皇太子殿下が求められる他分野連携|第八回『世界水フォーラム』

【社会考察】 皇太子殿下(庚子)は、平成三十年三月十九日にブラジル・ブラジリアにて開催された第八回『世界水フォーラム/世界水会議、ブラジル』に御臨席され、「水と災害」ハイレベルパネルで基調講演を行われた。本フォーラムは三年に一度、世界中の水関係者が一堂に会して地球上の水問題解決に向けた議論や展示等を行う世界最大級の国際会議。


冒頭で本年が日本からのブラジル移民百十周年である点に触れられ、ブラジルに繁栄・発展を齎した人々に敬意を表された。


基調講演では明治用水を例に挙げられた。江戸時代に水不足で争いが絶えなかった地域で十八世紀初頭、豪農の都築弥厚翁により大規模な灌漑用水事業が発想されて、半世紀を経て完成した。この地域は以後、日本有数の農業地帯として発展。殿下も現地の水源管理所を訪れられ、水が地域経済と社会発展に貢献する点を指摘された。


もう一つの事例では「実は水以外の分野にも目を向ける必要があります。」と述べられ、ブラジルの国土の四分の一を占める荒れ地を土壌開発、種苗改良、天水利用等を通じて豊かな農業地帯へ変わった。殿下も二度、訪れられた。そして水に関わる人々が他分野の人々と連携する事で食料やエネルギー、自然生態系の枢軸等の新たな発展に寄与する旨を伝えられた。


更に水を分かち合う事の重要性を示す為、江戸時代から使われていた山梨の分水施設「三分一湧水」も挙げられた。この例では現形になるまで地域の人々の間で議論や試行錯誤があった事を類推され、「この潤いを感じさせる美しい三分一湧水は、水を分かち合う事のシンボルといえます。」とされた。


続いて水に関する科学を話され、水が水圏、気圏、地圏の循環に広く関わって地球上の生命の繁栄の基礎を為しており、今後は科学技術が水を通じて人類の繁栄に更に貢献する事を期待された。脅威は地球温暖化と気候変動。先代の努力の成果は数日、数時間で失ってしまう点に触れられ、国際社会の結束を訴えられた。


国連のSDGsでは水は第六目標。殿下は重ねて、水の関係者が他の主要な問題に取組む人達との積極的対話の必要性を説かれた。最後に「二十一世紀は水の世紀であると言われていますが、その言葉が一つ進み、二十一世紀は水による繁栄、平和、そして幸福の世紀であったと後世の人々に呼ばれる事となるよう願っています。引き続き、私も強い関心を持って見守っていきたいと思います。」と希望を表明された。


殿下は講演で他分野との連携を強調された。長く水に関して地球規模で学ばれた殿下には、水の関係者だけで現況下の問題を解決できない事を知られている。水は生命の源であり、争いの種でもある。それを殿下は避ける為にも各専門分野の連携及び国際社会の真の協調が求められる。未来の地球の水不足は予測されている。その際に狙われるのは日本等。日本人こそ、今の平和を維持する為にも一人ひとりに意識が求められている。そして殿下は水に関して地球の先頭に立たれている。


画像引用:称賛受けた皇太子さまの講演 「即位前の集大成」感じる/朝日新聞、講演資料一覧/宮内庁

記事:金剛正臣

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