【経済報道】 菅内閣は、令和三年六月十八日に日本経済において最も重要な『経済財政運営と改革の基本方針 二〇二一(骨太の方針案、四十二頁)』を閣議決定した。B2G案件。
四原動力に据えたのはデジタル・グリーン・活力ある地方づくり・少子化対策。
<グリーン>
政府目標は、令和十二年までに「温室効果ガス排出削減目標」を四十六㌫減(平成二十五年比)。「脱炭素を軸として成長に資する政策推進」「再可エネの主力電源化の徹底」「公的部門の先導により、必要財源を確保しながら脱炭素実現を徹底」の三点で推進する。
- 洋上風力、水素、蓄電池等の「重点分野二十三」の研究開発と設備投資
- 「グリーン イノベーション基金」で十年間の継続支援
- カーボンニュートラルに向けた「投資促進税制」活用
- 企業の「脱炭素化投資」の後押し
- TCFD(気候関連 財務情報開示タスクフォース)等に基づく開示の質と量の充実
- 「グリーン国際金融センタ」実現
- 「トランジション・ファイナンス」推進
- 「グリーンGDP(仮称)」等の研究・整備
<デジタル>
官民インフラのDXは、今後五年で一気呵成に作り上げる(令和八年まで)。今秋に発足予定のデジタル庁が核。
- 各府省庁は国家公務員採用 総合職試験「デジタル」区分の合格者を積極的に採用
- デジタル庁・NISCによる職員育成・研修の充実
- 政府や地方行政のBPR(業務改革)を進め、効率化とサービス向上
- 来年度末までに略全国民にマイナンバカード
- マイナンバカードの健康保険証、運転免許証との一体化、スマホへの搭載等
- 給付事務のDX(マイナンバ制度、GビズID)
- 5Gカバー率を令和五年度末までに九十八㌫
- 6Gの研究開発
- 地方における中小企業も含め、「非対面型ビズモデル」への変革や「新産業モデル」を創出
- デジタル投資を税制支援、中小企業は「IT導入サポート」を拡充
- 中小企業共通EDI(電子データ交換、注文書や契約書のネット完結等)の普及促進
- 「デジタル人材プラットフォーム」の構築;教育コンテンツやカリキュラムの整備、実践的な学びの場の提供等を行う(産学官)
- 各種デジタル人材の「スキル評価基準」の作成/情報処理推進機構
- 全国の大学・高専・専門等において数理・データサイエンス・AI教育の充実
- 「デジタル関連学部」や「修士・博士課程プログラム」の拡充・再編
- 分野横断型の「博士課程教育プログラム」の創設
- ダブルメジャー(複数専攻、学位は一つ)の推進
- 職業訓練と教育訓練給付のデジタル人材育成への重点化
- シニア等にオンラインサービスの利用方法等に関して講習会・出前講座等の助言・相談
- サイバ攻撃に対応する技術開発・人材育成・産学官連携拠点の形成
<地方>
地方の所得を上げる。
- 地方をフロンティアと捉える都市部人材の地方移住・定着
- 地銀等の人材仲介機能を強化し、「地域活性化 起業人制度」等と連携
- 地域おこし協力隊等を充実させ、地方自治体の移住支援体制を強化
- 「サテオフィス」の整備・利用促進、立地円滑化
- 空き家・空き地バンクの拡大・活用
- デジタル等の無形資産投資、EC活用や信用供与等を通じた輸出等の海外展開の促進や人材確保・育成等
- 地域の女性起業家・社会起業家等を支援
- 中小企業等の事業承継・再生の円滑化の為の環境整備
- 所得拡大を促す税制措置
- 最低賃金を全国加重平均で一千円
- 非正規雇用の正規化
- 地域観光の事業支援
- ワーケーションや休暇取得促進
- 地域内の縦割りを超えた観光業と異業種の連携によるコンテンツ造成
- IR整備
- 輸出を始めとした「農林水産業」の成長産業化
- スポーツ・文化芸術の振興
- 「スマートシティ」を令和七年度までに百地域を構築;「スーパーシティ」を起点に「スマートシティ重点整備地域」を選定。都市間・分野間連携の基盤となる都市OSの早期整備により、多核連携の実現を後押し
- 高規格道路・整備新幹線・リニア中央新幹線・港湾・ 漁港等の人流・物流ネットワークの早期整備と活用
- STEAM教育を中心とした人材育成・研究開発
- 東京圏の大学の地方サテキャン設置
- 産学金官連携により、地域の経済循環を担う「地域密着型企業」の立上げ
<少子化>
子どもの視点に立った政策を推進する。結婚、妊娠・出産、子育てを大切にするという意識が社会 全体で深く共有され、地域全体で子育て家庭を支えていく社会の実現を目指す。子どもの成育、成長過程の全体について予算・人材等の資源を投入する。将来の子ども達へ負担を先送りしない様に、応能負担や歳入改革を通じて十分に安定的な財源を確保し、有効性や優先順位を踏まえ、速やかに必要な支援策を講じる。安定財源の確保は企業を含め、社会・経済の参加者全員が連帯し、公平な立場で広く負担していく新たな枠組みについても検討する。
- 社会全体で男性が育児休業を取得し易い環境整備
- 結婚支援、不妊治療への保険適用、出産育児一時金の増額
- 産後ケア事業の推進
- 子育て家庭支援体制、ひとり親世帯等に対する支援
- 消費税分以外も含め、適切に財源確保
- 子どもの権利を保障
- 子ども支援に携わる者の資質向上の資格、一時保護の適正手続の確保、子どもの権利擁護、実効性ある里親支援、家庭養育優先原則の徹底、措置解除者に対する支援
- 子ども食堂・子ども宅食・フードバンクへの支援、地域における居場所づくり、見守り支援
- 子どもを猥褻行為から守る環境整備
<四原動力の基盤づくり>
- デジタル時代の質の高い教育の実現、イノベ促進
- 女性の活躍
- 若者の活躍
- セーフティネット強化、孤独・孤立対策等;生活困窮者自立支援制度や空き家等を活用した住宅支援の強化、孤独・孤立対策は二十四時間対応(ポータルサイト構築)、氷河期世代への支援等
- 働き方改革の実践、リカレント教育の充実;ジョブ型正社員、リカレント教育の個人直接給付、博士号取得者の採用拡大等
- 経済安保の確保等
- 戦略的な経済連携の強化
- 対日直接投資の推進、外国人材の受入れ・共生;「国際金融センタ」の実現等
- 外交・安保の強化;防衛分野での技術的優越の確保等
- 安全で安心な暮らしの実現
一では高学年の教科担任制、STEAM教育、非認知能力の育成、企業等と連携・協働した教育プログラム、各地方自治体や企業等による奨学金返還支援、貸与型奨学金の返還支援、大学ファンド(十兆円規模へ)、スタートアップ創出や産学官の共創によるイノベ生態系(エコシステム)の全国的形成、兼業改革、資金調達の環境整備、「破壊的イノベ」創出に向けた優れた人材の発掘、創発的研究の推進、ムーンショット型研究開発の抜本的強化等。
二では女性デジタル人材育成、ひとり親への職業訓練、「生理の貧困」支援、妊産婦や困難を抱える女性への支援、養育費の不払い解消、女性の参画拡大、女性の視点も踏まえた税制や社会保障制度、性に関する教育、性犯罪・性暴力対策の強化、女性の正規化への重点的な支援、学校推薦型選抜や総合型選抜に女子枠、女学生向けのSTEAM 教育拠点の整備等。
三では安定的な経済的支援による博士課程学生の処遇向上、研究に専念できる環境の確保、競争的研究費における効果的な枠設定等による若手研究者への重点化、より多くの若手研究者が活躍する大学への運営費交付金の重点配分、研究者の起業や兼業を促す為のガイドライン充実、大学に対して勤務時間外だけの兼業を認める規則等の見直し、高卒者の就職に係る「一人一社制」の在り方について各都道府県における検討を促す、政策決定過程において若年世代や世代間合意が不可欠な分野の施策について若者の意見が積極的且つ適切に反映される様に「各種審議会」や「懇談会」等の委員構成に配慮等。
写真:総理大臣官邸
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