国際協調進展の通信簿でAは一つも無し、世界のシンクタンクは危機感

【社会報道】 平成二十九年五月七日から九日に米・ワシントンD.C.にて、米・外交問題評議会(CFR)がシンクタンクの国際ネットワーク「カウンシル・オブ・カウンシルズ(CoC)」の第六回年次総会が開催された。世界二十五ヶ国から二十六団体のシンクタンクが参加し、日本からは言論NPOの工藤泰志代表と客員研究員の内野逸勢(大和総研 経済環境調査部長)出席した。


年次総会では、「グローバルな貿易体制」「EUの今後」「北朝鮮の核・ミサイル」「サイバー空間」「中東安定化」の五つグローバルイシューを議題に取上げ、それぞれセッションを行った。セッション「グローバルな貿易体制」で、各国政府の自由貿易に対する国内的な支持をどの様に取戻すべきか、につき話し合った。工藤代表は貿易調整支援強化(TAA)の必要性を指摘。これは、輸入増の影響を受けた国内企業と雇用者を支援し、新たな産業構造への適応を促進する事を目的とする。


また米・トランプ政権について、「アメリカが保護主義政策を採るのは何も今回に限った事ではないが、それでもこれ迄の大統領はリベラルな経済システムや多国間主義に基づく国際協力の枠組み自体は尊重していた。然し、トランプ大統領は多国間主義に基づく国際協調に疑念を抱いている。その事を世界のシンクタンクは懸念すべき局面なのではないか。」と主張した。



 セッション「北朝鮮の核・ミサイル」で工藤代表は、「北朝鮮問題は、核をミサイルに搭載しようとしている点で、今までの中東での核問題とは全く異なる。」と、緊張が高まっている事の認識の上で、「北朝鮮問題ではこれまで誰もリーダーシップを取ってこなかった中、トランプ大統領の行動はある程度評価できる。これを機会に一気に実効性のある、経済制裁に向かうべきだ。」と主張した。これ迄の国連制裁だけでなく、中国の石油禁輸等の取組みに期待し、ロシアの役割の重要性も伝えた。北朝鮮問題の解決は、制裁の枠組みを強化できるか、とした。


そしてG7首脳会議(タオルミーナ サミット)を直前に、CoCは本年度版のレポートカード(国際協調進展の通信簿)を発表した。同レポートカードは、世界が直面する十課題につき、加盟シンクタンクのトップが一月に個別に行った評価結果を集計したもので、三回目の発表。今回のポイントは、国際協調の「総合評価」が昨年のBから、Dを上回るC-へと評価を大きく下げた事だ。A評価は一つも無かった。特に「国際貿易の拡大」「国際的暴力紛争の防止と対策」は、D+と低い評価になり、シンクタンクのトップ達が危機感を顕わにした。


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