日本の財政が“会計学的”に大丈夫な理由

【財政考察】 令和三年の『衆院選』では、殆どの国政政党が財政出動を街頭にて訴えている。しかし、十月二十五日に東京で演説した維新・松井一郎(甲辰)代表は「赤字国債は発行しない方が良い。」と財政緊縮論を訴えた。

日本の財政は大丈夫なのか。


二十四日に「獨協大」経済学部・森永卓郎(丁酉)教授は、記事「無借金のいまこそ財政出動/スポーツ報知」を寄稿。「日本の財政は、主要国の中で最も健全な状態なのだ。」と財政に問題が無い点を主張した。それはどういった事なのか。


先ず、教授は「国の財務書類/財務省」から日本政府の負債を連結ベースで「一千五百四十六兆円(二年三月末時点)」と記す。政府にも貸借対照表(BS)があるので、次は当然に資産だ。日本政府の資産は「一千二十三兆円」。この資産額は、米中を抜いて世界最大。主に金融資産が豊かである。




<BSを用いた簡単な数式>

 負債と資産が分かれば、差し引けば良い。

政府負債「一千五百四十六兆円」-政府資産「一千二十三兆円」
=五百二十三兆円


この純負債五百二十三兆円」を教授は「GDPと同程度の資産負債差額というのは、先進国としては極普通の借金の水準だ。」と説明する。二年度のGDPは五百三十七兆円だった。


続いて国債に焦点を当てる。日本政府の子会社・日銀が保有する国債は「四百八十六兆円(二年三月末時点)」。この日銀の保有国債について教授は「事実上、元本返済の必要が無い。」と、企業の連結決算の様に親会社が子会社から借金した分は相殺される点を強調。


最後に相殺される日銀国債分を純負債から差し引く。

政府純負債「五百二十三兆円」-日銀国債「四百八十六兆円」
=三十七兆円


この『三十七兆円』が日本政府の正味負債となる。二年度のGDPの内、正味負債は六.九㌫に過ぎない。さて、日本政府は七㌫程度の借金で倒産するだろうか。



いつからおかしくなったか

 更に教授はインフレ率についても言及。昨年に安倍内閣が、限界突破した百九十兆円の国家予算を以てしてもインフレ率はまるで反応しなかった。インフレ率は二㌫から三㌫に上げたいが、経済学的にまだまだ財政出動が足らない事になる。


では、何故に国家破綻論や財政緊縮論が蔓延していたのか。報道府が以前が指摘していた様に、法学部出身の財務官僚達と国民に簿記の知識が無かった。貸借関係さえ分かれば、政府の借金が国民の借金になる訳が無い。財務省が国民を騙していたと言っても過言ではない。


そもそも財務省は大蔵省だった。大蔵省を米国に同じ財務省に変えた理由は何なのか。当時、今の中国の様に勢いがあった日本を腰折れさせる為に、奈良時代「大宝律令」から十三世紀の歴史がある大蔵省から金融行政(現・金融庁)を分離させ、平成十三年の森内閣にて財務省へと改称。以降、日本ではなく、米国を向いた財務官僚達の「国民一人当たり借金論」により財政緊縮。平成不況が第二次安倍内閣まで続いた。


財務省に改称させられる少し前の平成六年には、中選挙区制から悪しき「小選挙区 比例代表並立制」が導入され、政治家及び衆院選の低質化を図り、今に至る。あくまでも日本を成長させない様に仕組まれた。財政緊縮論の経済評論家達には、何がしかの金銭的なメリットがあるのだろう。




<問題は国の借金ではなく、医療費>

 森永教授の一般的な会計学の計算の通り、日本政府の正味負債は大した事がない。買収されたに等しい者達は、国民に簿記の知識が無い事をいい事に国家破綻論を吹聴。しかし、知識を身に付けた国民達は国家破綻論者を論破し続けている。


そして未だに、「日本の借金」と日本政府の負債を国民が返済しなければならないかの様に吹聴している。冒頭の松井代表も同じだ。彼もまた簿記・会計の基本的な知識が無いのだろう。子ども達が負担を強いられるのは政府の負債ではなく、「医療費/社会保障関係費」が正しい。万一、国民が納税を以て政府の負債を返済するとしても、その額はたかだか三十七兆円。政府の税収は六十兆円前後で推移しているので、何ら問題が無い額だろう。


問題があるのは、現行の年金制度と毎年膨らみ続ける医療費の方だ。消費増税分の五㌫も、医療費を賄う為に消費増税分を当て、国債発行を抑えてしまっている。だから若者・若手が辛い(参考:世代会計)。



若者・若手は知識武装で勝つ

 一番の問題は、国民の代表である国会議員達が簿記・会計に無知な点。これは地方行政にも言える事であるが、政府の会計が分からない(読めない、分析できない)のに何の政治ができるのだろうか。少なくとも党首と首長は、簿記・会計及び経済学を分からなければならない。その知識が無いならば、政府(地方政府を含む)のトップに立つ資格が無いに等しい。


詰まる所、現在の日本政府の懐に問題は何も無い。増税して国債発行を抑えている慣習を止めなければいけない。国家予算・年二百兆円の財政拡張すれば、減税さえもできる。但し、現在の米国は金利を上げ始めている為、円安に振れている。この為替の点は、注視しなければならないだろう。


記事:金剛正臣

画像:FPhime、情弱向け統合政府のバランスシート/Prof.Nemuro、税収に関する資料/財務省

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