名目GDPが低いから「賃金」が低い、経済は回れない

【経済考察】 「そもそも、名目賃金は一人当たり名目GDPと同じ概念なので、名目賃金が低いのは、名目GDPの伸びが低いからという事になる。」


これは菅内閣にて内閣官房参与(経済・財政政策担当)を務めた「嘉悦大」高橋洋一(乙未)教授の一文。令和三年八月一日の記事『「日本人の給料は何故三十年間上がっていないのか」全ての責任は日本銀行にある/プレジデント』内の一文。


上図の青線が名目GDP。この二十五年間、碌に名目GDP(名目賃金)が上がってない。一方で実質GDPは上がっている。この間、企業は流動資産「現預金」を三百兆円ちかくまで積み上げた。これは何を意味するのか。労働者へ利益(付加価値)を二十五年間も分配し続けていない事を示す。「労働分配率」の問題だ。


労組が弱くなった結果、ベア等の労働者の賃金交渉力が一方的に低下。株主総会・取締役会に言われるがまま、作業時間・作業品質は上げさせられたが、給与等に反映されてない。大企業群に搾取され続けている。高橋教授は「付加価値の高い商品開発をしたり、同じ製品でも低コストでの製造を実現したりする仕事の方が、そうでない仕事よりも、インフレ率に勝つだけの給料を貰えるのが理想だろう。」と当たり前の事を伝える。


賃金上昇率=インフレ率+生産性向上分



高橋教授は名目GDPが上がる経済の為に、日銀による金融政策「マネタリベース」の増を訴える。当該記事では中銀・日銀が無策だったと手厳しい。「金融政策=雇用政策」、「失業率の低下≒経済成長」との論調。


末尾では野党へも言及。『「労働者の味方」を標榜するなら』と名目賃金が上がる様な国会論争をすべきだったと憤る。



<原則:名目GDP増>

 結論から言えば、実質GDPだけ上げても意味はない。それは皆が感じているだろう。全体のパイである名目GDPが増えてない以上、内訳が変わっただけに過ぎない。労働者の取り分を大企業群が搾取し続けた為に、労働者の手元に金が無い。政治家達が経済学を学んでこなかった為に起こっている現象が、企業の現預金三百兆円。この全てではないが、本来は労働者の取り分が多分にある。


それは労働者が経済学を学ばなければならない事も意味する。経済学を知らない政治家へ全て任せたのは、主権者・労働者。大企業群と対峙できるのは、与党の政治家ないし報道機関しかいない。


令和時代には全体のパイである名目GDPを増やす。労働者も政治家も、この原則を知らなければならない。二十五年間も実質GDPに惑わされた。そして高橋教授の言わんとする通り、金融政策及び財政政策にて日本経済を活性化させるマネー(現金)を供給する必要がある。



消費したくなる金融・財政政策を

 大企業群は現預金を貯め込んでいるので、労働者へ給付金等の形で供給する。「労働分配率」が高い企業へのみ、政府が支援・協力・協業する。未来の財政健全化(日本国の信用増強)の為には、「消費税」を中心にマネーを回収していく。労働者が自信をもって多額の消費をしたくなる様な金融・財政政策により、財政再建の計画が立てられる。


コロナ禍で消費税が安定税収である事は立証された。後は、財務省が各種シミュレーションで消費税による「期待回収率」「期待回収額」を計算し、確からしいデータを以て財政拡張を計画的に実行していくだけとなる。


恐れるべきインフレ率は、高橋教授の式を用いて下記となる。

賃金上昇率=インフレ率+生産性向上分

賃金上昇率ー生産性向上分=インフレ率


無論、この通りだけでインフレ率は進行しないが、経団連等の経済団体がいる以上、「賃金上昇率」は政府でもある程度はコントロールできる。逆説的に言えば「賃金上昇率」は政府がコントロールできる。経済団体ではない。それは錯覚だ。



名目GDP(賃金)を上げる事ができるのは労働者(労組・SNS世論)と与党、そして野党となる。



賃金が低い大企業から労働者は勇気を出して移れば良い。それだけでも名目賃金は上がっていくだろう。確認すべきは務める企業の「労働分配率」。


記事:秦正法

画像:日本のGDP(暦年系列)/GD Freak!、米国vs中国 / 名目GDPは中国がトップへ、米国は日本と合併?/ファイナンシャルスター

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