日本社会で「起業家」を増やす方法。増えない主因は?

【ビジネス考察】 令和四年五月末に岸田内閣は初の『骨太の方針』を発表しました(既報)。本年度予算は、菅内閣時の骨太の方針が反映されている為、岸田内閣としては来年度予算からが本領発揮となります。


新たな本方針は閣議決定後に正式なものとなりますが、中身の文量・具体策は「人への投資」と「スタートアップ投資」に多くを割きました。岸田内閣は、若者・若手の起業支援を徹底していく初の内閣と成り得ます。それどころか、細かく読むと子どもの起業も範疇としています。


そこで日本では起業に関するデータを俯瞰します。四月に岸田内閣は「新しい資本主義実現本部/内閣官房」にて、予め起業に関する世界のデータを集めていました。官としてスタートアップへ最初の投融資を行うのは「日本公庫」。ネットからも申し込めます。民としてはVC。昨年実績の日米比では日本が一千四百件・二千三百億円に対し、米国は一万七千百件・三十六.二兆円と、件数が十分の一・金額は百分の一以下。



<各種データ>

 上図は「起業関心層が考える失敗した時のリスク」。対象は十八歳~六十九歳。金銭関係以外に「家族に迷惑を掛ける事」「関係者に迷惑を掛ける事」と、起業を迷惑とイメージする人が居ます。


上図は「起業を望ましい職業選択と考える人の割合」。一先ず負うべき中国とは三.二倍、人口比も加味すると実数三十二倍の差。米国とは二.八倍、実数八倍の差。日本は、何が何でも起業をさせない土壌と言えないでしょうか。


上図は「起業家が日本で起業が少ないと考える原因」。一位の「失敗に対する危惧」は、銀行の信用問題と日本公庫に問題があります。前者は民間ですので、後者の官庁のセーフティネット(再チャレンジ)が機能してません。また他を眺めると、学校・家庭等の日本社会に原因が在ると視るべきでしょう。



日本社会に蔓延る“意識”の主因

 上図は、その証左と言えます。“出る杭は打たれる”文化も嫉妬心の塊と言えるでしょう。現在の子どもの夢やなりたい職業には、「会社員(正社員)」や「公務員」が各種ランキングで常に上位。第一次・第二次性徴期の子どもへ影響を与えるのは、友人・家庭・学校です。友人は子どもであり、現在の学校は過去とは異なり保護者に左右されますので、帰結すれば家庭を主因と視れます


では現在の家庭では父母のどちらの発言力が強いでしょうか。母親でしょう。平均の初出産年齢が三十歳まで上がった現在では、小中校の父母は「バブル世代」「氷河期世代」が主体。これは現在に限った事ではありませんが、両世代の母親が不景気を経験し、会社員・公務員への憧れが家庭内に蔓延っているのではないでしょうか。


そもそもXX染色体の女性は、XY染色体の男性よりも挑戦性が低いです。母親が主導権を握る家庭では挑戦よりも無難・堅実を選び易い。その為、「しらけ世代」の子である「ゆとり世代」等は無難・堅実を重視します。良い意味でも悪い意味でも、母親は偉大なのです。



八つの突破策

 よって、起業家精神(アントレプレナシップ)を育む為には、少なくともリスクテイカである父親が家庭内で主導権を握る必要があります。参考例は昭和時代の「創業期」。リスクの許容度が父母で大いに異なるので、どちらが主導権を握るかで子どもの性格・人生が上下します。較差社会の隠れた原因でしょう。


米中が起業家精神を家庭・学校で育む中、無難・堅実を教え込む事は最大のリスク(有能者の無効化)となります。米中は理に適った自己主張を是としますが、日本の自己主張は“利他”の観点が弱い、ないし無いので、単なる我が儘に映ります。ディスカスやコンペ、プレゼンで勝てない。すると無難・堅実となり、殻に籠ります。


米中の間に挟まれている以上、起業こそが無難・堅実路線。



以下が根本的な突破策(ブレイクスルー)。

  1. 日本公庫が本気の「再チャレンジ担当部門」「子ども・若者・若手枠」を設置(手持ち一万円からの挑戦融資、最大百万円。一万件/年);防犯は後回し(統計上、犯罪率は一程度、必ずある)
  2. VCへ政府が資金援助(今回の『骨太の方針』に盛込み済み)
  3. 母親主導を直ちに止める(但し、起業家の母親を除く)
  4. 学校教育を保護者優位から先生優位へ戻す
  5. エリート(スパルタ)とマス(アマルタ)を分ける
  6. マスからエリートへの道を創る;貧困家庭支援
  7. 子どもが日本人として誇りに思える「教科書」を合格とする;起業家精神の素と知る
  8. 先生方の給与を倍額にする(併せて、起業家の教諭活用)



平成時代を通じて、日本は起業家精神を潰し捲る事しかしてきませんでした。岸田内閣が本気で第二次「創業期」を実現するのであれば、氷河期世代・後期以降を主体とする再教育(不景気イメージの払拭)以外に他は無いでしょう。そもそも動く体力は、若い方があるものです。


現在の大人にとって、実に“生意気”な子ども・若者・若手を量産していく事が、日本社会の光明です。


記事:京秦正法

画像:基礎資料/内閣官房

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