風俗営業四十万店に直撃する『健康増進法 改正案』、生活を引き替えに健康

【社会論説】 政府が第一九三常会に提出しようとしている『健康増進法 改正案』は飲食系の中小・零細企業に経済的ダメージを与える可能性がある。同法の主務官庁・厚労省は全居酒屋・焼き鳥屋の建物内を禁煙とする方向で最終調整に入ったと読売新聞が平成二十九年二月二十五日に報じた。上図の「案1」で調整に入った事になる。


例外は、バーやスナック等の業種で三十平方㍍(九坪)と定義される小規模飲食店のみとなる。これに違反した場合は罰則として過料が科せられ、度重なる違反の場合は営業停止等の強制措置も盛り込まれる可能性がある。




<全面禁煙の五輪後は大丈夫か>

 これに対し慎重派は、麻生太郎副総理「煙草が吸えないシガーバーには行かない様にしたい(二十日、衆院予算委にて)」と石破茂衆議「一律全面禁煙というが、皆止めちゃえは知恵のある人の言う事ではない(一月十二日、都内会合にて)」等。


同法改正の目的は国民の健康を増進する事と五輪開催に際し、国際基準に合わせる事だ。懸念点は一つ。五輪後の日本経済だ。レストラン等での全面禁煙は喫煙率と客単価からみて、増収となるだろう。しかし、居酒屋での非喫煙者と喫煙者の客単価は異なる。明確な統計は存在しないが、非喫煙者の客単価は至って低い。この差分を全面禁煙による集客の増加で埋められるだろうか。



最大の問題は『風営法』に定められた各風俗営業だ。二十七年時点で全国に四十万店ある(平成二十七年における風俗環境の現状と風俗関係事犯の取締り状況等について/警察庁)。


  • 一号営業(キャバレー等)
  • 二号営業(スナック・キャバクラ等)
  • 三号営業(ナイトクラブ等) 
  • 四号営業(ダンスホール等) 
  • 五号営業(低照度飲食店)
  • 六号営業(区画席飲食店) 
  • 七号営業(パチンコ店、麻雀荘等)
  • 八号営業(ゲームセンター等)


中でも二号、三号、七号の原則全面禁煙による売上減は避けられないだろう。この三種は喫煙者数が多く、客単価を大幅に上げている。二号であれば、シャンパン等の高級ボトルを非喫煙者が何本の入れる事はあるだろうか。九坪以下(上手参照)の条件なので既存のキャバクラ・ホストクラブは閉店に追い込まれる。三号であれば、禁煙のクラブに積極的に遊びに行くだろうか。七号であれば、煙草を吸えずに長時間の利用をするだろうか。



風俗営業店を実質、廃業に追い込む

 同法改正により、国民の健康は増進する。だが、コミュニティが破壊され、ストレス発散の場が消える。日本人の場合、経済が落ち込む。喫煙者がどの程度、生産性が高いかは不明だ。ただ欧米と比較する事は日本文化の観点で間違っている。日本は喫煙により文化や経済を起してきた面がある。


十四年に同法は施行された。GDPは施行から六兆円程度しか増えていない。極一部の大企業が増収し、大多数を占める日本の根幹の零細企業は平均売上高が下がっている。GDPからみても、非喫煙者の意見を重視しても、喫煙者が主体の経済成長力に勝てない。日本は喫煙で文化と経済を起す事ができる。


この理由は非常に簡単である。日本人は欧米人よりシャイな為、見知らぬ人との友好関係の構築に時間が掛かる。何度も長時間、そこに居る事でようやく声を掛けるきっかけが出来たりする。同じ趣味・趣向が判明するからだ。そのコミュニティが新たなコネクションとなりビジネスを起したりする事が可能となる。


非喫煙者のコミュニティには何か(趣味・趣向)を挟む事が少ない。唯一の成功例はペットだが、商用ペットは殺処分の増加原因になり、道徳的問題が顕在化した。


零細企業群は一度、潰れてしまえば、同法を廃止・再改正したとしても、再興隆は難しい。雇用も大きく失われる同法改正は、健康と引き換えに経済の根本(生活)を失う事になりかねない。


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