最終;皇位継承まとめ|「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議

【日本考察】 『安定的な皇位継承の在り方を検討する有識者会議(座長:清家篤)』は、令和三年十二月二十二日に岸田総理(丁酉)へ三月からの議論をまとめた報告書を手渡した。本会議の正式名称は、『「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議』。


報告書は既報「待望の『“旧宮家”の皇籍復帰』案|皇室有識者会議」の通り。


報告書を受け取った岸田総理は「政府と致しましては、頂いた報告書を国会に報告すると共に、しっかりと今後の対応を行って参りたいと考えております。」と、有識者会議へ感謝の意を表した。


皇位継承に係る問題は、平成十七年の小泉内閣より本格的に論じられてきた。当時は「皇室典範に関する有識者会議」。あくまでも行政府ではなく、主権者・国民が自ら議論を重ねる点がポイント。結果、同二十七年「皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理」までまとめ、今回の報告案に至る。実に十六年も経過している。




<知識高い国民の答えは既に決している>

 今回の報告に先立ち、「国際派日本人養成講座」伊勢雅臣(癸巳)編集長は、電子書籍「日本人として知っておきたい皇位継承問題の真実/ダイレクト出版」を刊行。二千六百年以上も続く日本の皇室には、皇位継承の危機が三回あった。その時、如何様に乗り越えてきたのか。「議論をするのは自由だが、その際には皇位継承の歴史事実を十分踏まえる必要がある。」と過去の参照を訴え、三回の事例を挙げた。


三帝「継体天皇」「後花園天皇(己亥)」「光格天皇(辛卯)」の先例は、以下の二つ。

  1. 相当な遠縁から男系男子を猶子(親族からの養子)として迎え入れる
  2. 場合によっては、先帝陛下の皇女や姉妹を皇后とする


二種類の「女性天皇」についても触れている。あくまでも「男系男子の皇統を守る為の智慧であった。」と断ずる。



歴史を鑑みた打開策

 過去を整理すると、皇位継承の危機の際には次の三つの方法を採用した。


  1. 猶子;(直系の男系男子が不在の場合)例え皇女がいても、遠縁の男系男子を猶子として皇位継承=三事例とも継承成功
  2. 中継ぎ女性天皇;後継の皇子が幼少、又は有力候補が複数。直ぐに決められない場合の女性天皇による中継ぎ=七事例とも継承成功
  3. 本格的女性天皇;皇女が本格的な女性天皇として即位=一事例のみ。皇統最悪(天皇家断絶)の危機


今回の有識者会議の報告では、一の「猶子」を提案した。もう一案は、女性皇族が結婚後も皇室に残る案。こちらは平成二十七年の論点整理から提案した。両案とも皇位継承の根本となる皇室・皇族の絶対数を増やす案となる。




<主権者・国民の提案を全否定の立憲>

 この有識者会議の報告に異議を唱えたのが、立憲民主党(代表:泉健太)。同日に立憲バブル世代・西村智奈美(丁未)幹事長がコメントを発表。以下が全文。


本日、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議が政府に提出する報告書を取りまとめましたが、その内容は皇室典範特例法議決時の両院の附帯決議が求める内容には全くなっていません。


附帯決議の主たる要請は、安定的な皇位継承を確保するための課題の検討ですが、有識者会議は皇族数減少等に係る課題に論点をすり替えました。本来、議論すべき女性天皇を含めた将来的な皇位継承のあり方、女性宮家の創設等については結論も方向性も示さず、安定的な皇位継承という先延ばしできない課題を先延ばしています。


附帯決議では、国会は「安定的な皇位継承を確保するための方策について、『立法府の総意』が取りまとめられるよう検討を行うものとすること」とされています。


不十分な有識者会議の報告書は国会での議論の土台にすることはできないと考えます。立憲民主党として、改めて附帯決議の本旨に沿った課題解決を検討するため党内に委員会を立ち上げる予定です。そこで本質的な議論を行い、皇位の安定継承の確保のための立法府の総意が取りまとめられるよう、全力で取り組んでいきます。



本来、議論すべき事とは

 智奈美幹事長は、「皇族数減少等に係る課題に論点をすり替えました。」と論点のすり替えを主張。そして「本来、議論すべき女性天皇を含めた将来的な皇位継承のあり方、女性宮家の創設等については…」と、議論すべきは皇位継承や女性宮家の創設等と訴える。


その根拠として、附帯決議を挙げている。これは「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議(平成二十九年六月)」の事。この附帯決議で国会は政府へ以下を求めている。

本法施行後速やかに、皇族方の御事情等を踏まえ、全体として整合性が取れるよう検討を行い、その結果を、速やかに国会に報告する事


附帯決議により議論すべきは、「全体として整合性が取れる様な検討」である。皇位継承や女性宮家の創設等の具体ではない。智奈美幹事長は、上の同附帯決議の前段と混同している。




<皇位継承における三つのパターン>

 実際に平成二十七年の「論点整理」では、以下を検討項目としていた。


  1. 女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する事を可能とする案;(A案)配偶者や子に皇族の身分を付与する案、(B案)配偶者や子に皇族の身分を付与しない案
  2. 女性皇族に皇籍離脱後も皇室の御活動を支援して頂く事を可能とする案


上記は今回の報告案に入った。過去の有識者会議の議論を尊重しており、何も問題が無い。ベストな案は「男系男子で安泰」に違いは無い。ベター案は「男系女子で中継ぎ」となり、ワースト案は「女系天皇」となる。ベスト案を実現するならば、GHQが勝手に皇族から離した旧・宮家を戻し、男系男子を増やす事に他ならない。


立憲はまるで、男系男子を増やす事よりも「女性天皇」、延いては「女系天皇」の擁立を画策している様に見えてしまう。何を急いているのか。



論点のすり替えではなく、飛躍

 有識者会議の清家座長は「悠仁様の次代以降について具体的に議論するには機が熟しておらず、却って皇位継承を不安定化させるとも考えられる。将来、悠仁様のご年齢やご結婚等を巡る状況を踏まえた上で議論を深めていくべきだ。」と述べた。清家座長は、悠仁親王(丙戌)殿下の人権に配慮した。


立憲は順番を間違えている。ゴール在りきではない。先ずはベスト案を実現すべく、男系男子の増加を議論すべきであろう。どうあがいても増加できない場合に、先に主張している男系女子の議論へと移る。過去を振り返れば、未来の日本を大切に思うのであれば、女系天皇はあり得ない。国家転覆を目論む共産主義者のみが、女系天皇を推す事が分かる。


詰まり、立憲は論理が飛躍している。先ずはベスト案を議論するのが王道。いきなりベター案やましてワースト案へ導くは邪道。どの案が、未来の日本にしこりを残さないかを考えるべき。左派野党は短絡的(近視眼的)過ぎる面がある。それは未来の日本人に対して無責任である。「クリティカル シンキング」を学ばれたい。



立憲民主党は我が国最初の憲法「十七条の憲法」第四条を重んじているか

 何よりも有識者会議は主権者の集まりである。智奈美幹事長の先のコメントからは、十六年にも及ぶ議論を壊さない様にしてきたメンバへの感謝・敬意が感じられるだろうか。しかも、智奈美幹事長は今月に就任したばかりである。


以前からも立憲には指摘しているが、五常の内「礼」を非常に欠いている。市井研究家・永﨑孝文(庚寅)の『教養として読んでおきたい「十七条の憲法」/到知出版社』にある様に「礼儀(作法)」と「礼義(礼の正義)」は異なる。

第四条 礼を以て本と為よ(自己を節し、相手を敬する)


立憲には礼義がまるで無い、と感じさせる。本年に努力した主権者の有識者会議を労う訳でもなく、ただ全否定している。あくまでも礼を重んじた後に、反論してブラッシュアップを図るべきだろう。



 有識者会議は、過去の議論及び悠仁親王殿下の人権をも尊重した。立憲への苦言は仁愛である。先ずは、令和版『所得倍増』を掲げた岸田内閣に対抗すべく、真っ当な経済政策を打ち出して欲しい。そして「あそこなら任せられそうだ。」と若き国民達から信用して貰える様に、“奉仕の精神”を見せて欲しい。真っ当な左派に成って欲しい。

今回の様に、主権者を軽んずる事が無き様に。


記事:金剛正臣

† 基本的な用語の説明/総理大臣官邸、皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理/同

画像:皇室の構成/内閣官房、総理大臣官邸、社会実情データ図録皇室に関する法制度/内閣官房、立憲民主党、FPhime

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