【芸能報道】 映画「CURE(一九九七年)/松竹富士」等を手掛けた黒沢清(乙未)が、自身二十一作目となる映画『散歩する侵略者/日活』を監督した。本作は第七十回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門へ正式出品した。世界二十一ヶ国での公開も決定している。コピーは「世界は終わるのかもしれない。それでも、一緒に生きたい。」と和製の新たなエンターテイメントと予感させる。
公開は九月九日。
劇作家・前川知大(甲寅)が率いる劇団イキウメの舞台「散歩する侵略者」を映画化した作品だ。黒沢自身が舞台を観て感銘を受け、映画化を望んだ。出演は長澤まさみ(丁卯)、松田龍平(癸亥)、前田敦子(辛未)、児嶋一哉(壬子)、東出昌大(戊辰)、小泉今日子(丙午)、笹野高史(戊子)と長谷川博己(丁巳)と興味深い。数日間の行方不明の後、夫が「侵略者」に乗っ取られて帰ってくるという大胆なアイディアだ。サスペンス、アクションそして究極のラブストーリとなっている。
主人公・加瀬鳴海役には、まさみ。夫に起こった「異変」に気づき、翻弄されながらも状況に立ち向かう妻という難役。夫の加瀬真治役には松田。侵略者に乗っ取られた男という前代未聞の役柄を、絶妙なリアリティで演じる。町で発生する一家惨殺事件を追うジャーナリスト・桜井役が長谷川。今度はジャーナリストだ。他にも二人の「侵略者」がいる。
演者及び監督は以下の様にコメントした。
(まさみ)普遍的な日常の中で、気づかない内に静かに何かが動き出している、という様な現実味のあるフィクションが好きなので、脚本はのめり込んで一気に読みました。黒沢監督は、細かく丁寧にお芝居をつけて下さるのですが、怒ってばかりの役だったので、良い意味で、こんなに大変で辛い現場は久し振りだなと思いました。毎日ふらふらになりました。
(松田)黒沢清監督と初めてご一緒できる事も嬉しかったですが、監督にヒントを貰いながら、役を埋めていきました。「侵略者」がやってくる、というシンプルでわかりやすい話なのに、いろんな視点で楽しむ事ができるのが、この作品の魅力だと思います。鳴海と真治という壊れかけた夫婦の関係性、真治が鳴海の心を取り戻していく話でもありますし、一方で「侵略」のあり方を描いていく話でもある。
(長谷川)黒沢清監督作品に出演できた事をとても嬉しく思います。「侵略者」と行動を共にしていくジャーナリスト桜井役です。黒沢監督の作品は多く拝見していますが、撮影前に「(監督の)今までの作品の事は全て忘れて下さい」と仰っておられました。何か新しいことに挑戦されようとする監督の意思に心躍りました。
(黒沢監督)イキウメの舞台では、決まって世界は二重三重にかさなり合っている。その絶妙な配置をどうやって映画化するか、最初それは至難のワザに思えた。映画としては「宇宙人侵略もの」という、アメリカ映画には一つのテーマとなっているスタイルがあります。ただ、その定番のスタイルをこの映画の中でどこまでやるのか、それから外すのか、っていうバランスを見つけるのに結構苦労して何度も脚本を書き直しました。僕のこれまでの作品に比べると、格段にセリフの量が多いと思います。あるシーンの中での俳優同士のセリフの掛け合いとかですね、そういったものをこの作品では重視しました。
アメリカの本格侵略作品ですと、侵略している瞬間が最大の見せ場、特殊効果も振るわして人類が襲われる様が描かれていますが、それとは全然違うやり方で、侵略の瞬間を描こうと思いました。考えていくと、元々の人間の本質に関わる、凄く興味深く、自由に表現できるアイデアだと思いますね。
=ストーリー=
数日間の行方不明の後、不仲だった夫が、まるで別人のようになって帰ってきた。なぜか穏やかで優しくなった夫に、戸惑う加瀬鳴海(長澤まさみ)。夫・加瀬真治(松田龍平)は、何事もなかったように毎日散歩に出かけていく。
同じ頃、町では一家惨殺事件が発生。奇妙な現象が頻発する。ジャーナリストの桜井(長谷川博己)は取材中、天野(高杉真宙)という謎の若者に出会い、2人は一家惨殺事件のカギを握る女子高生・立花あきら(恒松祐里)の行方を探し始める。
あきらを見つけた桜井は、そこで天野とあきらがある男と会話をする中で起こった「異変」を目撃する。天野は、自分たちは侵略者で、人間の「概念」の調査をしている。自分たちがその「概念」を学習すると相手からそれが抜け落ちる、という。
半信半疑ながらも彼らに興味を持った桜井は、もう一人の「仲間」を探すという彼らに密着取材を申し入れる。
一方、真治は、毎日ぶらぶらと散歩をするばかり。散歩中にいったい何をしているのか…? 問いつめる鳴海に、真治は衝撃の告白をする―「地球を侵略しにきた」と。 鳴海は戸惑いながらも、いつしか真治を再び愛し始めていた。
町は急速に不穏な世界へと姿を変え、事態は誰も止めることができない方向へと加速し始める。
混乱に巻き込まれていく桜井がたどり着く選択とは?
そして、鳴海と真治が向かう先にある結末とは?
画像提供:日活㈱
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