若者・若手向け「コロナ復活融資」を第二次『補正予算』へ

【政治・経済・ビジネス考察】 岸田内閣の令和四年度『第二次・補正予算』が待たれている。国民党(代表:玉木雄一郎)は「緊急経済対策」として計二十三兆円の補正予算を提示。家計負担の軽減が殆どで、事業者負担の軽減は一.六兆円に過ぎない。


日本の行政府・内閣は『財政法』四条の縛りにより、補正予算でしか実質的な財政出動をできない。


九月の記事「頼みの綱『若者・若手』、岸田内閣が分水嶺か?」にて第二次・補正予算次第では、若者・若手へ求心力が削(ソ)がれる点に警鐘を鳴らした。



<経済政策で挽回を>

 十月頭に朝日新聞は、世論調査にて岸田内閣の「経済政策」を世代別で問うた。上図の様に、全体としては岸田内閣へ「期待できない」が七割と相当に拙(マズ)い。


「十八~二十九歳(脱ゆとり・ゆとり後期)」の最も期待しており、四割弱。次いで、「四十代(氷河期世代)」の三割弱が期待している。間の「三十代(ゆとり前期・プレッシャ)」は全世代別で下から二番目の期待となってしまっている。


先の国民党の緊急経済対策でも、若者・若手は恩恵を受け難い印象だろう。企業勤めが多い若者・若手に必要な対策は「事業者向け」である。



若者・若手の本質三点

 十月十四日に岸田内閣は、若者を意識した第一回『スタートアップ育成分科会』を開催。起業・兼業副業を推進し、スタートアップ企業(短期上場予備軍)を増加させるものであるが、一部の分科会委員を除き、若者・若手の本質(イノベ不可の現状)を理解していない。それは以下の三点。


  1. 若者・若手が起業の資金調達で頼りたいのは「日本公庫(日本政策金融公庫)」
  2. 若者・若手は、起業よりも先に兼業副業
  3. 中堅・シニアを繋ぐ若手の必要性


一では、当該分科会等は資金調達元としてVCを推す。併しながら、起業を意識する若者は「搾取型VC」を警戒している。端的に言えば、日本のVCから若者が資金調達して、成功した例が少な過ぎる。これは若手で上場した代取等からのヒアリングにより、悪意あるVCの存在が起因。


よって、銀行や信用金庫には頼れないので、公的な日本公庫となる。日本公庫を増強すべきだろう。



次に二では、平成以降の若者でいきなり法人設立というのは、ハードルが高過ぎる。「リーンスタートアップ」を学んでいる若者ならば、雇われの兼業副業から選ぶ。詰まり、小さな個人事業主となる事を優先する。併しながら、日本公庫の壁が立ち塞がる。日本公庫は、利益の薄い個人事業主(イノベータ)を軽んじる。

後に事例を紹介する。



最後の三では、「ビジネス コミュニケーション」のギャップだ。日本では氷河期世代の中抜けにより、「若者ー中堅・シニア」の連結連動性が弱い。これは日本経済の致命的な弱点であり、失われた三十年そののもだ。ITスキル然り、言語・感覚が上下で異なり過ぎており、非効率的で非生産性である。


それはビジネスオーナー間でも同じだ。氷河期世代のビジネスオーナーが増える事により、若者のビジネスオーナー(起業・兼業副業=イノベータやアーリアダプタ)が増える。「若者ー中堅・シニア」の繋ぎ手としての氷河期世代が絶対的に欠かせない。


日本公庫が個人事業主へ求めたもの

 さて、事例に入る。とある氷河期世代の個人事業主が、コロナ禍によって三分の一に減収した。最初の二年は踏ん張ったものの、PC故障等の不運で限界を感じ、日本公庫「江東支店(支店長:井上健)」へ訪れた。融資の申請だ。


上図は、日本公庫の融資実績の推移。令和二年度だけ頑張った事が分かる。


今回、担当したのは課長代理・上前愼也。簿記二級を取得している。やり取りの音声データで上前氏から重ねて出てきた言葉は「生活費」だった。


融資の申請で求められた資料は、直近二期分。コロナ禍の最中の財務諸表だ。一年は赤字だったものの、もう一年は経営努力により費用を切り詰め、僅かだけ黒字となった。


この点を上前氏は指摘。「生活費がまるで無い。」という。コロナ禍の減収なので、個人事業主は当然、生活費を極限まで切り詰めていた。そもそもコロナ禍の財務諸表なので、手厳しい状況なのは当たり前である。


問題は「事業プラン」だ。設備投資から如何に売上に変え、利益を増大させていくか、と言う点には上前氏から何ら質問が無かった。



事業ではなく、生活費に固執する日本公庫

 その個人事業主は、就職氷河期からリーマンショック等、不景気時代も含めて十年以上も売上・利益を作ってきた。詰まり、実績がある。今回の事業プランも相応の自信があった。「返済プラン」も堅実であった。併し、録音データから出てくる上前氏の言葉は「生活費」の話のみ。


事業プランの信憑性等には何ら触れていなかった。そもそも簿記二級で、不景気を乗り切ってきた者の事業プランを理解できるのだろうか?


但し、個人事業主には瑕疵もあった。国税の滞納だ。併しながら、この滞納はコロナ禍の減収に因る。過去の財務諸表から視てもコロナ禍でなければ、滞納は無かっただろう。月収・年収が三分の一も減収すれば、滞納もやむを得ない。


以上より融資は見送られた。日本公庫が融資の判断基準に「生活費」を設定しているのか?それとも江東支店の井上支店長の独自設定なのか?融資判断の内容なので、不明である。


何せよ、ビジネス融資の相談で「生活費」を最も重要視する事、返済の原資である「事業プラン」に触れない事はおかしい。過去のデータは、返済の原資とはならない。まるで融資をさせない様にしている。その証拠として録音データで、上前氏はやや脅しも入れつつ、融資申請の撤回を幾度か仄(ホノ)めかしていた。



挑戦してないのは若者・若手ではなく、日本公庫

 日本公庫の最新データ(令和二年)に拠れば貸付状況は、コロナ融資を含み「個人事業主=三十七万件」「法人=四十九万件」。共に通常の三倍ちかく。問題は、個人事業主の世代別である。残念ながら世代別は「非公表」という。どの世代が多く融資を通っているのか?どの世代の融資が通っていないのか?分析は絶対だ。


※ 上図は「国民生活事業(当事業)/日本公庫」の事業資金の融資先数


「スタートアップ企業」を育成したいのであれば、その下の「ベンチャ企業」を多数輩出する事。ベンチャ企業(法人成り)を多数輩出したいのであれば、「兼業副業」を促進する事。兼業副業を促進したいのであれば、若者・若手の個人事業主への支援を手厚くする事。


それらの成功例が少ないから、若者・若手が挑戦しない。


確実性に拘り、既存の法人や中堅・シニアの個人事業主等へ融資してきたから、スタートアップ企業もユニコーン企業も日本は少ないと理解するべきだろう。


詰まり、日本公庫が日本経済の為に最も挑戦してない。ないし、日本公庫の各支店長・担当者が可能性を握り潰しているかもしれない。



打開策

 もし、岸田内閣がスタートアップ企業を五倍・十倍にしたくば、コロナ融資で断った若者・若手の個人事業主達へ、日本政府と日本公庫は営業を仕掛けるべきだろう。何故ならば、不景気を乗り切ってきた若手の知見を埋もれさせてはならないからだ。世代別データは蓄積している筈である。

上図は、日本公庫の融資実績の内訳(令和三年)。


何より未来を担う中堅・シニアのビジネスオーナーが育たない。


若手の個人事業主から法人成りの成功例を連発して、初めて若者達が真剣に選択肢に入れる。そういった若者・若手向け『コロナ復活融資』を第二次・補正予算に入れて頂きたい。


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