日米豪印『首脳共同声明』の成果、クアッド強化

【政治・軍事・経済報道】 岸田文雄(丁酉)内閣総理大臣は、令和四年五月二十四日に総理大臣官邸にてジョセフ・バイデン(壬午)米国統領、アンソニー・アルバニージー(癸卯)豪連邦首相とナレンドラ・モディ(庚寅)印国首相との間で『日米豪印クアッド)首脳会合』を議長として主催し、「日米豪印 首脳共同声明」を発出した。

四ヶ国の対面会合は二回目。



主な成果は以下の三点。

  1. 地域情勢・国際情勢​:ウクライナ情勢がインド太平洋(IP)地域に及ぼす影響を含む地域情勢・国際情勢に関して率直な意見交換を実施。力による一方的な現状変更を如何なる地域においても、取り分けインド太平洋地域で許してはならない事とを確認
  2. 実践的協力の一層の推進​:日米豪印は地域に具体的な利益を齎す点にコミットしており、IP地域諸国が新型コロナ・気候変動・インフラといった様々な喫緊の課題に直面する中で、幅広い分野で実践的協力を更に進め、地域をより強靱なものとする事の重要性で一致
  3. 緊密連携を確認:令和五年に豪州にて、次回『日米豪印首脳会合』を開催する事で一致。首脳間・外相間での定期的な会合の開催を含め、引続き四ヶ国で緊密に連携していく事を確認



 岸田総理は記者会見にて「インフラ分野では、IP地域において今後五年間で五百億㌦(六.三兆円)以上の更なる支援、投資を目指していく事を発表致しました。また、債務問題に直面する諸国の能力強化に取組む事で一致を致しました。」と経済についても触れ、宇宙分野で四ヶ国が保有する衛星情報を地域諸国に提供する取組み「日米豪印 衛星データポータル」を開設する事も伝えた。


前日に米主導で発足したIPEF(インド太平洋経済の枠組み)では、「CPTPPですとかRCEPですとか、従来の経済枠組みと何処が違うのかという御質問ですが、先ず、何と言っても米がIPの経済秩序にも関与する。こうしたコミットメントを示す。この事は大変大きいと思いますし、また印も参加している。RCEPやCPTPP、これには印は参加していない訳ですから、米や印が参加している、これは一つ大きなポイントではないかと思います。」と違いを答えた。


<日米豪印 首脳共同声明>



平和と安定

  1. クアッドは、鳥での悲惨な紛争について懸念を表明し、法の支配や主権及び領土一体性等の諸原則は如何なる地域でも守られなければならない事を確認
  2. 「FOIP」のビジョンが、世界中の様々な地域で共鳴し、ASEANの「IPに関するASEANアウトルック(AOIP)」やEU・欧州諸国のIP戦略等、各地で主体的取組みが進んでいる事を歓迎し、本ビジョンの実現に向け、各国・地域との連携・協力を更に深めていく事で一致。ASEANの一体性・中心性とAOIPの実践的な実施への揺るぎない支持を改めて確認
  3. クアッドは、東シナ海・南シナ海を含めた、ルールに基づく海洋秩序に対する挑戦に対抗する為、特に「連合国 海洋法条約(UNCLOS)」を始めとする国際法、航行及び上空飛行の自由を遵守する事の重要性を確認
  4. クアッドは、係争のある地形の軍事化、海上保安機関の船舶及び「海上民兵」の危険な使用等、現状を変更し、地域の緊張を高めようとする如何なる威圧的、挑発的又は一方的な行動にも強く反対
  5. クアッドは、連合国「安保理決議」に違反し、不安定化を齎す北朝鮮の弾道ミサイル開発を非難し、安保理決議に従った朝鮮半島の完全な非核化へのコミットメントを再確認。また、岸田総理から、拉致問題の即時解決に向けた各国の理解と協力を求め、各国から支持を得た
  6. ミャンマー情勢について、四ヶ国の首脳は、現状への深刻な懸念を表明すると共に、暴力の停止・被拘束者の解放を呼び掛け、人道アクセス・民主的な体制の早期回復の必要性を確認。また、ASEAN主導の取組みに対する支持を再確認。ASEAN議長特使の役割を歓迎し、ASEANの「五つのコンセンサス」の早期実施を呼び掛けた
  7. クアッドは、日米豪印は「善を推進する力」として、地域に具体的な利益を齎す事にコミットしており、IP地域諸国が新型コロナ・気候変動・インフラといった喫緊の課題に直面する中で、実践的協力を更に進め、地域をより強靱なものとする事の重要性で一致



新型コロナと世界健康安保

  1. クアッドは、より良い健康安全保障の構築と保健システムの強化を視野に、新型コロナへの対応の為の国際的な取組みを主導してきており、今後も主導していく
  2. 現在迄に、クアッドは「COVAXファシリティ」の途上国向け枠組みに計五十二億㌦(六千六百億円)の質権を表明。ドナー国政府による質権総額の四割に当たる
  3. 我々は、世界百十五ヶ国以上で二十億㌦(二千五百億円)以上の規模で展開されている「ラスト・マイル支援」を通じ、ワクチン接種を加速。また今週、「世界保健総会」において開催されるクアッド合同のイベントを通じ、ワクチン忌避にも対処していく
  4. 我々は、米国が共催し、日豪印も参加した第二回「新型コロナ・サミット」が、三十二億㌦(四千百億円)の資金と政策的コミットメントを集め、成功した事を歓迎する
  5. 長期的に我々は、財務・保健の連携を促進する事、及び臨床試験・科学技術協力(ゲノム・サーベイランス等)を強化する事を含め、より良い健康安保を構築する為に「グローバルヘルス・アーキテクチャ」及びパンデミックへの予防・備え・対応を強化する
  6. クアッドは、「感染症流行対策イノベーション連合」の次期増資期間に対し、計五.二四億㌦(六百六十億円)をコミットしており、これは公的ドナーによる拠出総額の五割を占める
  7. クアッドは、より良い健康安保の構築及びUHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)の達成に向けた取組みを主導する事を確認



インフラ

  1. クアッドは、IP地域の生産性と繁栄の促進の為に不可欠なインフラ協力を更に深化させるとのコミットメントを確認。IP地域において、今後五年間で五百億㌦以上の更なる支援・投資を目指していく事を発表
  2. また、地域諸国による能力構築支援の活用促進を目的とした「クアッド債務管理リソースポータル」の立上げを含め、債務問題に対処する必要のある国の能力強化に取組む事で一致
  3. 我々は、地域における持続可能で包摂的な成長に貢献する為、「IPに関するASEANアウトルック」を含め、地域の優先事項を反映した、地域・デジタル連結性、クリーンエネルギ及びエネルギ関連施設における災害強靱性を含む気候変動に対する強靱性といった特定分野における協力を更に深め、相互補完的な行動を追求していく



気候

  1. クアッドは、「日米豪印 気候変動適応・緩和パッケージ」を立上げ、防災及び海運における支援拡大やクリーンエネルギの協力分野拡大で一致



サイバセキュリティ

  1. 全ユーザが便益を感じられる様に、我々の共同の購買力を活かし、政府調達における基本的な「ソフトウェア セキュリティ基準」を整合させる事にコミットする
  2. 「日米豪印 サイバセキュリティ・パートナーシップ」を立上げ、この下で具体的な取組みを進めていく事を確認



重要・新興技術

  1. 重要技術サプライチェーンに関する原則の共通声明」を発表した。当局間で「5Gサプライヤ多様化及びオープンRANに関する新たな協力覚書」に署名



日米豪印フェローシップ

  1. クアッドは、「日米豪印フェローシップ 」の正式な創設を歓迎。人的交流分野でも引続き連携していく事で一致
  2. 本フェローシップは、毎年、クアッド各国の学生百名が米国におけるSTEAM分野の大学院の学位取得を目指す為のもの。「シュミット財団」が運営
  3. 第一期生は令和五年第三・四半期に学業を開始予定



宇宙

  1. 宇宙分野に関し、地域の気候変動対策や海洋資源の持続可能な利用等の課題への対応に貢献すべく、クアッドの衛星データを提供する「日米豪印 衛星データポータル」を開設する事で一致
  2. また、宇宙の持続可能な利用の為の規則・規範・原則等について協議し、共同のワークショップを通じて地域諸国への支援を行う事で一致



海洋状況把握及び人道支援・災害救援

  1. クアッドは、地域諸国間で海洋状況把握(MDA)に関する情報共有を促進する為の「MDAの為のIPパートナーシップ」を歓迎。地域諸国と協議を開始する事で一致
  2. IP地域における災害に効果的に対応する協力体制を更に強化する為、クアッドは、「IP地域における日米豪印人道支援・災害救援パートナーシップ」の立上げを発表



結語

  1. クアッドは、令和五年に豪州にて次回『日米豪印 首脳会合』を開催する事で一致。首脳間・外相間での定期的な会合の開催を含め、引続きクアッドで緊密に連携していく事を確認

写真:総理大臣官邸

※為替は報道現在

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