性が失われる事により、一部を除いて本格的な世界戦に入る。ヒト・モノ・カネ・情報が自由に世界を行き来する。以下が対象。
- 物品の貿易
- 原産地規則
- 税関手続及び貿易円滑化
- 衛生植物検疫措置
- 任意規格、強制規格及び適合性評価手続
- 貿易上の救済
- サービスの貿易
- 自然人の一時的な移動
- 投資
- 知的財産
- 電子商取引
- 競争
- 中小企業
- 経済協力及び技術協力
- 政府調達
- 紛争解決
『第十二章 電子商取引』
「第D節 国境を越える電子商取引の促進」
第十四条 コンピュータ関連設備の設置
第二項;何れの締約国も、自国の領域において事業を実施する為の条件として、対象者に対し、当該領域においてコンピュータ関連設備(サーバー等)を利用し、又は設置する事を要求してはならない。
第三項;本条の如何なる規定も、締約国が次の何れかの措置を採用し、又は維持する事を妨げるものではない。
(a) 第二項の規定に適合しない措置であって、締約国が公共政策の正当な目的を達成する為に必要であると認めるもの。但し、当該措置が恣意的若しくは不当な差別の手段となる様な態様又は貿易に対する偽装した制限となる様な態様で適用されない事を条件とする。
注;この(a)の規定の適用上、締約国は、正当な公共政策の実施の必要性については実施する締約国が決定する事を確認する。
(b)締約国が自国の安全保障上の重大な利益の保護の為に必要であると認める措置。他の締約国は、当該措置については、争ってはならない。
第十五条 情報の電子的手段による国境を越える移転
第一項;締約国は、各締約国が情報の電子的手段による移転に関する自国の規制上の要件を課す事ができる事を認識する。
第二項;締約国は、情報の電子的手段による国境を越える移転が対象者の事業の実施の為に行われる場合には、当該移転を妨げてはならない。
第三項;前条第三項に同じ
売国企業は存在するか
上記二条には警戒が必要だ。中国等の企業が日本でビジネスをする際に、原則、サーバーを日本に置かせる事ができない。中国には『国家情報法』がある。中国の諜報活動への協力を中国企業や中国人に強制するもの。国内企業で務める中国人労働者等も含まれる。
RCEPには個人情報の保護はあるものの、日本人の個人情報は中国企業がYahooやLINE等を通して、中国が獲得できる可能性がある。既に疑うべき事案は起こった。中国は直接的よりも間接的に日本企業を通じて、情報を収集するであろう。これは国防の問題。
第十九章に紛争解決があり、国際法上の解釈を重んじるものであるが、性悪説を基本とし、日本政府は個人情報等の漏洩に関して先の二条に係る国際法上、公共政策の正当な目的を主張できる準備を整え、国際法上、電子的手段による移転に関する自国の規制上の要件を整えるべきであろう。
特にZホールディングス(4689.T1)等の国内ビックデータ企業に対し、RCEP関連の徹底した規制及び罰則(一発上場廃止等)を設けるべきである。
記事:羽田野正法
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