福沢諭吉「国民一人ひとりの独立自尊」|第二回『新たな資本主義を創る議連』

【政経報道】 令和三年六月十七日に国会にて自民『新たな資本主義を創る議連(会長:岸田文雄)』の第二回勉強会が開かれた。今回の講師は、経済学者で​労働経済学を専門とする「慶大」清家篤(甲午)名誉教授。第十八代学長。テーマは「真の意味で」人間中心の経済社会に」。福沢諭吉を採り上げた。


冒頭で岸田会長(丁酉)は、先週の設立講演の渋沢栄一「論語と算盤」に触れた。「道徳的価値と富の追及。一見かけ離れた二つを一致させる事の意味について話しを伺った。」と述べ、渋沢の民の力を集結して経済社会を創るという考えと福沢の国民一人ひとりの独立自尊を以て経済社会を創る考えを対比。


「私達も、この激動する国際情勢の中で国際社会に大胆に挑戦する。日本から新しい資本主義のモデルを構想する事に心から期待しています。」と先人の残した知恵を元に新たな資本主義を創る姿勢を改めて示した。


清家教授(写真上)の講演内容は下記。

  1. 仕事の未来世界委員会;百年前のILO(国際労働機関)創設の時代背景、仕事の未来を変える構造変化、三つの投資促進の必要性
  2. 成長と分配の好循環;豊かさの源泉は経済成長、分配による経済成長
  3. 成長と持続可能性向上の為に支え手を増やす;女性の就労促進、高齢者の就労促進、様々な障害をもった人の就労促進
  4. 子育て世代への分配拡大は人的資本への投資拡充;子育て支援拡充、教育や健康への投資拡充
  5. 政策の目的と整合的な制度に;支え手を増やす社会保障制度に、支え手を増やす税制度に
  6. 福沢に学ぶ事;「奴雁(ドガン)」の長期視点、「実学」の実証的根拠、「公智」のバランス判断


一のILO設立の理念は、労働条件の改善を通じて社会正義を基礎とする世界の恒久平和だ。基本的な考えは人間中心。その中で、三つの投資促進を促す。「人間の潜在能力への投資拡充」「仕事に関わる制度枠組みへの投資拡充」「尊厳ある持続可能な仕事への投資拡充」。


総理を狙う岸田会長は、講演終了後に勉強会について「渋沢栄一と福沢諭吉。日本的で良いスタートを切れたんじゃないか。」とコメントした。


<中堅・シニアの国民が放置し続けた『社会保障給付費』の激増>

 労働人口見通しに関し、清家教授は厚労省のデータも使った。平成二十九年の実績値より令和七年、同二十二年の予測値を算出。経済成長と労働力参加が適切に進まなければ、二十二年には労働人口は現在よりも一千万人強も減少。労働力参加が適切に進んでも五百万人減。


特に適切に進むケースにおいて、「三十五歳から三十九歳女性」の労働参加が約二十㌫増と高い点がポイント。「六十五歳から六十九歳男性」の労働参加である約十五㌫増よりも多い。


また「社会保障給付費」に関して、平成三十年時点で国家予算の百兆円を超え、百二十兆円。二十二年では、最大で百九十兆円の給付費となる見通し。その差は最大七十兆円。この「社保給付費」と国家予算「社保関係費」は異なる。本年度の同・関係費は三十六兆円。


同・給付費とは社会保障三分野(医療・年金・福祉等)の年間総費用。「税金(国家予算)」だけでなく、「社保料」等も財源。ILO基準。福祉等には介護や生活保護等を含む。医療費の自己負担額は含まない。


 平成の三十年間で増えた同・給付費は、七十四兆円。その間に名目GDPは途中、計算内容に変更があったが、百三十兆円増えた。但し、バブル崩壊後の同九年からは十三兆円しか増えてない。詰まり、平成三十年間の百三十兆円の殆どは、バブル期に稼いだ。


同・給付費の問題を菅内閣は改善しようと試みている。そして、今後二十年間で最大七十兆円も不足する同・給付費の為に、名目GDPを上げて増税せずに税収増とするか、「消費税」の様に増税かの選択肢となる。

選ぶのは主権者・日本国民。


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