【ビジネス ニュース】 平成二十九年二月十四日に東京都(知事:小池百合子)は第三回『国際金融都市・東京のあり方懇談会』を開いた。出席者は計十六名。デロイト トーマツ税理士法人(旧トーマツ)の初代理事長だった公認会計士・須田徹(丙戌)、「一橋大」「京大」教授でスカイマークとインテグラルの代取・佐山展生(癸巳)と日本投資顧問業協会の会長・岩間陽一郎(癸未)の三名がプレゼンを行った。
全国銀行協会の会長で三井住友銀行の頭取・國部毅(甲午、写真上)は「日本はフィンテックでリードできるのでは。」と自信を示した。オープンAPI等の議論を同協会で進めており、論点も纏まってきている。併せて、ハッカソンの活動もアピールした。
愛・アクセンチュアの「フィンテック、発展する市場環境:日本市場への示唆(画像引用)」によれば、二十七年時点でフィンテック先進国は米英。其々の投資額は百二十二億㌦と十億㌦。日本は〇.七億㌦だった。単年度の投資額で百倍以上も差があり、イノベーションや資産の概念では複数年度の投資が価値を高めるので、國部の発言が現実となれば尋常ではない生産性を日本が発揮する事になる。
<実現は難しいがアイデアの領域を拡げるプレゼン>
須田(写真上)のプレゼン「税務に関する一考察」が的を射ていた。実現性は乏しいものの、ビジネスユーザの東京に求める需要(ニーズとワンツ)を見事に汲み取っていた。先ずは税制。世界一の金融街を狙うのであれば、報道現在の東京(二十三区)の法人実効税率三十.八六㌫は高い。同じアジアの好敵手であるシンガポールと香港は其々、十七㌫と十六.五㌫。
日本との差が大きいので須田は『地方税法』第六条を利用し、地方法人関係税の減免を訴えた。また課税対象にならない出資を都の補助金から資金供給する案等を提案。国に対してはソフト開発や新金融商品開発の費用を税額控除する案、非居住者に対する国外財産調書の負担軽減、新規企業への減免を対企業策とした。
対投資家策は非常に効果が高い提案だった。金融所得の一体課税や金融損失の損益通算(所得の種類に無関係とする)、高所得者向けの家事労働者費用の所得控除制度、パススルー投資信託等を挙げた。特にパススルー投資信託はインパクトが大きい。国内外の両方の視点で新東京を思案した。柔軟性及び投資家目線の高いプレゼンであった。
グローバル人材認証レベルとEMP
佐山(写真上)はグローバル・アカデミー(代取:エリック・ヤング)の「グローバル人材認証レベル」を紹介した。四つの能力(グローバル コミュニケーション能力、クリティカル シンキング能力、プレゼン能力、サブジェクト・エクスパティーズ能力)により一級から三級までの認証を行うもの。一級では「各専門分野において、即戦力として海外でビジネスを牽引できる」、「海外ビジネスを立ち上げ、本社のビジネス拡大に繋げられる」等。
岩間(写真上)は新興の資産運用事業者の育成として「EMP(新興マネージャ プログラム)」を例に挙げた。これは米国最大の公的年金カルパース等が取り組んでいる。スタートアップ運用会社や中小規模のVC向けのファンドだ。
Q&Aでは、VCやベンチャ企業の集積の重要性や外国ビジネスマンからみた相続税の障壁等が発言された。
総合力と尖った力
都知事は「私は(日本橋)兜町から大手町にかけて、ウォール ストリート(金融街)を創りたい。」と、ドナルド・トランプ米統領のメキシコ国境の壁に掛けて野望を重ねた。同懇談会で求める案は費用対効果が高く、都のみである程度の対応が可能で、政府側にポジティブな提案ができ、金融業界の慣習を変える事ができる案とした。また同懇談会を東京の成長戦略の「心臓部であります。」と述べ、都民等への伝え方を重要視した。
更に都議会にも、この高度な議論を理解できる議員の必要性を説いた。「ニューカマーをどんどん育てる、という事をどういうカタチが可能なのかを探っていきたい。」と、R&Dに力点を置く。「総合力と尖がった力、というのも必要だと思います。」と締め括った。
東京の成長戦略の心臓部である以上、後三回を予定する同懇談会での改革度が基準となり、小池都政「東京大改革」の成否を決めるだろう。この問題は長年、塩漬けにされて何も実現してこなかったに等しい。日本のGDPの内、四分の一を占める三大財閥と如何に折衝するか。もし成功すれば、日本を一変させる程の破壊力をもつ事は間違いない。都知事の総合力と尖った力が求められる。来年十一月に都の最終提言として「東京国際金融都市構想(仮称)」を策定する。
第三回『国際金融都市・東京のあり方懇談会/東京都』
撮影記事:金剛正臣
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