西・マドリッド コレクションがもつ服の絶対性、それは

【高級ファッション考察】 平成二十九年二月に西・マドリッドにて、メルセデス・ベンツが冠スポンサの『ファッション・ウィーク二〇一七-一八秋冬』が開催された。情熱の国スペインは、各国のコレクションの中でもハイムとして注目度が高い。何故ならば、ファッションに情熱が入っているからだ。マドリッドのデザイナは他国のそれとは異なる。


今回は八ブランドをピックアップした。先ずはバルセロナの至宝と呼ばれる「アンドレ・サルダ(写真上)」。昭和三十六年にランジェリ ブランドとして立ち上がった。来季のテーマは革命。十八世紀末期から始まったフランス革命を背景に、今も続くスペイン・ブルボン朝(現国王:フェリペ六世)を召使いや侍従、兵士や姫達を象った。正に現代貴族。


黒系でインパクトが強かったブランドは二つ。「MALNE(写真上)」と「マヤ・ハンセン(写真下)」。前者は一九七〇年代から。ユニークさと贅沢さを表現した。胸元は品性を損なわない程度に切り込み、その分で背中をしっかりとレース等で色香を放った。ゼブラ遣いも上手かった。


後者は非常にサディスティックな黒だ。明るい色のルックもあるが、全体的に近未来性を伝統性で包含した様なコレクション。画的な要素としての色を放棄したという。併せて描写としての価値の線も放棄した。ロシアの芸術家であるナウム・ガボとアントワーヌ・ペヴスナーにインスピレーションを受けたコレクションとなった。



サイバー感が強いブランドを二つ。「クスト・バルセロナ(写真上)」と「エスター・ノリエガ(写真下)」。前者のコレクションは光りの組み合わせで個性を強調してきた。モデルは全員がサングラスを掛けている。サイバー的な光りに野生感を織り交ぜている点がポイントだろう。


後者は全ルックがPOP的ながらも大人シックな印象を与える。インスパイア素はワイン職人の技だ。米サンガワインのスパークリング ワインの製法技術がそれだ。遊び心が強く、夜のパーティを彷彿させてくる。


次にシックでモダンな技ありブランド。七十代のデザイナ「ロベルト・ベリーノ(写真上)」と「アイラント(写真下)」。前者はフランス南東部の地中海沿岸の都市カンヌの太陽と星をテーマにした。非常に王道的で品性の高いコレクションであるが、時代の先端を掴んでいる。インスピレーション素は、英米合作の映画「悲しみよこんにちは(一九五八)/コロンビア映画」だ。そして八〇年代の空気感を意識した。


後者は兄弟デザイナによるコレクション。ブランド創設は七年。ルックはゆとりある優雅なフォルムの中にエレガンスや愛らしさ、大胆さを内包させてきた。その独特な柄は落ち着きある高貴さを与えてくれる。秋冬らしい温もりも厳かに表現している。



最後に紹介するのは来季、一番マドリッドらしい「ハンニバル・ラグーナ」。コレクション全てのルックを途方もなく美しいドレスで攻めた。正に絢爛。鋭くも重厚な、そして軽やかなデザインに独特の生地感と光沢・反射。かといって行き過ぎておらず、どの様なシーンでも一目置かれる事が間違いないドレス群だ。じわりと来る奥底に宿す情熱に雅を纏った。


マドリッド。服に欠かせない絶対的な“一度は着てみたい”を多数のデザイナが打ち出してくれる。幾ランクも上の服を提示する力が世界のトップデザイナであろう。東京コレクションには、その絶対的なものを出せるブランドが少ない。熱きデザイナが勝負するステージ、西マドリッド コレクションは参考になる。


画像引用:Mercedes-Benz Fashion Week MADRID

記事:金剛正臣

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