若者・若手が報われない理由|令和四年度『年次経済財政報告(経済財政白書)』

【経済・財政報道】 内閣府(総理:岸田文雄)は、令和四年七月二十九日に本年度『年次経済財政報告(経済財政白書)』を公表した。報告者は山際大志郎(戊申)経財大臣。副題は「人への投資を原動力とする成長と分配の好循環実現へ」。全三百六十九頁。


以下の三章構成。

  1. 経済財政の動向と課題
  2. 労働力の確保・質の向上に向けた課題
  3. 成長力拡大に向けた投資の課題



<日本は未だコロナ禍前の水準>

 第一章では、コロナ禍拡大後の実質GDP等を主要国と比較。家計・企業の「資金過不足」の状況も点検した。日本の景気回復は、海外と比べて「個人消費」や「設備投資」に遅れている。米中英はコロナ禍前の水準を上回っている(一月~三月期)。日本は未だコロナ禍前の水準を下回っている。


日本の貯蓄・投資バランスは「貯蓄超過」が定着しており、積極的な投資拡大が必要とした。同バランスは一国の「総貯蓄」と「総投資」の差額。プラス=資金余剰、マイナス=資金不足。これまで日本で経常収支の黒字が続いてきたのは、民間「貯蓄超過幅」が一般政府「投資超過幅」を上回ってき た事を背景とした。


企業も「貯蓄超過」が定着、コロナ禍下で家計「貯蓄超過」は大幅に拡大。家計「貯蓄超過」は当面、個人消費を下支えし、賃上げが進む下で個人消費の回復が力強さを増していく事を期待。また、企業「貯蓄超過」は『新しい資本主義』の下、より積極的な投資を引出す取組みを進め、「成長と分配の好循環」の実現に繋げていく事を重要とした。




低分配の理由

 第二章では、人への投資の動向と課題につき、雇用者側と企業側の双方から中長期的な視点で整理した。「成長と分配の課題(賃金や世帯所得の伸び悩みの要因)」「人材活用に向けた課題(労働力の確保)」「労働の質の向上(リカレント教育等)」に分けた。


成長面は、上図より「実質GDP/労働時間(生産性)」が主要国と遜色無い伸び。人への投資の強化を通じ、「労働生産性」を更に高め、子育て支援や働き方改革等により、「総労働時間」を確保していく事を重要とした。


分配面は過去三十年間に亘り、日本の「賃金/人」が概ね横這い。以下を要因とした。

  1. デフレ長期化で企業行動が慎重化。投資が低迷し、稼ぐ力が十分に高まらなかった
  2. 賃金が人への投資ではなくコストと捉えられた。「実質賃金の伸び」は「労働生産性/時間」の伸びを下回り、十分な分配も行われなかった
  3. 女性や高齢者の労働参加が進む中で、中長期的に「非・正規比率」が高まってきた




働かないシニアを若者・若手が支える

また、高齢者世帯や単身世帯の増加に伴い、相対的に低所得世帯の割合が上昇した。


再分配前では若手「三十五歳~四十四歳」と中堅・前「四十五歳~五十四歳」の世帯の中央値は大きく減少。所得五百万円未満の世帯所得の割合が全体的に上昇している。再分配後では、全年齢階層の中央値が減少。特に若手と中堅・前の世帯での減少が顕著。


再分配の前後を比較する。若者「二十五歳~三十四歳」の中央値は前後でマイナス・七十万円若手マイナス・九十六万円。他方、シニア「六十五歳~」はプラス・二百三十八万円となっている。若者・若手がしっかりとシニアを養っている



第三章は、成長戦略の課題を検討。『新しい資本主義』の五投資(人・科学技術イノベ・スタートアップ・GX・DX)。


画像:全体版/内閣府

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