【ビジネス報道】 平成二十九年八月一日にNPO法人POSSEの代表でブラック企業対策プロジェクト共同代表でもある今野晴貴(癸亥)が記事『「高度プロ」の陰に隠れた「本当のリスク」 年収制限なし、労基署も手が出せない、「裁量労働制」の拡大』を執筆した。当該記事では、第一八九常会の閣法六九号の『労基法改正案』の争点をマスコミ報道がミスリードと指摘。
争点は「高度プロフェッショナル制度」よりも「裁量労働制の拡大」と断じ、その理由を適用対象者の数の違いを挙げた。後者には年収要件がなく、労働基準監督署の勧告や裁判での判例で使用人は対処できない点を伝えている。
後者を指す改正案の条文は以下の通り。今迄は企画立案等の限定業務であったが、ロとハを新たに「裁量労働制」に組込む。
第三十八条の四第一項第一号中「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析」を「次に掲げるいずれか」に、「ゆだねる」を「委ねる」に改め、同号に次のように加える。
イ 事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務(ロに掲げる業務を除く。)
ロ 事業の運営に関する事項について繰り返し、企画、立案、調査及び分析を行い、かつ、これらの成果を活用し、当該事項の実施を管理するとともにその実施状況の評価を行う業務
ハ 法人である顧客の事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析を行い、かつ、これらの成果を活用した商品の販売又は役務の提供に係る当該顧客との契約の締結の勧誘又は締結を行う業務
また前者を指す条文は以下の通り。括弧内及び但し書きは省略。委員会を設置し五分の四以上が賛成する事を要件としている。
第四十一条の見出しを削り、同条の前に見出しとして「(労働時間等に関する規定の適用除外)」を付し、第四章中同条の次に次の一条を加える。
第四十一条の二 賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会が設置された事業場において、当該委員会がその委員の五分の四以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者であつて書面その他の厚生労働省令で定める方法によりその同意を得たものを当該事業場における第一号に掲げる業務に就かせたときは、この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない。
一 高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務
二 この項の規定により労働する期間において次のいずれにも該当する労働者であつて、対象業務に就かせようとするものの範囲
イ 使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められていること。
ロ 労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること。
三 対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間と事業場外において労働した時間との合計の時間を把握する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
四 対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずること。
イ 労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、第三十七条第四項に規定する時刻の間において労働させる回数を一箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。
ロ 健康管理時間を一箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。
ハ 一年間を通じ百四日以上、かつ、四週間を通じ四日以上の休日を確保すること。
五 対象業務に従事する対象労働者の健康管理時間の状況に応じた当該対象労働者の健康及び福祉を確保するための措置であつて、当該対象労働者に対する有給休暇の付与、健康診断の実施その他の厚生労働省令で定めるものを当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
六 対象業務に従事する対象労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
七 使用者は、この項の規定による同意をしなかつた対象労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。
八 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
前項の規定による届出をした使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、同項第四号及び第五号に規定する措置の実施状況を行政官庁に報告しなければならない。
本改正案の提出理由は長時間労働の抑制、労働者の健康の確保と創造的な能力を発揮しながら効率的に働く事ができる環境の整備。政府は今秋の臨時会で本法案を修正し再提出する意向を示していた。二十八日には塩崎恭久(庚寅)厚労大臣が記者会見で一括審議の考えを伝えた。一括審議には本法案や労働契約法等の改正案を一つにする『働き方改革関連法案』になる見込み。
内閣改造後、民進・新代表選出後の最初の社会に多大な影響を与える法案だけに、使用者と使用人は注視されたい。国会内の紛糾は必至である。
記事:羽田野正法
0コメント