【芸能考察】 平成二十八年十一月三日、第二十九回東京国際映画祭にて『第三回“SAMURAI(サムライ)賞” 』が発表された。同賞は比類なき感性で「サムライ」の如く、常に時代を斬り開く革新的な映画を世界へ発信し続けてきた映画人の功績を称える賞で、 新しい時代への道を切り開く画期的なフィルムを作成し続けてきた映画制作者の功績を表彰する。
第一回目の受賞者は北野武(丁亥)監督、ティム・バートン(戊戌)監督、第二回目の受賞者は山田洋次(辛未)監督、ジョン・ウー(丙戌)監督が選出された。第三回目は、「沈黙 ーサイレンスー(二〇一七)/KADOKAWA」、「ディパーテッド(二〇〇六)/ワーナー・ブラザーズ」、カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作品「タクシードライバー(一九七六)/コロムビア映画」のマーティン・スコセッシ(壬午)監督と「岸辺の旅(二〇一五)/ショウゲート」「トウキョウソナタ(二〇〇八)/ピックス」「CURE(一九九七)/松竹富士」の黒沢清(乙未)監督が受賞。同日には黒沢監督によるスペシャル トークイベントも行われた。
<映画はゲームや漫画、ロックに寄った文化>
高校生の頃から映画を観るのが好きだった黒沢監督は、大学でも八㍉フィルムを製作する等、若い時から映画家を志していた。商業映画への本格的な入り口は、長谷川和彦(丙戌)監督との雑誌での対談から始まった。「長谷川監督の準備稿を読んだ際に、確か『全然ダメじゃないですか』と言ったら、そこが気に入られたんだと思う。」と当時のエピソードを明かした。その後は長谷川監督の製作助手を経て昭和五十七年にディレクターズ・カンパニーに、そして「CURE」でブレイクを果たした。
映画とは若い人を相手に作るのが本当の姿と謂う黒沢監督。「映画ができて百年ちょっとになるが、まだまだ他の美術や音楽、演劇に比べると若い。どちらかといえばテレビゲーム、漫画、ロックミュージックの方に寄った文化だと思う。」と独自論を語り、これからも常に若い人と交流をしていきたいと前のめる。また、これからの作品については「これ迄にやった事のない事をやってみたい。」とし、どんなものでも挑戦する姿勢を伝えた。
若手監督との意見交換も行った。「気が付くと日本映画の色んな時期を乗り越えた。」と、これ迄の映画人生を振り返る。イベント終了後には、これ迄の作品で関わってきたスタッフ、キャストに感謝を述べた。尚、黒沢監督の最新作で海外初進出作品でもある『ダゲレオタイプの女(二〇一六)/ビターズ・エンド』は同映画祭のJapan Now部門として上映された。
『第三回”SAMURAI(サムライ)”賞授賞記念 黒沢清監督 スペシャルトークイベント/TIFF』
撮影記者:原田眞吾
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