親も関心を持つべき、今後の公教育の未来を左右する『教員の長時間労働(超勤)裁判』

【教育報道】 令和三年五月二十一日に埼玉・浦和「さいたま地裁」にて小学校教諭である原告・田中まさお(仮名)が『教員の長時間労働(超勤)裁判』の第一審における結審報告会を行った。被告は原告が勤めていた学校の地方公共団体(非公開)。


結審前に一千四百五十一人が署名した「先生のサービス残業を『労働』として認めてください」を教育系の学生達で構成する支援事務局が、さいたま地裁へ提出した。判決は九月。報告会では原告、弁護士・若生直樹と「埼玉大」教育学部・高橋哲 准教授が説明した。


本件は、原告が『労働基準法』に定められた時間外労働に対する割増賃金が一切支払われていないのは違法であるとして、時間外労働に対する未払賃金の支払いを求めるもの。公立学校の教員は、長年、長時間に亘る過密な労働・時間外労働を求められてきた。この様な学校教員の勤務実態は、一向に改善されないままで悪化の一途を辿っており、結果、学校教員の心身の健康が損なわれている事案も数多く発生している状況にある。


しかしながら、昭和四十六年の『給特法(国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)』制定以後、公立学校の教員は幾ら時間外労働をしても、時間外労働手当は、一切支給されていない。公立学校の教員は、言わば「無賃労働」を強いられている。そして、この事が公立学校の教員の長時間労働に歯止めが利かず、学校現場で青天井の時間外労働が横行する要因ともなっている。



<勝訴でも控訴が前提>

 原告は、実際に教育の現場において、斯様な時間外労働(無賃労働)が恒常的に存在している事実を目の当たりにしてきた。本件は、原告が教育現場に三十七年以上も携わってきた経験を通じ、公立学校の教員に対しても時間外労働に対する賃金の支払いが認められるべきであると明らかにし、現状を改善する事を目指して提訴した。


高橋准教授は「この問題は一人の教員の問題ではなく、次世代の教師達、その教師達に育てられる子どもの学習する権利。もっと言えば、今後の公教育の未来を左右する。親として関心を持つ訴訟である。」と念を推した。


若生弁護士は「裁判官の方でも、この問題は非常に重要な問題なので、判決を書くのにじっくり時間が欲しい。」と、裁判官側でも重要視している旨を説明。「九月にどの様な判決が出たとしても控訴して、東京高裁の審議に移っていく可能性が高い。」と根気強く裁判を行っていく姿勢。


問題は何処にあるのか。原告は「学校長が労働基準法を全く理解していない。教育委員会も理解していない。」と主張。「文科省も行動していない。」と今回の報告会では議論された。傍聴者からも積極的な質問や意見交換が行われ、具体的にどの様に改善していくか。学生からシニアまで積極的な意見交換を行い、未来の教員や子どもの教育環境改善の為に闘い続ける。


本件は平成三十年より三年に亘り審理。九月に第一審の判決が下される。署名活動は継続中(報道現在)。


記事:岡本早百合

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