『日米豪印 首脳共同声明』全文

【政治報道】 日米豪印の四ヶ国は令和三年九月二十四日に『日米豪印 首脳共同声明』を発出した。


 我々、豪州・インド・日本及び米国の首脳は、本日対面では初めて「日米豪印」として集まった。我々は、この歴史的な機会に我々のパートナシップ及び我々の共通の安全と繁栄の礎である地域、即ち、包摂的で強靱でもある自由で開かれたインド太平洋に改めてコミットする。

前回の首脳会合から六ヶ月が経過した。三月以降、新型コロナウイルス感染症パンデミックは継続的な地球規模の困難を齎し、気候危機は加速し、地域の安全は今まで以上に複雑化し、我々の国全てを個々にも全体としても試している。然しながら、我々の協力は引続き揺らぐ事はない。



 日米豪印首脳会合の場は、我々自身及び世界が、インド太平洋及び我々が実現を希望するものの為のビジョンに改めて焦点を合わせる為の機会である。我々は共に、インド太平洋及びそれを越える地域において安全及び繁栄を強化する為、国際法に根差し、威圧に怯まず、自由で開かれ、ルールに基づく秩序を推進する事に改めてコミットする。

我々は法の支配、航行及び上空飛行の自由、紛争の平和的解決、民主的価値、そして国家の領土的一体性を支持する。我々は共に、そして様々なパートナと協力する事にコミットする。我々はASEANの一体性と中心性、そして「インド太平洋に関するASEANアウトルック」への強い支持を再確認し、インド太平洋地域の中心であるASEAN及びASEAN諸国と実践的且つ包摂的な方法で協力する事に力を尽くす意思を強調する。

我々は、また二〇二一年九月のEUのインド太平洋における協力の為の戦略を歓迎する。



 第一回の首脳会合以降、我々は新型コロナウイルス感染症パンデミック、気候危機、重要・新興技術という世界で最も差し迫った課題の幾つかに取組む中で、顕著な進展を実現した。



 新型コロナウイルス感染症対応と救援における我々のパートナシップは、日米豪印にとって歴史的且つ新たな焦点である。我々は、インド太平洋の健康安全保障と新型コロナウイルス感染症対応を支援する為に強固な関係を築き、及び各国の計画を連携させる事を任務とする各国政府の優秀な専門家からなる「日米豪印ワクチン専門家作業部会」を立上げた。

その中で我々は、パンデミックの状況の評価を共有し、パンデミックと闘う取組みを連携させ、地域において新型コロナウイルス感染症の影響を軽減する為の共通の外交原則を強化し、COVAXファシリティを含む多国間での取組みと緊密に連携しつつ、安全で、有効で、品質が保証されたワクチンの生産と公平なアクセスを支援する我々の取組みの連携を積極的に向上させてきた。

豪州・インド・日本・米国は、全世界で公平なワクチンへのアクセスを確保する為に、COVAXを通じて資金供与されたワクチンに加えて、十二億回分を超える安全で有効なCOVID-19ワクチンの供与をプレッジした。

また現在までに我々は、これらのコミットメントの一部として、約七千九百万回分の安全で有効で品質が保証されたワクチンをインド太平洋の国々に対して配送してきた。



 日米豪印によるワクチン・パートナシップによるバイオロジカルE社の生産能力の拡大に対する融資により、インドにおける追加的な生産が本年中に開始される。我々は、三月の発表に沿って継続する国際的なワクチン供給格差を認識しつつ、このワクチン生産の拡大がインド太平洋及び世界に対して輸出される事を確保し、安全性・有効性・品質が保証された新型コロナウイルス感染症ワクチンを低中所得国の為に調達すべく、我々はCOVAXファシリティの様な主要な多国間枠組みと連携する。

我々はまた、ワクチン生産の為、開放的で安全なサプライチェーンの重要性を認識する。



 地域及び世界中での何ヶ月にも亘るパンデミックの苦難にも関わらず、我々はこれまで多くの進展を成し遂げてきた。日米豪印のリーダは、日米豪印による投資を含め、バイオロジカルE社が二〇二二年末までに少なくとも十億回分の安全で有効な新型コロナウイルス感染症ワクチンを生産する事を歓迎する。我々は今日、その供給に向けた最初の一歩を発表し、インド太平洋と世界がパンデミックを終わらせるのを直ちに支援する。

また日米豪印は、COVAX向けのものを含め、安全で効果的なCOVID-19ワクチンの輸出を二〇二一年十月から再開するとのインドの発表を歓迎した。日本は、三十三億米㌦の「新型コロナウイルス感染症 危機対応緊急支援借款」を通じて引続き、地域のパートナのワクチン購入を支援する。豪州は、東南アジアと太平洋諸国向けのワクチンを購入する為、二億一千二百万米㌦の無償援助を供与する。

更に、豪州は「ラストワンマイル」のワクチンの展開を支援する為に二億一千九百万米㌦を割当て、これらの地域での日米豪印の「ラストワンマイル」のワクチン配送支援の調整を主導する。



 我々はまた、このパンデミックの終結とより良い健康安全保障の構築に向けた取組みを加速する為、臨床試験及びゲノム・サーベイランスにおける科学技術協力も強化する。我々は、世界におけるワクチン接種を支援し、目の前の命を救い、地球規模の健康安全保障に係る資金調達と政治的リーダシップの強化を含めてより良い回復を実現するとの共通の地球規模の目標に向かって、一丸となる事にコミットする。

我々はまた、パンデミックへの備えについての図上演習を二〇二二年に共同で実施する。



 我々は必要とされる緊急性を以て対応されねばならない気候危機に対処すべく力を合わせてきた。日米豪印各国は「パリ協定」に沿った気温の制限を射程に入れ続ける為に協働し、気温上昇を産業革命以前の水準から一.五度に抑える為の努力を追求する。

この目標の為に、日米豪印各国はCOP26までに野心的な「国が決定する貢献」を更新又は通報する事を意図し、既にこれを行った国を歓迎する。日米豪印は、またインド太平洋地域における重要なステークホルダへの働きかけを含め、国際的な野心を高める為に各国の外交を連携させる。

我々の取組みは、望ましくは二〇五〇年までに国際的なネット・ゼロ排出を達成するとの目標に貢献し、各国の状況を考慮しつつ、二〇二〇年代の間に強化された行動を追求するとの目的の下、気候野心、クリーン・エネルギのイノベーション及び展開、そして気候変動に対する適応・強靭性・準備という三つのテーマ分野に整理されている。

我々は、海運及び港湾運営の脱炭素化を目指す取組みやクリーンな水素技術の普及を含め、各国にとって適切な部門毎の脱炭素化の取組みを追求している。我々は責任ある強靭なクリーン・エネルギのサプライチェーンを確立し、災害に強靱なインフラの為のコアリションや気候情報システムを強化する為に協力していく。

日米豪印は、今必要とされる気候野心とイノベーションの水準の維持に繋がるCOP26及びG20における成功の為に協働する。



 我々は技術の設計、開発、ガバナンス及び利用に関する方法が、我々が共有する価値と普遍的人権の尊重によって形成される様、重要・新興技術における協力を確立した。我々は、産業界と協力し、安全で、開放的で、透明性のある5G及びビヨンド5G通信網の展開を進めると共に、技術革新を促進し、信頼できるベンダやオープンRANの様なアプローチを促進する為、幅広いパートナと協力している。

我々は、5G多様化を可能にする環境を促進するに当たっての政府の役割を認識しつつ、官民協力を促進し、開放的な標準に基づく技術の拡張性やサイバセキュリティを二〇二二年に実証する為に協力する。

技術標準の発展に関しては我々は、開放的で、包摂的で、民間主導で、マルチステークホルダによるコンセンサスに基づくアプローチを促進する為、特定セクタに関するコンタクトグループを設立する。

また我々は、国際電気通信連合等の国際標準化機関において連携及び協力する。我々は、半導体を含む重要技術及び物資のサプライチェーンをマッピングしており、透明性があり、市場志向の政府支援措置及び政策の重要性を認識しつつ、重要技術に係る強靱で、多様性があり、安全なサプライチェーンへの前向きなコミットメントを確認する。

我々はバイオ技術に始まり、未来の重要・新興技術の動向のモニタリングを実施しており、関連する協力の機会の特定を進めている。また我々は地域だけでなく、世界を責任ある、開放的で、高い水準の技術革新へと導く事を期待して、本日、技術の設計、開発、ガバナンス及び利用に関する日米豪印原則を発出する。



 今後、我々はこれらの重要な分野における我々の協力を深化させていくのみならず、我々はこれを新しいものに広げていく。地域における我々各自の、そして共同でのインフラストラクチャ(インフラ)に関する取組みを踏まえ、我々は新しい「日米豪印インフラ・パートナシップ」を立上げる。日米豪印として、我々は取組みを協調させ、地域のインフラに関する需要を把握し、地域の需要と機会に関して連携する為、定期的に会合を行う。

我々は、協力して技術的な支援を提供し、評価的な手段により地域のパートナの能力を強化し、持続可能なインフラ開発を推進する。我々はG7によるインフラに関する取組みを支持し、欧州連合(EU)を含め、志を同じくするパートナとの協力を楽しみにしている。我々は「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を再確認し、インド太平洋地域においてハイスタンダードなインフラを提供する我々の取組みを再活性化する。

我々はブルー・ドット・ネットワークへの継続的な関与にかかる我々の関心を再確認する。我々は債務持続可能性と説明責任を含め、国際的なルール及び基準に沿った、開かれ、公正で、透明な貸付慣行を主要な債権国が支持する重要性を強調すると共に、全ての債権者に対してこれらのル ール及び基準を遵守する事を求める。



 本日、我々はサイバ空間における新たな協力を開始し、サイバ上の脅威と戦い、強靱性を推進し、我々の重要インフラを保全する為の協働を誓う。宇宙分野では我々は、新たな協力の機会を特定し、気候変動の監視、災害対応、防災、海洋や海洋資源の持続的な利用、共通の領域における課題への対応等の平和的目的の為に衛星データを共有する。

我々はまた、宇宙空間の持続的な利用を確保する為のルール、規範、ガイドライン及び原則について協議する。



 我々は「日米豪印フェローシップ」を創設する事により、教育及び人的交流に係る協力の新たな協力に乗り出す事を誇りに思う。社会貢献イニシアティブであるシュミット・フューチャーズが管理をし、アクセンチュア、ブラックストーン、ボーイング、グーグル、マスターカード及びウェスタンデジタルからの寛大な支援を受け、我々のパイロット・フェローシップ・プログラムは我々四ヶ国の科学、技術、工学及び数学の分野における優れた大学院生百名に対して奨学金を支給する。

我々は、日米豪印フェローシップを通じて、我々の共通の未来を形作る技術革新に向けて、STEM技能を有する次世代の為に、日米豪印及び志を同じくする他のパートナを牽引する準備を整える。



 南アジアでは我々は、アフガニスタンに対する外交、経済及び人権政策を緊密に調整し、国連安保理決議第二千五百九十三号に従って、今後数ヶ月に亘り、テロ対策及び人道分野での協力を深化させていく。

我々は、アフガニスタンの領域が如何なる国への脅迫若しくは攻撃、テロリストの避難若しくは訓練、又はテロ行為の計画若しくは財政的支援に使用されるべきでない事を再確認し、アフガニスタンにおいてテロと戦っていく事の重要性を繰り返し表明する。

我々は、テロリストの代理の利用を非難し、国境を越えたものを含む、テロ攻撃を開始又は計画する為に使用され得る如何なる後方上、財政上、軍事上のテロリスト団体への支援を否定する事の重要性を強調する。

我々は、アフガニスタン人に対する支援で結束すると共に、アフガニ スタンからの出国を希望する全ての人々への安全な通行の提供と女性、児童及び少数派を含む全てのアフガニスタン人の人権尊重の確保をタリバーンに求める。



 また我々は、我々の共通の未来がインド太平洋地域に記されていく事を認識し、日米豪印が地域の平和、安定、安全及び繁栄の為の力である事を確実にする為の取組みを倍加する。この目的に向けて我々は引続き、東シナ海及び南シナ海におけるものを含む、ルールに基づく海洋秩序に対する挑戦に対抗する為、国際法(特に国連海洋法条約に反映されたもの)の遵守を擁護する。

我々は、経済的及び環境的な強靭性を向上させる為の、特に大洋州における小島嶼国への支援を再確認する。我々は、新型コロナウイルス感染症による健康及び経済への影響に対する太平洋島嶼国の対応に対する質の高い持続可能なインフラに関する支援並びに、大洋州に特に深刻な課題を齎す気候変動の影響の緩和及び適応の為の連携を継続する。



 我々は、国連安保理決議に従った北朝鮮の完全な非核化へのコミットメントを再確認し、また日本人拉致問題の即時の解決の必要性を確認する。我々は、北朝鮮に対し、国連の義務に従い、挑発行為を控えると共に、実質的な対話に関与する様求める。

我々は、インド太平洋及びそれを越える地域において、民主的な強靱性の構築にコミットする。我々は、ミャンマーにおける暴力の停止、外国人を含む全ての政治犯の解放、建設的な対話への関与、及び民主主義の早期回復を引続き求める。

我々は更に、ASEANの五つのコンセンサスの早急な実施を求める。我々は、共有された優先事項の強化により、多国間体制そのものの強靱性を向上させる、国際連合を含む多国間システムでの協力を深化させる。個別に、及び共同して我々は、この地域が包摂的で、開かれ、且つ普遍的なルール及び規範で統治される事を確保しつつ、今日の課題に対応していく。



 我々は、協力する習慣を引続き積み上げていく。我々の首脳及び外相は毎年会合を開催し、高級実務者は定期的に会合を開催する。我々の作業部会は、より強固な地域を構築する上で必要となる協力を生み出す為に引続き、その着実な取組みのテンポを継続する。



 我々全てにとって試練を齎すこの時代にあって、自由で開かれたインド太平洋の実現に対する我々のコミットメントは堅固であり、このパートナシップに向けた我々のビジョンは、野心的で遠大であり続ける。我々は揺るがない協力により、この時に立ち向かうべく共に立ち上がる。


写真・仮約:総理大臣官邸

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