大人もキャリア教育を、育むべき資質・能力|キャリア教育推進連携シンポジウム

【社会ニュース】 平成二十九年一月十七日に開催された既報『平成二十八年度キャリア教育推進連携シンポジウム/文科省、経産省、厚労省』内において、パネルディスカス「変わる社会の羅針盤~これからの時代を生き抜く力を育むキャリア教育~」で学生のキャリア形成にスポットが当たった。


背景には三月に戦後九度目となる学習指導要領の改訂にアクティブ・ラーニング導入やプログラミング教育充実に併せて、キャリア教育を強める点がある。小中高向けの学習指導要領は十年に一度、文科省(大臣:松野博一)が改訂する。




<キャリア教育の方向性>

 当日の登壇者は、関西大・川﨑友嗣 教授(写真上)、みんなのコード・利根川裕太 代表理事、和歌山教育委・宮下和己 教育長、横浜中川西中・平川理恵 校長、文科省・坪田友広 課長にモデレータの文科省・長田徹 調査官の六名。ディスカスに寄せられた一般からの問いは百七十に上った。以下の四つに関心が集まった。


  1. キャリア教育で育む資質・能力
  2. 中教審の答申(新キャリア教育)
  3. キャリア系職業に求める力
  4. 海外・最新事例


キャリア教育の定義は、主催三省でやや異なる。川﨑教授は「一人ひとりが社会の中で自分らしく生きてく力。」と纏めた。育成すべき基礎的・汎用的能力に併せて、「尖った所も持って欲しい。」と独自性も挙げた。昨年より国家資格となった「キャリア コンサルタント」の増加に伴い、会場のキャリア系来場者も大きく頷いていた。



本年度からキャリア・パスポートの実証実験が開始

 平川校長(写真上)は「子どもだけでなく、大人も学べる学校を。」と大人に対するキャリア教育を、人生百年の例を挙げて推した。宮下教育長はキャリア・パスポート(仮)の重要性を説いた。二十六年の「キャリア・パスポート(仮称)構想研究会」によれば、現行の「ジョブ・カード/厚労省」を見直していく。後三年で三百万人の登録を目指している。長田調査官は“学び続ける力”をキャリア教育で育むべき資質・能力、とした。


新キャリア教育に関して、今後十年で無くなる職業等を調査する英・オックスフォード大等の予測を例示し、平川校長は「職業をクリエイトする力。」を重要視し、人生百年を生きていける能力の育成を訴えた。坪田課長は進路指導を危惧。社会変化の中、長期的なスパンで「十年後に振り返って(進路指導の)効果があったか。」と再定義を促した。



小中高校生にも生産性

 ディスカスの終盤で宮下教育長は「何故、学ぶのか。」を見つめ、学びの意義をしっかりと教員が授業で伝えていく必要性を述べた。三月の改訂を前に指導要領の矛盾点にも光が当たった。パーソナライズな教育を文科省が重んじる一方で、指導要領や教科書がガチガチ過ぎと注文。学校が「すき屋よりもブラック。」と平川校長は揶揄し、教員の多忙化を伝えた。重ねて「やっぱり生産性。これが一番のキャリア教育。」「先生みたいに成りたい、が大事。」等の意見が出た。


このキャリア教育は教科・単元毎に組み込まれる予定だ。文科省はキャリア教育についてPDF「キャリア教育とは何か(画像引用)」を公表している。厚労省の「ジョブ・カード」は事業者向けに労働者のキャリア形成の促進や職業能力の見える化の促進を推奨し、助成金支援等も行っている。また同省は「ユースエール認定制度」も推す。



人類は余命百年の時代に足を踏み入れている。ピーター・F・ドラッカが書いた様に、人生で大学は最低二度行く時代だ。知識の刷新なくば、百年も働き続けれる事は困難となる。その土台となるのが小中高のキャリア教育となる。個別性や独自性、正解の無い時代に求められるのは、柔軟な臨機応変能力であり、生き抜く気概であろう。


『平成二十八年度キャリア教育推進連携シンポジウム/文科省、経産省、厚労省』


撮影記事:金剛正臣

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