仮想通貨が間もなく本格始動、改正『資金決済法』施行は四ヶ月以内

【ビジネス考察】 第一九〇回常会で閣法の第四十三号『改正銀行法等(情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律)』が平成二十八年六月三日に公布され、一年以内に施行される。フィンテックに直結する法律だ。


『改正銀行法等』は銀行法、農業協同組合法、水産業協同組合法、協同組合による金融事業に関する法律、信用金庫法、長期信用銀行法、労働金庫法、農林中央金庫法、信託業法、電子記録債権法と資金決済法の計十一法の一部を一挙に改正する。附則では会社法等も改正した。




<改正法の中身>

 中でも改正「資金決済法」は経済的に大きなインパクトを与える「仮想通貨」に係る法だ。先ず第一条の目的に「仮想通貨の交換等」を加えた。「仮想通貨」を以下に定義した。


  1. 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの 
  2. 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの



同改正法の第三章の二として「仮想通貨」が追加された。第六十三条の二と三である。「仮想通貨交換業者」の登録や申請、登録拒否、名義貸しの禁止、報告書の提出義務(毎年)、外国仮想通貨交換業者の勧誘の禁止等が定められた。申請記載事項は以下の通り。


  1. 商号及び住所
  2. 資本金の額
  3. 仮想通貨交換業に係る営業所の名称及び所在地
  4. 取締役及び監査役(監査等委員会設置会社にあっては取締役とし、指名委員会等設置会社にあっては取締役及び執行役とし、外国仮想通貨交換業者にあっては外国の法令上これらに相当する者)の氏名
  5. 会計参与設置会社にあっては、会計参与の氏名又は名称
  6. 外国仮想通貨交換業者にあっては、国内における代表者の氏名
  7. 取り扱う仮想通貨の名称
  8. 仮想通貨交換業の内容及び方法
  9. 仮想通貨交換業の一部を第三者に委託する場合にあっては、当該委託に係る業務の内容並びにその委託先の氏名又は商号若しくは名称及び住所
  10. 他に事業を行っているときは、その事業の種類
  11. その他内閣府令で定める事項



併せて「通貨建資産」も定義。内閣総理大臣の登録を受けた者ができる「仮想通貨交換業」の定義は以下の通り。


  1. 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換 
  2. 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
  3. その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること



「前払式支払手段発行者」の保有者への払い戻し義務(内閣府令定額)も追加。払い戻し条件は以下の通り。


  1. 前払式支払手段の発行の業務の全部又は一部を廃止した場合(相続又は事業譲渡、合併若しくは会社分割その他の事由により当該業務の承継が行われた場合を除く)
  2. 当該前払式支払手段発行者が第三者型発行者である場合において、第二十七条第一項(登録者の虚偽記載や重要事項の未記載等)又は第二項の規定(総理の登録拒否)により第七条の登録を取り消されたとき 
  3. その他内閣府令で定める場合



その他の留意条文

 同改正法に「紛争解決等業務(苦情処理手続、紛争解決手続)」を組み込み、「紛争解決等業務の種別(資金移動業務、仮想通貨交換業務)」を明確化した。「指定紛争解決機関」は「指定資金移動 業務紛争解決機関」に改めた。


電子公告の公告期間等は、会社法に準じる。「前払式支払手段発行者」はユーザからの苦情処理に対し必要な措置を講じなければならない。「基準日未使用残高」の基準日は三月と九月末だが、特例として三月、六月、九月、十二月末にできる。


総理の権限委任先は、金融長官。政令により金融長官から財務局長か財務支局長に委任する事ができる(附則第三条・第五条)。政府は改正法の施行後、五年を目途に措置を講ずる(必要時)。

(了)

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