天皇陛下が『皇室』の「在り方」「活動の基本」を御語りになられる

【日本報道】 天皇陛下(庚子)は、皇紀二六八三(令和五)年二月二十三日に六十三歳におなりになられた。


御誕生日に先立ち、二十一日に宮殿「石橋の間」にて会見に御望みになられた。


コロナ禍と沖縄

 新型コロナウイルス感染症の状況は、未だ収まっているとは言えないと思いますが、その様な中にあって、昨年の秋に感染状況を見ながら栃木県を日帰りで訪問したのを皮切りに、地方への訪問を略三年振りに再開する事ができました。


コロナ禍にあっては、国民の皆さんと直接触れ合う事が難しくなった事を私も雅子も残念に思っていましたので、この一年、都内に於いても様々な行事が再開され、また地方への訪問も行う事ができ、皆さんと直に会ってお話ができる様になった事は、私達にとっても迚(トテ)も嬉しい事でした。


沖縄県では、沖縄戦における御遺族の方々のお話を直接伺い、お一人お一人のご苦労や悲しみに思いを致しました。激しい地上戦となった沖縄戦の悲惨さや沖縄の人々が辿った苦難の歴史に思いを巡らせ、犠牲となられた方々の御冥福をお祈りし、それと共に現在、私達が享受している平和の有り難さを思い、改めて平和の大切さを深く心に刻みました


これからも、沖縄がこれまで辿ってきた道程(ミチノリ)を見つめ直し、沖縄の地と沖縄の皆さんに心を寄せていきたいと思います。日本、そして世界の平和を祈る気持ちを大切にしていきたいと思います。 



御即位後、初の訪英

 昨年九月には、英国で七十年の長きに亘って在位されていた女王・エリザベス二世陛下が崩御され、御葬儀に参列する為、雅子と共に英国を訪問しました。御葬儀では、厳粛な儀式が執り行われる中、英国王室の方々や各国元首を始めとする参列者の方々と御一緒に、女王陛下が長年の間に残された数多くの功績と貢献に思いを馳はせると共に、我が国との関係に於いても、女王陛下が両国の関係を常に温かく見守って下さった事に心からの敬意と感謝の気持ちを新たにしつつ、深い哀悼の気持ちを持って女王陛下に最後のお別れを致しました。


女王陛下には、私の英国留学や英国訪問に際しても、様々な機会に温かく接して頂き、幾多の御配慮を頂いた事に重ねて深く感謝しております。それと共に、令和になって国賓として御招待を頂きながら、コロナ禍により、女王陛下の御存命中に訪問を果たせなかった事を残念に思います。


今回の訪問に当たっては、チャールズ三世国王陛下を始め、英国王室の方々や英国政府関係者、一般市民の皆さんに温かくお迎え頂いた事を大変有り難く思っています。



社会的に弱い立場にある人々に、心を寄せ続けていきたい

 この一年も、新型コロナウイルス感染症が引き続き、社会に大きな影響を与えました。亡くなられた方々とそのご遺族に心から御悔やみを御伝えすると共に、闘病中の方や後遺症に苦しまれている方々に御見舞いを御伝えします。


その中にあって、患者さんの命を救う為の尽力を続けている医療従事者、救急隊や保健所等の関係機関の皆さん、人々の日々の暮らしを支えて頂いているエッセンシャルワーカー等の皆さんに、改めて心からの感謝の気持ちを伝えたいと思います。


コロナ禍に於いては、多くの人々、特に社会的に弱い立場にある人々が、様々な困難を抱えながら生活をしている事に胸が痛みます。社会的な孤独・孤立の問題についても心配しています。今後とも、生活に困窮している人々やその子ども達等、社会的に弱い立場にある人々に、心を寄せ続けていきたいと思います。




六月に結婚三十年

 結婚してから、三十年近くが経たつのかと思うと、時の流れの速さを感じます。昨年十二月の雅子の誕生日の感想にもありましたが、雅子が二十九歳半の時に結婚してから、その人生の半分以上を私と一緒に皇室で過ごしてくれている事に、心から感謝すると共に、深い感慨を覚えます。


この三十年近く、二人で一緒に多くの事を経験し、お互いに助け合って、喜びや悲しみ等を分かち合いながら、歩んで参りました。


雅子は、この一年も工夫や努力を重ね、体調を整えながら、皇居での行事、都内での式典やオンラインによる各地への訪問、そして昨年十月以降は、栃木県、沖縄県並びに兵庫県へと、再開された地方への訪問に臨む事ができました。



快復途上

 また、突然の英国訪問となった昨年九月の英国女王・エリザベス二世陛下の御葬儀への出席は、時差が大きく長時間のフライトとなる等、厳しい日程だったと思いますが、二人で揃って参列できた事に安堵致しました。


ただ雅子は、未だに快復の途上で、体調には波があり、大きな行事の後や行事が続いた場合には、疲れが暫く残る事もあります。その様な際には、充分な休養を取って欲しいと思います。これからも、無理をせずにできる事を一つ一つ着実に積み重ねていって欲しいと思います。


雅子は、私の日々の活動を支えてくれる大切な存在であると共に、公私に亘り、良き相談相手になってくれていますし、愛子の日常にもよく気を配りながら見守っており、生活に安らぎと温かさを与えてくれている事も迚も有り難く思っております。


私も、今後ともできる限り力になり、支えていきたいと思っています。国民の皆様には、これまで温かく心を寄せて頂いている事に、改めて感謝の気持ちを御伝えすると共に、引き続き雅子の快復を温かく見守って頂ければ有り難く思います。



愛子内親王殿下

 また愛子は、大学生として学業を優先していますが、その様な中で、皇居での新年の行事であったり、都内の訪問であったり、少しずつ皇室の一員としての活動を行う様になりました。また、昨年三月に、成年を迎えての初めての記者会見に臨みましたが、私達も、会見に向けて一生懸命準備をする様子を目にしていましたので、無事に会見を終える事ができ、安堵致しました。


愛子が記者会見でも述べた様に、自身のこれまでの経験は周りの多くの方の支えや協力があったからであり、これまで様々な形で支えて頂いた皆さんに感謝する気持ちを持ってくれている事を、私達としても嬉しく思いました。


今後も、思い遣りと感謝の気持ちを持ちながら、皇室の一員として一つ一つの務めを大切に果たしていってもらいたいと思います。その過程で、私達で相談に乗れる事は、できる限りしていきたいと思います。皆様には、これまでも愛子に温かい気持ちをお寄せいただいている事に、心から感謝しております。今後とも愛子を温かく見守って頂ければ幸いです。




情報発信

 皇室の活動についての情報発信を考えるに当たっては、その前提として、皇室の在り方や活動の基本に立ち返って考える必要があると思います。


皇室の在り方や活動の基本は、これまでもお伝えしている通り、国民の幸せを常に願い、国民と苦楽を共にする事であると思います。そして、時代の移り変わりや社会の変化も踏まえながら、状況に応じた務めを果たしていく事が大切であると思います。


皇室を構成する一人一人が、この様な役割と真摯に向き合い、国民の幸せを願いながら一つ一つの務めを果たし、国民と心の交流を重ねていく中で、国民と皇室との信頼関係が築かれていくものと考えております。


国民との交流を重ね、国民と皇室の信頼関係を築く上では、皇室に関する情報を適切なタイミングで国民の皆さんに分かり易くお知らせしていく事も大事な事であると考えます。



御健康

 検査については発表の通り、前立腺の肥大は認められましたが、その他の異常は認められませんでした。今回の検査は、血液検査の数値に気掛かりな点があった事を受けての事でしたが、改めて検査の大切さを感じました。


御陰様で、私は日々変わりなく過ごしていますが、務めを果たす上で健康を維持する事は大切な事だと思いますので、できる限り健康な生活を心掛ける様努めています。


体を動かす事も良い事と思いますので、定期的に皇居内をジョギングしたり、雅子と散歩をしたりしています。ジョギングは、時折愛子とする事もあります。皇居に移ってからも、雅子と愛子と三人でテニスをした事もあります。



上皇上皇后陛下

 上皇上皇后両陛下には、日頃より、私達や愛子を温かく御見守り頂いています事に感謝しております。上皇上皇后両陛下は、昨年、赤坂の仙洞御所に御移居になり、また上皇陛下には一昨年、上皇后陛下には昨年、米寿になられた事を御慶び申し上げます。


上皇上皇后両陛下には、昨年、御体調についての御指摘の様な事もおありでしたが、昨年十月の上皇后陛下の御誕生日、十二月の上皇陛下の御誕生日と雅子の誕生日には、雅子と二人で、そして今年の正月には愛子と共に三人で、両陛下に揃って御会いできた事を嬉しく思っております。


呉々も御体を大切に為さり、末永く健やかに御過ごしになります様心より願っております。




物価高

 コロナ禍や最近の物価高等により、多くの人々が様々な困難を抱えながら生活しており、支援を必要としているお年寄りや障害のある人、生活に困窮している人やその子ども達等、社会的に弱い立場にある人々が様々な苦労をしている事に心が痛みます。


同時に、この様な社会的に弱い立場にある人々を支え、その命と暮らしを守る為に力を尽くしている人々が多くいる事は心強く、有り難い事と思っています。


大変な事も多い中ではありますが、人々が、これからもお互いを思い遣りながら支え合い、困難な状況を乗り越えていく事ができる様願っています。



自然災害

 自然災害に関して言えば、今年は「関東大震災」発生から百年を迎えます。日本では、古くは『日本書紀』に地震の記録があり、平安時代には三陸沖を震源とする「貞観地震」が発生した記録が残っている様に、以前から大きな地震が繰り返し起こっています。


平成二十三年に発生した「東日本大震災」は、私達一人一人の記憶に新しい所です。この東日本大震災では二万人を超える数多くの方が亡くなったり、行方不明になったりしました。今尚、多くの人々が困難を抱えた状態にある等、本当の意味での復興は未だ道半ばにあり、復興が更に進む事を心から願っております。


地震を始めとする自然災害は、何時起こるかは分からないものの、これまでも繰り返し起こってきた事を忘れずに、これまでの災害から得た知識や教訓を将来に活かしていく事が大切だと思います。


気候変動による洪水や干魃(カンバツ)による被害も、世界各地で深刻化している様に感じます。今後、自然災害の被害を減らし、人々の命や暮らしを守っていく。そして、持続可能な世界を築いていく為には、世界中の人々が知恵を出し合い、協力していく事がより一層必要になっていると感じます。



戦争

 先程、御話しした通り、昨年、本土復帰から五十年の年に訪れた沖縄県では、先の大戦での沖縄戦で亡くなられた方々の御冥福を御祈りすると共に、苦難の道を歩んできた沖縄の人々の歴史に思いを致しました。


そして、再び戦争の惨禍が起こる事の無い様、平和の大切さを改めて心に刻みました。


然しながら世界に目を向けると、現在も各地で戦争や紛争等が発生し、多くの人々が亡くなり、傷つき、或いは住む家を失い、恐怖や悲しみの中にいます。また、世界中で飢餓や貧困、抑圧や偏見等に苦しみ、人としての尊厳や生命が脅かされている人々もいます。世界が直面するこうした困難な現実に、深い悲しみを覚えます。



平和への御希求

 全ての人々が悲しみや苦しみから解放され、平和に暮らす事ができる世界を作っていく為には、国際社会において、何れの国も自国の事のみを考えるのではなく、他の国々とも互いの違いを乗り越えるべく対話を重ね、協力しながら問題を解決していく事の大切さを強く感じます。


また、私達一人一人が「平和な世界を実現する為に何ができるのか?」、改めて問われているのではないかと感じます。


一九九〇年代に「国連」難民高等弁務官を務められた緒方貞子氏は、日本社会が前進する為にとして、「世界の多様な文化や価値観、政治や社会に目を開いて、そこから何かを学びとる事、それと共に、国内でも多様性を涵養(カンヨウ)していく事が不可欠です。」と述べておられます。


この事は、今後の平和な世界を築いていく上でも大切な示唆ではないかと思います。


御影:宮内庁

修飾:FPhime


 


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